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「ねぇスタン、見て見て! これ買ったの。可愛いでしょ?」
今日、お出かけ中にたまたま見つけた超可愛いハイヒール。目的は全然違う物だったのに、通りかかった靴屋さんのディスプレイにこれが飾られているのを見て、一瞬で心を奪われてしまった。最近ボーナスも出たことだし、欲しい気持ちに嘘は付けないから思い切って買っちゃった。
さっそく箱を開いて、今日買ったお洋服たちと一緒に鏡の前でファッションショーをしていたところ。都合よく帰ってきたスタンに審査を頼んだら、彼はまっすぐ近づいてきて、足元には目もくれずぎゅうっと私を抱きしめた。
「あぁ可愛い、ホント」
背中からお尻に手を滑らせて、数ヶ月ぶりのキスを落とす。久しぶりの温もり。彼のキスは甘いのに苦くてクセになってしまう。靴のことを聞きたいのに、しばらくしても離れてくれないから。触れ合いたいのはやまやまだけど、
「スタン、靴」
「ん?」
「可愛いか聞いてるの」
「アンタが可愛くねぇわけねぇじゃん」
なんか噛み合ってない。
いつまで経っても離れようとしないので、軽く頭突きをして胸板を押した。
「私じゃなくて! この靴を見て欲しいの」
「いて」
「この靴を見て欲しいの!」
「悪いって、可愛いよ可愛い」
「ちゃんと見てくれた?」
「てか高くね? 足つりそ」
「そう、そうなの、高いよねこれ」
「自分で選んだんじゃん?」
「だって、聞いて! この子と目が合った途端ビビっと来ちゃったんだもの! こんなの初めてスタンを見た時以来だよ」
「へぇそう」
たしかに私が履くには高めかもって思ったけれど。こんなに心をくすぐられる素敵な靴、滅多に見かけることないよ。出会いは大切にしたいじゃない?自分のお金だし。
「ま、似合ってっから。そんなことより」
「?」
「ほら、アンタのケツが高くなってくれたおかげで立ちバックがやりやすく――」
「くたばれ!」
思うがままに全力で殴りかかるが、普通に片手で受け止められた。あなたって人は素直すぎてむしろ好きだわ。渾身の攻撃を仕掛けたはずなのに余裕しゃくしゃくな顔。
「全力で来な」
手招きまでして……挑発されている。こちらも素直に買ってやろうじゃないの。逆の手でもう一度殴りかかると、今度は胸筋に受け止められた。スタンは全然痛くなさそうだった。なにこれ。
「ねえ、もしかして明日のデートに履いてくつもり?これ」
「決まってるじゃん、そのために今日お出かけして新しいお洋服も買ったのに」
「そ。嬉しいけどあんた、どうせ二分後には転ぶね」
「転ばない! スタンってばそうやってすぐ私のことバカにして、あっ」
言ったそばからコケた。スタンに掴みかかろうとしたら、踏み出した足がもつれてしまった。とっさに彼にしがみつくと、すぐに上から笑い声が聞こえてくる。
「わり、二分後は間違いだった」
「……もうやだ」
「スタン?明日のデートさ、今着てるのとこっちだったら……どっち?」
今私が着ているのは丈の短いタイトなワンピース。そして、手に持っているのは長袖のニットとスキニーパンツ。
どっちも今日買ったもので、どっちもメインカラーは白だ。スタンはいつも私に白を着せたがるから、私もその色ばっかり目につくようになってしまって。
両方とも可愛いからスタンの好みに合わせようと尋ねてみたら、彼は迷わずパンツを指さした。どうして? 首を傾げると、やっぱり即答で答えてくれる。
「今着てんのは今夜汚れっから」
三秒くらいして把握した。
「……」
「んだよその顔。キスして欲しいの?言っとくけど俺はどっちも好きだぜ」
「ふーん、ありがと」
「じゃ、とりま飯食うわ俺」
「はぁい」
「あ、着替えんなよ」
「……は〜い」