THE STONE WORLD


01

※腐要素・同軸リバ (スゼス) 表現注意。
苦手な方はお逃げ下さい。

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男の子は自分に向けられた一途な恋心に胸を撃ち抜かれ、女の子は長年の片想いをようやく実らせた。私が好きな映画だ。王道で単純な恋愛ストーリーだけど、だからこそ純粋にドキドキできる。
少し前の作品だから、映像がやや荒いのも好き。サウンドトラックもいい。それにセリフの言い回しが詩的で、何度も繰り返し見るうちにほとんど覚えてしまった。

何度も繰り返し見るがゆえに・・・毎度毎度付き合わされる彼と彼は、開始10分で飽きてしまったらしい。いつも何かと理由をつけて鑑賞会に呼んで申し訳ないとは思っているけれど、だって恋愛映画は好きな人と見たくなるのが普通でしょう?・・・もともと二人はこういうのより銃撃戦満載のアクション映画の方が好きだからなぁ。無理やり誘った私も悪い。
そうは言っても。そうは言ってもだ。画面の中で甘酸っぱい恋愛が繰り広げられていると同時に、画面の外で熱烈なキスが繰り広げられている今のこの状況を・・・私はいったいどんな気持ちでやり過ごせばいいのだろう。

「ほらゼノ、舌出しな」
「・・・・・・ん・・・」

さっきからいやらしい水音が耳に飛び込んでくる。小さな音だから余計に神経が研ぎ澄まされているような感じがして、勝手に意識が持っていかれてしまう。
正直に言ってうるさい。こっちは女の子が意中の男の子と目を合わせただけでどきどきしてるところなのに!温度差・・・!
映画を途中で止めるのは私のポリシーに反しているけれど、このままの雑念の中で見続けるのも映画に失礼ってものだ。リモコンを手にして思い切って一時停止すると、画面の外の二人に顔を向けた。

「ね、ねえ・・・ふたりとも?」

ついさっきまでは三人並んで正面を向いていたはずなのに。真ん中のゼノとその左にいるスタンは、いつの間にか向かい合わせになって座ってる。
おそるおそる声をかけると、位置的にこちらに顔を向けているスタンと目が合った。しかし彼は眉を少し上にあげただけで、すぐに視線を戻してしまう。

「ねえ、ふたりとも?聞いてるの?」
「・・・・・・スタン・・・、・・・」
「・・・あー、その調子・・・っん、・・・」

全然聞いてない。
私もテレビに視線を戻すと、画面の中では男の子が拾ってくれたテキストを大事そうに抱える女の子の姿が。再び画面の外に目をやると、体を抱き寄せあってフレンチキスを交わす二人が。・・・・・・いや、温度差!
このままではいけない。リモコンを手にしたまま立ち上がると、二人の肩を掴んで目線を合わせた。

「ねぇふたりとも、聞いてよ。私の声聞こえないの?聞こえてるでしょ?」

無反応。スタンもゼノも顔をほんのり赤く染めてお互い夢中になって・・・まるで私がいないみたいに。幽霊になった気分。
ずっと前から一緒にいる私だからこそ声を大にして言いたくなるけど、ひいき目に見なくてもこの二人は顔が整っていて、それでいて片方は筋肉質で・・・片方はとんでもない秀才で・・・。そんな大人な二人のキスを見ているとこっちまで頬が照ってしまう。

ていうかこのままじゃ始まりそう。

「ほら、もういい加減にしてよ!・・・もうこうしてやるんだから!」

恥ずかしさで見ていられなくて、二人の間に無理やり割って入った。
二人の胸板を押して顔を離させると、それぞれの太ももの上に半分ずつおしりを乗せてふんぞり返る私。よし、これでキスできまい!得意になってやっとのこと映画を再生させると、スタンが私の体を片手で追いやってゼノの胸ぐらを掴んだ。
そのまま私の目の前でキスを続ける二人。

「じゃま!どいて!見えないじゃん!」

さすがにカチンと来たので二人の耳元で叫んでやった。もう一度映画を止めてじゃまじゃまじゃまじゃまじゃま!とひたすら叫び続ける私に、スタンがめちゃくちゃ迷惑そうな顔をしながら自分の耳を塞いだ。

「るっさ・・・なーに、邪魔すんなよ」
「邪魔するなはこっちのセリフ!そのまま続けるならもっとうるさくするよ!鼓膜破れたら一生何も聞けないからね」
「ふふ、ナマエ?180デシベルは出してもらわないと僕らの鼓膜は確実に破裂させることはできないよ」
「180でしべる?」
「ちなみにこれはロケット発射時の音量と同等だから君の声一つでは難しいかもしれないね。つまり『一生何も聞けない』状態を作るには人ひとりの声量じゃとても」
「銃で脳みそごと破ろうか?」

大変、ゼノがいつにも増して饒舌だ。しかもニコニコと笑ってる。つまりゼノのテンションが高い。
こうなったゼノはスタン側につくことが多いからな・・・そういえばさっきも積極的にスタンの体に腕を回していたし。普段は私の味方をしてくれることが多いゼノがこんな状態なのだから、ここは本気でいかなければ。

「あのね、私は映画を見たいの」
「自由に見てりゃいいじゃん」
「二人がうるさくて集中できないの」
「音量の大小で考えるのなら、僕らの音より君のテレビの方が圧倒的に」
「ゼノうるさい。黙って」
「・・・・・・」
「おいナマエ、何怒ってんよ。あぁもしかして妬いてんの?かわい」
「ちが」
「んなに俺らとキスしてぇんだったら言ってくれりゃいいのに。ほら受け取りな」

人差し指で投げキスされた。

「ちがう!私が言いたいのは、なんでわざわざここでやるの?ってことで」
「え?あんたがこの家に呼んだんじゃん」
「ほ、他の部屋とか!」
「リビング連れてきたのあんたじゃん」
「・・・・・・」

その通り過ぎてぐうの音も出ない。
今日と明日は二人揃ってお仕事がない超貴重な二日間。そんな一日目を朝っぱらから興味のない映画に付き合わせて不満なのは分かるけど、 ・・・・・・はい、不満だよね素直に謝りますごめんなさい。
ていうか、そんなに映画が嫌なら来なければ良かったのに!・・・嘘!貴重な休みなのに私に会いに来てくれてすっごく嬉しい!もうなんなんだろうこの感情。来てくれて嬉しいのに邪魔だから帰ってほしくて、・・・帰ってほしいのに帰ってほしくないなんて。

「・・・ナマエ?」

ぐるぐる頭を悩ませていると、大人しく口を閉じていたゼノが私の服を引っ張ってきた。振り返った途端、突然唇を奪われる。

「ん、」

い、いきなり何?私のみならずスタンも驚いたようで、後ろから「ゼノ?」という声が聞こえた。同時にゼノの舌が侵入して、無意識に逃げようとした体を引き寄せられた。斜め上から苦味の混ざるキスに襲われる。
・・・どうしちゃったの?と、思っているうちに彼はすぐに離れてくれた。状況がよく分からなくて瞬きをする私に、ゼノはコテンと頭を傾ける。

「ゼノ・・・?」
「ナマエ、うるさくして悪かったね。スタンの分も僕が謝るから・・・許してくれ」

いつもと違ってセットしていない髪の毛が重力に従ってずり落ちた。その髪を耳にかけながら、ゼノは眉を下げて控えめに笑う。
・・・私がゼノのその顔に弱いこと、知ってるくせに。

「・・・いいの。そんなに怒ってないから」
「本当かい?それはよかった」

ゼノはそのまま私の顔を見つめて黙り込んでしまう。自分の顔に手を当てて、何か考えごとをしているようだ。・・・本当にどうしたのかな。
なんだか空気が変わったような、彼の瞳を見つめ返していると・・・ふいに私の頭の上に重みが。何かと思えばスタンの腕だった。まるで私を肘かけみたいにしながら、背後から容赦なくのしかかってくる。重たい。

「あーね・・・。ゼノ、アンタ・・・」

空気の変化に気づいたのはスタンも同じらしい。しかし、彼は私とは違ってゼノが考えていることが分かっているようだった。
ゼノは優しいから余計なことは何も言わないけど、やっぱりさっきは強く言い過ぎちゃったかな。そうやって一人で考えごとを始める私の両耳を、突然スタンに塞がれた。

「ゼノ、一応確認しとくが今日ゴム持ってんだよな?」

・・・・・・。急に?

「ん?ああ、持っているが」
「ふぅん、じゃ遠慮なく。・・・俺もその気になってきた」
「なんだい?なんの確認だ?」
「だって俺が挿れてんの見たらアンタもヤりたくなんだろ?じゃ、ゴムねぇとな」
「おおスタン!僕に気遣いは結構だ。三人揃う貴重な日に、この僕が準備を怠るわけがないだろう?」
「・・・・・・」

聞こえてる。

「だがスタン、少し違う。最初は僕だ。ナマエの声を聞きながら順番待ちをするのは僕ではなくて君の方だよ」
「・・・あ?何言ってんだ?」
「ああ・・・難しかったかい?もう一度説明が必要かい?」
「あ〜難しいね。分っかんね、俺の頭じゃ。アンタの言うことはいつも奇想天外でさ」

わ、私も難しい・・・二人が突然なんの話を始めたのかわからないや・・・。全然わからないなぁ・・・。わからない、うん。
二人はお話に夢中みたいだから、映画の続きでも見ようかな。スタンの手を振り払ってソファーから立ち上がろうとしたら、二人にそれぞれ両手を掴まれて引き戻された。
・・・・・・。ボスンと勢いよく座らされた衝撃で呆然とするしかない。二人はそんな私を間に挟んで、もはや耳を塞ぎもせずに会話を続ける。

「ではもう一度、きちんと分かりやすく説明してやるからよく聞いておくことだ」
「いや、要らねぇ。あんたの言い分、たぶん俺にゃ一生かかっても理解できねぇから」
「そうかい?ならば実践あるのみだ。僕の考えていることを、この身をもって今から君に示してあげよう」

と、ゼノが両手を私の首裏に回した。抗う間もなく引き寄せられると、さっきと同じように口付けをして、すぐに舌を中に入れてくる。
さっきと違うのはゼノが全然離れてくれないこと。それと、スタンが「あ、クソ」と言いながら笑っていること。

「なに?ゼノ、アンタ珍しくやる気出してんじゃん。なんかあった?」
「ん・・・、つい先程君が情熱的なキスをするからじゃあないか。なにしろ久々だったからね、まんまと欲情させられたよ」
「ハハッ、俺のせいかよ」
「それで君も気分が上がっているんじゃないのかい?・・・それに、ナマエ。僕は君と会うのも久々だから・・・」

ゼノは私の頬に手を添えて、微笑みながら「はあ」と小さなため息をつく。

「そろそろ自慰で済ませるのも嫌になってきた頃合に、こうしてまた会えたことに素直に喜びを感じてしまうね。僕の体は正直だ」
「あぁ、それ言うなら俺も相当溜まってんよ。早くアンタらどっちかのケツ拝みてぇと思ってたとこだ」
「そう言うだろうと思って準備は色々済ませてあるがね。だが、どちらかと言えば今の僕はもうこっちの気分なんだが」
「だから言ってんじゃん?俺もゼノに便乗してやっから。でも先にやんのは俺だかんな。そこだけは譲んねぇ」

なんだかいつもより二人の会話が高度すぎてついていけない。というよりは、あんまり聞かない方がいい気がして途中から聞き流していた。さっきから二人が私の体の至るところを撫でくるから、変な気分になってくる。

「・・・そうだな、確かに君は遠征のために電話すら滅多にできない立場に身を置いていたからね」
「ホントそれな。カワイソー俺」
「分かったよ。毎度こうなるから今回こそはと思ったが・・・僕は焦らされるのも嫌いじゃあない」
「マジ?サンキュー!アンタならそう言ってくれると思った」
「だが、手伝いはさせてもらうよ。それと一回ごとに交代しろ。でなければ譲るのは無しだ」
「そんくらいヨユーヨユー!やっぱゼノ優しいね、愛してんぜ」

唐突に"F××k yeah!!!"と叫ぶスタンに、思わず体が飛び上がった。びっくりした。彼はなにやらテンションを上げながら、私越しにゼノの頬にキスを落とす。
「まったく君は」とゼノが仕方なさそう笑う様子に目を奪われていたら、さっそく体の向きを変えられてスタンと向かい合わせになった。

何がなんだか分からない。
でも、なんだか私に危機が迫っていることは分かる。

「ナマエ?」
「・・・な、なあに」
「気分はどう?」

ほんの少し俯きがちに目だけで彼を見上げたら、うっとりと頬を紅潮させた顔に見下ろされる。なんかスタンやばい。
ぎゅ、と自分の服の裾を掴むと、後ろからゼノの手が伸びてさわさわと服の上からお腹をさすり始めた。なんかゼノやばい。
色々驚いているうちに、すかさずスタンのキスが降ってくる。ゼノよりもほんの少し乱暴で、苦くて。でもどこか優しさも感じられるような甘い甘いキス。角度を変えながら襲われるそれにしばらくじっと耐えていると、透明な液体を繋げながらゆっくりと離れていく。

「・・・ねぇ、今から付き合ってよ」

目の前で囁かれ、ぶる、と体が震えた。
彼が言いたいことがすぐに分かってしまう。こんな朝っぱらから?しかも私、映画見てるところなのに。

「どう?ナマエ・・・ねぇ、答えて?」
「ス、スタ」
「・・・ん?どーしたよ」
「あ、あの、えと」
「言ってみ?口で言わなきゃ、ほら」

親指で私の唇を撫でるスタン。さっきのキスで溢れた唾液をすくって、それを自分の唇に塗りたくる。どきどきどきどき。こんなに濃厚な関節キス、私知らない・・・。

「え、映画・・・見るから」
「は?嘘だろ?俺らより映画取んの?」
「・・・・・・だって」
「言ってる意味わかんねぇ?してぇかしたくねぇかっつってんよ。ほら、俺らとなにしたい?」
「だから・・・映画、」

両手で頬を挟まれた。

「俺らと、なにしたい?」

誘導尋問されてる・・・。
スタン、笑っているのになんだか怖い。まるで獲物を狙う時のような・・・それに、なんだかもてあそばれているような。その目で見下ろされた途端に心臓がキュッと縮まって、だんだん目頭が熱くなるような感覚がする。さっきからちゃんと答えているのに。
震える声で「わ、わたしは」と呟いたら、スタンはすぐに優しい表情に戻って頭を撫でてきた。

「あぁ、あぁ・・・ごめんって。んな不安そうな顔すんな。冗談だよ。いや誘ってんのはマジだけど」
「・・・・・・」ぐすん。
「それにしても・・・アンタほんっとに可愛いね。泣きそな顔見てっとさぁ、いじめがいがあんだよな」
「スタン、もっとやり方があるだろう」
「わりぃって。でも見なよ。ナマエ、こんなに顔真っ赤にして・・・」

ゼノが私の肩にあごを乗せて、横から顔を覗いてきた。二人の視線が恥ずかしくて潤んだ目を必死に泳がせる。もうダメ。こうなったら私じゃあ止められない。
不安な気持ちでいっぱいになったところを、ゼノが後ろからそっと抱きしめてくれた。

「大丈夫。スタンはこんなだけど、僕は優しくするからね」

ゼノは優しいから好き。でも、やることは確定なんだ。そっか・・・。

「いや、俺も普通に優しいかんな。なあ?」
「おおスタン、まさかさっきの自分の発言を忘れたかい?それに・・・普段の素行を見る限りとてもそうには思えないよ」
「でも確かに俺、ナマエの泣き顔超好き」
「スタン。もし万が一ナマエを泣かせたらその瞬間からボトムにまわれ。僕が君を泣かせてやろう」
「ああ、下ばっかで飽きた?別にいいけど、あんた割とイイ趣味してっから気ぃ抜いてっと死ぬんだよな」
「・・・僕に攻められるのは嫌かい?」
「んーん、だあいすき」
「ふふ、困ったな。それでは罰にならない」

二人は仲良くそんな話をしながら私の太ももに手を這わせて、だんだんと顔を近づけてくる。現実逃避をするように、さりげなくテレビに視線を移す私。画面の中との温度差に火傷しそうだ。・・・私はまだまだ淡い恋でどきどきしていたいのに。



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