02

ひっきりなしに鳴っている通知をななせはため息をつきながら切った。
どうしてオレはチャンピオンになったんだっけ、そんな下らないことを考える暇もないのだ。

「……うあ〜〜!!」
「うわ、なんです急に、怖」

さっきまで本気のバトルをしていた相手は非常に引いた顔で急に叫び出したチャンピオンを見ていた。
マスコミのオモチャにされたいんですかねなんて小言は聞き飽きたし、自分がダンデの代わりにならないことはとうの昔に知っている。
そんなことより、そんなことよりである。もはや白色が消えたカレンダーアプリを横目にななせは深くうなだれる。

「じゃあネズさん代わってくださいよぉ……」
「ぜってー嫌です」
「後生だから!キバナさんとの雑誌インタビューだけでも!」
「何が楽しくて炎上飛び火に行かなくちゃいけねーんですかねぇ」

チャンピオンは一瞬上げた頭をまた机へ陥落させた。
ダンデの代わりは出来ないが、自分の代わりだっていないのだ。あんなに楽しかったバトルももはや作業と化して相棒達を悲しませていた。
……あぁ、最後にまともにベッドで寝たのはいつだっけ。

「ほっぷ、ホップに会いたいぃー」

訳すと癒しが足りなかった。ホップはいつだって自分を見てくれて、褒めてくれて、底抜けの明るさで元気をくれる……というのがななせの持論だ。
ネズはこの地上波に出せそうにもない対戦相手を妹には近づけたくないなと考えながら、ふと開きっぱなしのカレンダーを覗き見た。──あぁ、なんだ。

「その雑誌の仕事、ブラッシータウンなんだからパパッと会やぁいいじゃないですか」
「そらとぶタクシーが使えたらの話ですけどね!!ここ!!シュートタウン!!なに!?営業不振て!!ブラック企業て!!」
「めんどくせーこのチャンピオン……」

ななせはガラルの住民皆知り合いなんじゃないかと思わせる量の連絡先をスクロールして幼なじみの名前を探した。
検索を何回かかけてようやく見つけた彼の名前の横には既読だけつけて返信出来なかったメッセージが並んでいて非常に申し訳なくなる。

『そっちに行く予定があるから、久しぶりに会わない?』

これで、いいだろうか。心配して送ってくれたメッセージにも返せなくて、ホップは怒っていないだろうか。

ただでさえずっと昔から片想いをしている相手に送るには拙い文な気がしてうんうん唸っているうちに誰かのチャンピオンを呼ぶ声が聞こえてななせは席を立った。
齢十いくつかの少年が恋を考えるにはあまりにも隙間のない日々だった。

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