超絶素敵な元ネタはこちらの続きというか主人公視点。



「フザケンナ、誰がてめぇと。撮らせるかヨ!」
「お願いです。荒北さん、減るものじゃないですから……」


「……」
クラスメイトとの写真撮影大会の輪から抜け出し、見知った後ろ姿を探して見つけたものの、よもやの状況にすっかり出るタイミングを失ってしまった。
少し離れた木の陰から様子を伺う真緒の目の前で、自転車部の後輩と思われる男の子と言い合いしている荒北は、悪態を吐きながらもどこか楽しそうで、真緒の顔が自然と緩む。
クラスでは結局、卒業まで文字通り一匹狼を決め込んでいて、あまり打ち解けることがなかった荒北を、本当は違うのに、と口惜しく思っていたので、余計にそう感じたのかもしれない。

「あれ?伊東さん、何でこんなとこに隠れてるんだ」
「新開くん……!」
聞き覚えのある声に呼ばれて振り返ると、そこには卒業証書を片手に飄々とした様子の新開の姿があった。
「あれは靖友と……黒田?」
「黒田くんて言うんだね。自転車部の後輩?」
「ああ。気にしないで声かければいいのに」
「えっと……そうなんだけど」


「伊東先輩と一緒に写るだけで……触るとかそんなことしませんからっ」
「てか、黒田それ以上言ってみろ、お礼参り食らわすぞ、コラァ」


「……ね?」
「ははっ、おめさん、愛されてるな」
「えっ……うん……そうだね」
あらためて言われると、より一層恥ずかしくなって、真緒は顔を赤くした。
「靖友のこと、頼むな。あいつ、ひねくれてるけど、本当はすげぇいい男だから」
急に真面目な顔になった新開が、どこか懐かしむように口を開く。
そこに何か特別な思いを感じて、真緒は黙って新開の言葉に耳を傾けた。
「知ってる。私、荒北くん大好きだから」
だから安心して、と言外に思いを込めながら、新開に笑いかける。
それが伝わったのか、一瞬、目を見開いた新開がふっ、と嬉しそうに微笑んだ。少なくとも初めてみる表情に、本当の彼を垣間見たような気がして真緒は少しだけ嬉しくなった。
「ヒュウ!ごちそうさん。伊東さんの惚気も聞いたし、そろそろ、行くか」
次の瞬間、さっきまでの表情は消え、いつもの掴みどころのない新開に戻っていた。そんな新開を密かに可笑しく思いながら、真緒もまた荒北たちの方へ歩き出した。


「荒北くん」
「あ!ローレライ……あの、オレと写真一枚いいっすか!」
荒北が振り向くより早く、黒田が真緒に駆け寄る。さすがにスポーツ万能のエリートだけあって動きに無駄はない。
「だからァ、ダメだっつってンだろ、ボケナス」
「靖友、一枚くらいいいだろ。黒田オレが撮ってやるよ」
真緒の隣に並んだ黒田に向かってカメラを構えながら、新開がしれっと言い放つ。
「新開さん!あざーっす」
「はァ?新開ィ、てめ何勝手に決めてンだヨ!」
「荒北くん、実はさっき泉田くんと撮っちゃったし、いいでしょ、ね?」
「伊東先輩……!」
荒北をたしなめる真緒の手を掴み、黒田が感激した眼差しで見つめてくる。さすがエリートは抜け目ない。
「あァー!黒田てめ、どさくさに紛れて手ェ触ってんじゃねぇヨ!」
振りほどくタイミングを失った真緒の代わりに、荒北が黒田の手を勢いよく払いのける。いつも以上に深いシワが眉間に刻まれている。
「はは、靖友、拗ねるなよ。あとでちゃんと一緒に撮ってやるから。あ、黒田。次オレも撮ってくれ」
「新開ィ……てめ前科持ちが何言ってやがんだ」
わなわなと震えながら、荒北が新開に鋭い視線を投げつける。
「もう、荒北くん……最後くらい仲良くしよ、ね?」
鶴の一声とばかりに、真緒に懇願されては、さすがの荒北も黙るしかない。

「……くっそ、てめぇら覚えてろヨ……!」
3人が楽しそうに写真撮影に興じる様子を不機嫌そうに睨み付けながら、荒北が忌々しそうに呟いた。
五分咲きの桜だけが、静かにその様子を見守っていた。




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