Training camp - in Irupinet Hotel -:Come out
「で、やっぱり前言った時間取ってやる案が良いんじゃねえかと思っ・・・幸村君?」
「あはははは・・・ははははは!」
おかしくてたまらんと言う風に、幸村は大きく笑っていた。
普段だったら笑うとき口に添えられている手は、今はお腹を抑えるのに使われている。
「俺そんなおかしい事言ってる?」
「そうじゃないんだよ。馬鹿にしてるわけじゃないし、おかしいとも思わないんだけどーーーふふふっ!」
幸村も流石に失礼と自覚しているのだが、無理。あまりに面白い。
「朝から何を笑っているのだ?」
「ああ、弦一郎に柳。ごめんね、ちょっと丸井の話がーーーそう、ツボに入っただけで。別に変わった話をしていたわけじゃないんだよ。ね、そうだろう?」
「ああ、うん。そうだけど。」
そうだけど、何か釈然としないんだけど。
まあ幸村がツボっただけと言ってるんだから、良しとしよう。
「ああ、そうだ。丸井がこの場に居るので、ついでに話してしまうが。」
「「「?」」」
「”あちら”に対する埋め合わせの件だが、昨晩リーダーに聞き込みしたところ、宿泊を伴う時間調整をしてくれと言われた。」
今この場は、朝食時。
4人は周りに部員がわんさか居る状態で話しているので、柳は相当ぼかして話をしてくれているが、3人は宿泊と聞いて割とすぐにピンと来た。
要は、秋に流れると思われたお泊り会の事である。あれをどうにか、やや強引にでも決行して欲しいというのが紀伊梨の頼みなわけだ。
これは丸井が考えている、時間を取ってやるという方針とも合致している。
が。
「そもそも、出来ないという話になっていたから、秋にという成り行きになったのではなかったか?」
「そうだ。だから条件を付けた。」
「条件?」
「要は、宿泊という点が最低限守られれば言いわけだ。流石に程度はあるが、夕方から次の日の昼まで空けられれば良し。そういう条件にした。」
次の日の昼。
朝練なし、午前練無し、午後のみ。
このスケジュールの日は、長い夏休みの中で1日しかない。
「・・・全国決勝の日だね?」
そう。
その日、だけ。
「そうだ。学校まで帰り、解散次第すぐに一度帰宅し、荷物を持って再集合と言うことになる。」
「マジかよい。」
「それはあまりにも詰めた予定・・・いや。他にどうしようもない、致し方ないな。」
そんなバタバタした事で良いのかとも思うが、バタバタでもしないとどうにもならない。特にテニス部側は、自分達側の非が大きいという意識があるので余計にそう思う。
「しかし、もしかしたら家族に止められるかもしれないね。部活は兎も角、遊びのためにあんまり長い間家で休まない、家に居ないとなると・・・」
「その可能性は高い。俺たちはまだ中学生になったばかりだ。今日くらいは家でゆっくり休めと言われる可能性は各家庭の確率を平均して60%以上だが・・・」
「しかし、そもそもは俺達が詫びる立場だろう。」
「だよな。あれもこれもこっちの都合に合わせてくれって言ったって、そりゃあ通らねえだろい。」
「そうだね。家族はどうにかして、こっちで説得しよう。できる限り、お互いにフォローし合う形で。」
「OK。」
「ああ。しかし、今この場に居ない奴らは・・・」
「もう連絡を回してしまおう。どうせ昨日で、身内には大凡のことはバレてしまっているんだ。」
「そういえば、仁王と柳生・・・というか、主に仁王はどうだった?反省したかい?」
「ああ、していた。最悪部活停止になるというのが効いたようだ。」
部活停止というと大袈裟なようだが、部長の佐川はこの件に関しては、ビードロズというバンドとの問題というより、同じ立海という学校に所属している組織同士の話と考えていた。
もしこれがきっかけでどっちかがまともに活動出来ないとかいう事態になったら、それはもう部長としての責任問題になる。
頼むから、後生だからこれ以上この件についてつついてくれるな、と昨夜仁王は佐川に頭を下げられ、珍しく本気で罪悪感にかられたりしていたのだ。
「へー!彼奴が懲りるとかめっずらしい。」
「あいつという奴は全く・・・たるんどる!そもそも普段から態度がーーー」
「まあまあ、その辺りにしておこうよ。今はそれが本題じゃないんだし。」
「む・・・」
「そうだな。まあ兎に角、連絡は回そう。それでも、もう当日まで幾許もない。何人家からの許可が出るかだな。」
タイトなスケジュールがますますきつくなったなあ、と思う一方。
楽しみがまた増えるかもな、とも思って、4人は小さく笑った。
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