First RAINBOW FESTA:Without worrying
「なかなかレベルが高いですね、今年も」
関根がドリンクを飲みながら言った。
その隣では、安形がたこ焼きを食べている。
「まあ登竜門みたいなイベントだからな……お。」
「何ですか?」
「Wednesdayだ。」
「え?水曜日が何か?」
「ん。」
安形が顎で指し示した先には、板谷ら3人がビードロズ+テニス部を見つけて合流している。
「おーい、お前ら!」
「あー!こないだのお昼奢ってくれるおにーちゃん!」
「おい!人を財布みたいに言うんじゃねえ!」
そう言いながらも、板谷はどこか嬉しそうだった。
いや、嬉しいのだ。
このライブ会場の空気感、久しぶりだ。
ああ。
やっぱり、楽しいなあ。
「皆元気そうだねー!って言っても、一回しか会った事ないけど。」
「まあ我々も顔がおぼろげですからねw」
「お久しぶりです。今日は来て頂いて、有難うございます。」
「いや、俺達も誘ってくれて嬉しかったよ・・・あれ?君は?」
「はい?」
「君も確か、あの時一緒に居たよね?腕章とネームカードは?」
最年長の伊藤は、あの時の事をよく覚えていた。
勿論、当時幸村もそこに居たことも。
だから、5人でバンドやってるとばかり思っていたのだが。
「俺は、メンバーじゃないんです。」
「あれっ?違うんだ?」
「はい。俺は元々あの時点でテニスをしていて、今もテニス部に入っているので。」
「ん?じゃあそっちの奴らは・・・」
「テニス部です。友人である事には、違いないですが。」
「ふううううん・・・・・」
そう言うと、松岡はしげしげと一同をーーーーテニス部の方の一同を眺めまわした。
「・・・な、何だと言うのですか!」
「ううん?勿体ないなあ、と思って。」
「勿体ない?」
「ボーカルをちょっと鍛えたらさあ、皆大抵のグループの顔になれるビジュアルだと思うんだよねー。」
「へ?」
「皆さ、何ていうかなモテそうな顔っていうか、イケメンだから。ザ・甘いマスクの子も居るし、そうでない子もきりっとしてるし!うちのボーカルと大きな違い?」
「松岡てめえ!」
「あはは!」
「まあまあ。でも確かにそうだな。今居るメンバーで、アイドルグループの一つでも作れそうだよ。」
「おー!すごいー!」
ビードロズ3人は、さもありなんと内心で深く頷いた。
そもそも今日ここに来た時点でイケメン集団が居ると囁かれているくらいだし。
とか思っていると、松岡が幸村の顔を覗き込んだ。
「ねえねえ君、ちょっと回ってみてくれない?」
「回る?」
「ええとね、ステップを踏んでー・・・1、2、3、4。5、6、7、8!こんな感じで。」
「・・・・もう一度見ても、良いでしょうか。」
「え、精市やるの?」
「うん?いや別に、断るほどの事でもないかと思って。」
そうだけどさ。
確かに、大した事を要求されてるわけじゃないけどさ。
「いくよ、1、2、3、4。5、6、7、8!」
「分かりました。1、2、3、4・・・5、6、7、8。」
おおおー!
と、松岡からも、遠目で見ていたギャラリーからも声があがる。
「これで、良かったでしょうか。」
「うん!凄いや、オーラがやばい!」
「本当のアイドルのようですねえ。」
「割と近いかもしんないねw」
「・・・・・・・」
「真田、あんたは一生出来なさそうね。」
「まあ、こういった事は向きと不向きだ。」
まあそもそも、不向きって何かな?みたいな所が幸村にはあるけど。
「どうだったかな?」
「え?」
「おかしくなかった?」
幸村的には、正直周りがおおっと言うかどうかは正直二の次。
まず、愛しい彼女がおおっと思ってくれないと。
と、思っているのは千百合も感じる。
感じるけど。
「・・・いや、おかしくはなかった。」
「そう、良かった。」
まさかこの場でかっこいい、アイドルみたい、とは言えない。
恥ずかしすぎる。
「そこの眼鏡君、君もやる?」
「可能でしょうが、遠慮しておきます。」
「そう?じゃあ、そこの赤毛の子!どう?」
「ん?良いっすよ、ジャッカルがします。」
「俺かよ!しねえよ!自分でやれ!」
「はははっ!はいはい。ええと?こうやって、こうやって?」
「最後に、こっちの足をこう。」
「ああ、OK!1、2、3、4、5、6、7、8・・・9!」
要求されてもいないのに、最後にウインクとピースを付ける余裕のある丸井。
またおおっと声がするが、心なしかきゃあ、の声がさっきより若干濃い気がする。
「ブンブンやるー!」
「あはは、君すっごーい!ジャニーズジュニアみたいだよ、凄いねー!」
「お前さんは、本当にこういうのが似合うの。」
「そう?お前だってやりゃあ出来るんじゃん?」
「その気にならんし、こういうのはその気にならんとオーラも何もないもんじゃろ。」
「流石過ぎるwやれって言われてもあれは出来ないw」
「ブン太は得意だからな、こういうの・・・春日、それで?」
「はい?」
「どうだった?今の。」
「お前それ聞いちゃうのw」
「いや、聞いといてやるべきかと思って・・・」
どう。どうと言われると。
「?素敵でしたよ?なんていうか、堂々としてて・・・私、絶対出来ないですから。」
「ああ、期待と違った返事w」
「えっ!?」
「あ、いや良いんだ!良いんだ、良いんだ!」
「ねーねー、皆見て見てー!紀伊梨ちゃんもやるー!」
そう言って、紀伊梨が片手を高く上げた。
直後。
「1、2ー・・・」
「ストップ!」
板谷が待ったをした。
「お前はダメ!」
「え、なんでなんで!」
「バンドマンが、演奏前に演奏以外で客引きするみたいな真似をするな!」
これには色々な主義があろうが、板谷はこれを嫌がるタイプだった。
そして、半分勝手と思いつつ、自分が嫌だからビードロズにもして欲しくなかった。
期待しているから。
素敵な物を見せてくれるって信じているから。
「・・・・だめだぞ。」
「・・・・わかった!おけ!」
紀伊梨は別に、どうでも良かったといえば良かったけど。
でも、板谷からの期待は裏切りたくなかったから、うんと言った。
本番まで、後2時間半。
「昼飯何にすっかなー。」
「安音は余韻もへったくれもないなあ。」
渡辺の兄の演奏が終わり、昼の直前。
目当てのバンドが終わったらもう興味はないと言わんばかりに、安音は屋台を色々見ていた。
「たこ焼き、お好み焼き、焼きそば・・・やっぱ男らしいのは串焼きか?」
「別に男がかき氷とか食べてても良いと思うけど・・・ん?」
ポコン、ポコン、と独特の音を立てながら、飲みかけのペットボトルが2人の足元に転がってきた。
蓋が付いてるのが幸いと言うべきか。
「何だあ?」
「誰か落としたんだろうね・・・ん?」
「ごめんなさいっ!それ私のーーーあれっ?」
「あー!先輩だー!」
こうして図らずも、安音と可憐はお互い合流する事になったのだった。
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