First RAINBOW FESTA:Idea
「・・・・ええと。」
「あの・・・・」
「・・・・・・」
(・・・おい、どないしたらええねん。)
(俺が知るかっちゅー話や!)
(いや、そこは知っとかんかい!お前の従兄弟やぞ、何とかせえや!)
(何とか言うてお前・・・従兄弟とかそんなん知るか!従兄弟だろうが兄弟だろうが、こんなん対応出来へんわ!)
此処は会場の外。
そう、外。
可憐と謙也と一氏は、この閉会式の最中に会場から離脱していた。
頭では3人ともわかっているのだ。
ビードロズが特別賞取るかもとはあちこちから聞こえてきていたし、可憐にとってはツクヨミも知り合いなので、どちらにしろどちらが特別賞に輝いたのか見ていないといけない。
わかってる。わかってるのだが。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう、)
可憐は頭がふらふらしていた。
ガンガンしていると言っても良いかもしれなかった。
心臓がいやにドキンドキンしている。極端なパニック状態。
落ち着かないと。
落ち着かないと。
さっきから必死に自分に言い聞かせているのだが、一向に落ち着かない。
だって、落ち着こうとするとどうしてもさっきの光景がフラッシュバックのようにーーー
「・・・やっぱりあれ、キスしとったんやろか。」
「ーーーー!」
ぎゅうううっ・・・と、胸の真ん中が握られるような感覚。
アホ!!と謙也が叫んだ。
「わからへんやろ!アングル的にそう見えただけかもしれへん!」
「いやそうやで!そうやねんけどこう、一応そう思うといた方がええかと思うてやな!あ・・・」
う、あ、と声にならない声を上げる一氏が、自分を持て余している事も知っている。
堪忍、と呟く謙也が、何も悪くないのに謝ってしまう程度には居心地の悪さを感じていることも知っている。
でも駄目。
どうしてもいつもの態度に戻れない。
あの光景。
見慣れた二人の、あの重なった影が瞼に焼き付いて、振り払っても振り払っても消えてくれない。
アングル的にそう見えただけ?
そうね、その説もあるかもしれない。確かに見たのはあくまで顔が至近距離に近い図で、唇が重なってる所をどんぴしゃで見たわけじゃないから。
でも、きっとキスなんてしてないに違いないと思うには、肯定の材料が余りにも多すぎて否定の材料が余りにも少なすぎる。
だって、そもそもあの二人はほぼ両想いみたいなものだし。
実際、お似合いだし。
百歩譲ってキスはしてなかったとしても、あそこまで顔を近づけて一体何していたのか自分にはわからない。考えたくもない。脳が思考を拒否している。
なのに何故か心はそれについて考えることをいっかな辞めてくれない。
ああ。
苦しい。
苦しい。
息がしづらい。
(どうして・・・?)
いつかこんな日は来ると分かっていたのに、どうしてこんなにパニックになっているのだろうか。来るべき時が来ただけ、ただそれだけなのに。自分はむしろ、こうなるように仕向けてさえ居たのにどうして。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・あーーーーー!あかんあかんあかーーーん!」
謙也は勢いよく立ち上がった。
「・・・っくりした、何やねんいきなり!」
「あかんねんもう!俺な、こういう空気に耐えられへんねや!」
「せやかて・・・」
「桐生さん!」
「へ、」
「俺に考えがあんねん!聞いてくれるか!」
考えがあるって、この場合一体何に対する何の考えなのか。
可憐にはさっぱりわからない。
「先ずや!先ずはあれをーーー」
「あれてどれや。」
「あれ言うたらあれや!その・・・あの・・・」
「キスか?」
「それや!」
「あれとかそれとか言うなや!わけわからへんくなるやろ!」
「言いにくいねん!わかるやろ!」
「キスの何が言いにくいねん・・・」
「言いにくいわ!逆にお前はなんでそうしれっと・・・ええい!ちゃうねんちゃうねん、そういう話がしたいんとちゃうねん!先ずはや!先ずは、あれがほんまに確実なんかどうか、確かめなあかん!」
「え、」
「先ずはそこからや!事実確認が大事やで!て、こないだ見たドラマで言うとった!」
「ドラマかい!って、ちゃうやろ!確かに事実確認は大事やけどやな、確認て言うたかて、何をどうやってーーー」
「俺が聞く!」
え、と喉の奥から出たような声を、可憐も一氏も出した。
「どっちみち俺も見たし、このままやったら気になって気になって夜も寝られへんようになりそうやからな!」
「絶対嘘やん、普通に寝るで。」
「寝えへんわ!いや、この場合寝えへんていう主張もおかしいのんかも知らへんけど!まあええわ、兎に角聞くねん!」
確かに。
謙也なら聞けそうではある、かもしれない。
この性格もそうだが、何より忍足にとって謙也は何でも離せる間柄である事が大きい。
お前のキスシーンっぽいもの見たんだけどマジものだったんですか。この質問をして許される人間はそう多くない中、謙也はその数少ない該当者であろう。
「それに俺・・・どっちみち家帰って顔合わさなあかんわけやし・・・」
「ああ、そっか・・・」
「せやな、お前はそうやんな・・・」
「せやから聞くわ!ほんで、聞いたら桐生さんに連絡しよ!」
「え、」
「そしたら真実がわかるで!しかも桐生さんは何もせんでええわけや!どや?名案やろ?」
「・・・・・・」
確かに、それはそう。
真実を探る方法として、かなり楽な提案。
「せやけど、聞かれたから言うて正直に言うか?」
「まあ侑士は誤魔化すかもしれへんけど、基本的に俺に対して嘘は吐かへん!筈や!『どないやろなあ』とかそういう曖昧な事は言うかもしれへんけど、それはもう大体Yes的な意味やな。彼奴こういう事に関しては、Noの時ははっきりそう言いよるさかい。」
「ああ、分かるかも・・・」
流石に従兄弟というか、よく分かっていると思う。
いかにも忍足のやりそうな流れ。
「それにやな。」
「それに?」
「俺には勝算があんねや!いや、勝算?この場合勝算ていう言い方で正解なんか・・・?まあええわ!兎に角、俺には推測があってやな!」
「お、おお・・・」
「・・・?」
「俺的にはやな。あれはそうやなかったと思うねんな。」
だからあれとかそれとかで会話すんなや。
と可憐の隣で一氏がぼやいた。
「・・・つまりあれか?キスやなかったやろう、っちゅう事なんか?お前の見解の中で?」
「せや。」
「根拠は?」
「侑士の性格や!そもそもやな、彼奴に彼女が居るっちゅうのはまあ百歩譲って、そこそこの確率であり得る話ではあるわ。」
「まあイケメンやったしな。」
「俺の方がイケメンやからな!言うとくけど!・・・って、ちゃうねん、そうやなくてやな!話戻すけどやな、侑士は!彼女が居るのは頷けるとしても、こういう場所でああいう事はせえへん!」
「・・・!」
可憐は少し顔を上げた。
確かに。
言われてみればそれも頷ける話。
「そうなん?」
「せや。彼奴ムードとか雰囲気とか場の流れとか、そういうのんにやかましいねん。するにしても、こんな不特定多数がわらわら居るようなとこでせえへんて。よっぽどなんや事情があらへん限りはな。」
「まあイレギュラーていうのんは何にでもあるさかい、そこはこの際今無視やわ。まあ兎に角わかったわ、誤解の可能性が高いっちゅう話やな。性格的に。」
「せや!まあ、性格なんかどこまで当てに出来んねんて言われたらこっちも困んねんけどやな・・・」
「う、ううんっ!そんな事ないよっ!立派な根拠になると思う、うん!・・・うん・・・」
性格は根拠になると思うのは本当だが、可憐は別の事で言葉に詰まる。
でも今は考えたくなかった。
考え事をするには、今の状況はあまりに色々落ち着かなさ過ぎた。
時間が欲しい。
もう数時間で良いから。
その時が来たのは、感覚で分かったから。
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