First RAINBOW FESTA:Idea

アンコールの間会場外に居た者達の中にもう一つ。

鳳と木崎だ。

「ふうっ・・・・ぐす・・・」
「・・・・・」

2人はベンチで並んで座っていた。
木崎は靴を脱いで体育座りになって泣きじゃくっており、鳳は黙って木崎の背を撫で続ける。

嬉しいと思う傍ら、木崎の心の中はそれでも今、安形への怒りと悔しさで満ち満ちている。

そもそも、性格的に木崎は人から貶されるのが好きではないのだ。いや、好きな人など普通居なかろうが、普通以上に木崎は嫌いである。
それに輪をかけて、木崎は今、好きな人の前で自分の無様な姿を見せられたという意識が非常に大きい。


ツクヨミなんてどうでも良い。
ただ、鳳から幻滅されたくない。


常にそういう思考回路でやってきた木崎にとって、さっきのは最大級の屈辱であると同時に、一番嫌な形で人から説教された事になってしまった。

勿論、鳳はそんな事まさか思いもよらない。
自分を好きなあまりこんなに打ちひしがれているなんて。

鳳はひたすら純粋に、友達の女の子が一生件目取り組んできた結果が出なくて悲しんでいる。それを気の毒に思っているだけだ。まさか幻滅なんて思考の端にも上らない。

それよりも気になるのはだ。

(他のメンバーの人達、どこに居るんだろう・・・木崎さんがこんなに落ち込んでるのに、誰も探してないのかな?いや・・・他の人達も、今自分のことしか考えられないくらい落ち込んでるのかな・・・)

そうだとしたら、せめてこの場で傍に居る自分だけでも、木崎を支えなければ。

とはいっても、所詮部外者でバンドもやっていない自分に出来る事は幾らもない。
何もかける言葉を持ってないし、してあげられる事も極めて少ない。

やっぱり、木崎の為を思えばこそ、自分ではなくて今はメンバーで固まってるべきなのではと思うのだが。

「・・・木崎さん。」
「・・・?」
「その・・・今言うことじゃないかもしれないけれど、スマホは大丈夫?」
「ぐすっ・・・スマホ・・・?」
「その、もしかしたらメンバーの誰かから連絡が来てるんじゃないのかな・・・って思って。」

「・・・・!」

「探してるかもしれないし。だからーーー」
「嫌!」
「え?」
「嫌、いやいや!絶対行かない!彼奴らの所になんか戻らない!」
「木崎さんーーー」
「虐められるもん!お前のせいだって言われるもん!お前が悪いんだって言われるに決まってるもん、絶対嫌!」

鳳は目を丸くした。

確かに自分はバンドの事など知らないが、今回の事は誰か一人が良くなかったせいだ、なんて言えるような事じゃないことくらいは流石にわかる。
皆でやってるんだから、成功にしろ失敗にしろそれはチームの功績であり責任だ。

なのに木崎はそうじゃないと言う。

戻りたくない。
皆が自分を虐める。
自分に全ての失敗を押し付けて、吊るし上げるに決まってるんだ。
だから行きたくない。

木崎のこの発想は、自分の思考の逆手からである。

自分があっちの立場なら、まず間違いなくそう言って責め立てる。
だからあっちもやるに違いないという発想。

「嫌よ・・・私、悪くない・・・私のせいじゃない・・・・」
「・・・・木崎さん・・・・」

鳳は全力でこの状況を考え出した。

なんというか、色々自分の考えは前提が間違っていたと感じられる。
ツクヨミは仲間じゃないのか。
木崎は虐められているのか。誰か一人を寄ってたかって虐めたり、虐められたりするような、そんな集団なのか。

どうしてそんな場所に木崎が居続けているのかはわからないが、もしそうなら、そんな場所に戻れなんて木崎に言えない。
今後の事はまた別として、兎に角今はやめるべきだ。

知らなかったとはいえ、辛い状況に向かって進むことをみだりに勧めてしまった事に対して、鳳は謝るべく木崎に体を近づけた。

そして、聞こえた。
小さかったけど、木崎の声が。


彼奴らが悪いのよ。
彼奴らのせいで賞を逃したんだ。
土下座しろ。


そう言ったのが、確かに聞こえた。

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