Family moments 1:Repetition 1

家族に噂されているとは露知らず、紫希は菊丸と清水寺に入った所であった。

「へー!じゃあ、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに会いに来たんだ?」
「はい。菊丸君は・・・」
「俺はただの旅行だよん!だから泊まるのも旅館でー、今日も温泉入るんだー!」
「そうなんですか、良いですね。」
「うん!」

菊丸は、話しやすい相手であった。
やはりこういう所紀伊梨とも共通しているのだが、紫希が言葉少なでも、全く気にしないでガンガン話してくれる。

以前はそれでも、男子だと却って怖くなってしまったりもしたのだが、今は別にそんなでもない。
中学に入って、周りにぐんと男子の友達が増えたからだろうか。

「でさでさ、夜になったら、トランプしてUNOして、あ!俺んちねー、旅行の時はどんだけ夜更かししてもOKなんだよん!ブイ!いつもだったら、すーぐ誰かに英二!早く寝なさい!なんて言われちゃうけどねん。」
「ふふっ。そうなんですか・・・誰かに?」
「あ。俺の家ね、家族の人数多いんだよねー。父さんに母さんでしょ?祖父ちゃんと祖母ちゃんでしょ?それからそれからね、上に兄ちゃんが2人と姉ちゃんが2人!」
「ご、5人兄弟なんですか?に、賑やかですね・・・」
「そーそー、やっぱ多いよね?俺もよくさー、大家族じゃんって言われるんだー。春日さんは?兄弟居る?」
「私、兄が居るんです。今日は部活の合宿が被ってしまって、来れないんですけど。」
「へー!でも来れないのかー、残念だにゃー。寂しくない?」
「ううん・・・でも、他は皆居ますから。強いて言うなら、友達が居れば良かった、かも・・・・」

そう言われたらなんだか、急に寂しくなってきた。
いや、まあ。平気は平気なんだけど。
でも、皆が居ればもっと楽しかったろうな、と思うのは事実だ。

なんだか最近こう思う事も増えた気がする。
それこそ、学校では毎日賑やかだから。

「ああでも、友達、も・・・寺社仏閣に興味がある人は、そんなに多くないかもしれません。」
「へー!そお?そうかにゃあ?皆結構誘ったら来てくれるって思うけどにゃー?」
「菊丸君の周りには、来てくれそうな人が多いんですか?」
「うん!だってさ、手塚とか大石とか乾は勉強熱心だから絶対来ると思うんだよね!あ、でも手塚はどーかにゃあ、誰かと一緒に行くとかって嫌かにゃ?一人で行きたがるかも。でも不二はカメラが趣味だし、良いよって言ってくれると思うんだよねー!河村(たか)さんも付き合い良いから、そんなに興味なくても勉強になるって言って来てくれそうな気がするし、後はー、」

「いらっしゃいませ、ご入館チケットの料金はーーー」
「あ!順番順番!えとえと、俺達中学生なんだけどー、」
「でしたら、学生証の方をお出しください。」
「え!?」
「え?」
「・・・・・・」
「・・・き、菊丸君・・・」
「・・・・学生証なんて持ってにゃいよ〜!だってさだってさ、そんなの旅行に要らないじゃんか!」

菊丸は色んな施設を何度も中学生料金で利用してきた。
でも、確かにそう言われれば、確認を求められた事はない。
いつも大人が付き添ってくれてて身分の保証をしてくれたし。

「え、えっとあの・・・わ、私は学生証を持っているので、これで彼の身分も保証は出来ないでしょうか?ク、クラスメイトなんです、お願いします・・・」
「拝見しますね、お預かりします。」
「へー・・・とと!」

(春日さんの学校、立海って言うんだ・・・・ん?立海?立海立海、どっかで聞いたことあるような・・・あれ?)

青学は、今回の夏の戦績としては都大会一回戦敗退。
去年も一昨年も戦績が振るったわけではなく、つまり菊丸は、強豪校の名前をよく知らないのだった。

元々どの学校が強いとか、そういうデータ的な事を気にする性格でもないし。

「・・・わかりました。では、今回はお二人分中学生料金という事で。次回はお忘れにならないよう、よろしくお願いします。」
「やたー!・・・じゃ、じゃなくてごめんなさい!次は絶対絶対、持ってきます!」





「はー・・・そうなのねえ、紫希ちゃんがそんなに新しいお友達を。へえ、そうなの・・・」
「うん、そうなんだよ。」
「・・・・・・・」

真は黙って会話する妻と義母を見ていた。

さっき自分と妻の馴れ初めの話が出て、そこから娘の話に移行したので、娘の恋模様の話を茶菓子代わりにするつもりかと思いきや、雪乃は特に誰がとかそういう話もせず、ただ淡々と新しいお友達達の話をつらつら話していた。

特に口をはさむ理由もないので、真は黙ーってきいていたが。

「それで、真君。」
「え?はい?俺?」
「そう。紫希ちゃんと特に仲の良い男の子は、今の話の中の誰なのかしら?」
「ぶふっ!えほっ、えほ!ちょ、ちょっと待ってよ、どうして俺に振るんですか!雪乃とずっと話してたんじゃ・・・」
「やだ、雪乃より真君の方が確実よ。父親まで知ってたら、それはもう決定みたいなものだもの。で?今のうちの誰?」
「あー!知らない知らない!言いませんから俺!その手に引っかかりませんよ!雪乃もさあ、もう・・・・」
「ふふふふふっ!さて、誰でしょう?」
「さて、これは時間が居るわねえ。どれ、お茶をもういっぱい・・・あら。」

玄関の戸の開く音がした。

真はピシ!と居住まいを正す。

「大丈夫だよ、そんな緊張しないで。」
「そうよ真君、足を崩して頂戴。」
「いやあ、やっぱりちょっと・・・」
「気にしなくて良いのに。」
「そうよ。どうせすぐ、真君どころじゃなくなるわ。」
「え?」

何故、と真が聞く前に、美玲は玄関口にさっさと行ってしまった。

3/6


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]

1年1学期編Topへ
1年夏休み編Topへ


-