Family moments 1:Repetition 1

「わー!何か清水寺って、結構綺麗な感じのとこだにゃあ。」
「最近、改修が終わったらしいので。」
「あ、そっかー!だからこの辺とか新しいんだー!」

紫希と菊丸は問題なく清水寺を見学していた。

「ねえねえ、春日さんって清水寺には前も来た事・・・えっ!?」
「え?な、なんですか?」
「待って待ってよ〜!なんでもうそんなに書いてんの!?嘘、そんなに書くことあった!?」
「え、ええと、ええと、」

まだ入口を通過して少しなのに、紫希はもうひっきりなしにペンを走らせていて、ノートが結構埋まっている。

「え〜、俺こんなに書けないよ・・・ねえ?ちょこーっとだけ、見せてって・・・駄目かにゃ?」
「い、いえ・・・でも、参考になりますかどうか・・・」
「うん、なるなる!見せて見せて!」

なんて言って、意気揚々とノートを受け取る菊丸だが。

「・・・・ごめん、やっぱり返す・・・」
「す、すいませんお役に立てなくて、」
「違うよ違うよ、そうじゃないよ!じゃなくて、俺がこんなの書いても、多分皆信じないっていうかさー!英二が書いたんじゃないだろこれ、誰のを写したんだよって丸わかりだよ、先生とか皆もさ・・・・」
「そ、そんな事は・・・・」
「あるよ・・・はい、ごめん返すね。」

駄目だ。成績に差があるせいで、それがレポートにもろに出てしまって他人の文章感丸出し。
写させて貰えないかなあ、なんて思っていた菊丸の目論見はあっさり潰えた。

「はあ・・・・」
「・・・あの、菊丸君の学校のレポートって、そんなに難しいんですか・・・?」
「うんにゃ、春日さんには難しくないと思うよ?でも俺、レポートとか苦手なんだあ!読書感想文とかも・・・何か、思ってる事を字で書くっていうのが苦手なんだよにゃあー。普通に喋るみたいに書いても、先生からはこら!ふざけるんじゃない!なんて言われちゃうし・・・」
「でも・・・菊丸君は、感情表現が豊かですから、本来感想文は得意だと思いますよ?」
「ええっ!?うっそだあ、俺そんな事言われた事ないよ!?」
「ふふ・・・そんな事ありませんよ、多分菊丸君なら簡単ですよ。」
「へー・・・そうかにゃあ?」
「試しに、菊丸君の言葉でレポートを纏めてみて下さい。それで、後から添削すれば良いんですよ。」
「う〜〜〜ん・・・手伝ってくれる?」
「はい。私で良ければ。」
「本当!?やったー!」

菊丸は実に明るい笑顔で、紫希もつられて笑った。




なんて和やかな清水寺の2人組とは対照的に、荻倉家の一部は空気が氷点下状態であった。

「紫希に・・・あの紫希に好きな男子やと・・・」
「あ、あはは・・・」
「やだなあ、もう紫希ちゃんも中学生だよ?好きな男の子が居ても、全然不思議じゃないよ。」
「そうですよ。なんなら、それこそ遠くないうちにこの家に来る機会があるかもしれないまであるっていうのにーーー」
「あかん!そんな事は許さへんぞ!まだ中学生になったばかりやいうのに、そんな事は許さへん!騙されとる、絶対に騙されとるんや!」
「はあ・・・」
「分からずやなんだから・・・ね?」
「いやあ、これは俺からはちょっと、コメントが難しいって言うか・・・」
「大体!」

ひい、と小さく声を上げて真は肩をびくつかせた。
基本脅しとか罵声とかそういうものには強い真だが、どうも義父だけは強く出られない。婿の性みたいなものか。

「お前達がちゃんと見とかへんからや!だからこんなーーー」
「見るって、何を見ておくっていうんですか本当にもう。お馬鹿さんに見えるだけですから、無茶苦茶言わないで下さいな。」
「そうだよ。大体お父さん、紫希ちゃんがそんな変な男の子を好きになると思うの?前も此処にお友達を呼んだことがあったけど、皆良い子だったでしょう?」
「好きになった男とやらが、あの中に居ったか?」
「そりゃあ、それは居なかったけど。」
「ふん!ほら見ろ、幾ら友人が骨のある若者でも、好きな男もそうかどうかは分からへんやろうが!」
「ですって。どうなの雪乃に真君?」
「「え?」」
「知ってるんでしょう、貴方達?」
「そうや!どうなんや、真君!」
「ええ・・・うーーーんと、そうですねえ。俺は会ったことはないけど・・・」

でも。
ぶっちゃけ、確認をとったわけじゃないけど、真でも大体誰の事かは分かる。

「・・・・・でも、俺は良いんじゃないかなあって思ってますけど。」
「どこがや!」
「いぃ・・・いやですね、なんていうか・・・話してる時、紫希が楽しそうなんで。」
「・・・楽しそう?」
「すっごく楽しそうに話すんですよね。ま・・・ごほん、ええと、その子の事。だから、少なくとも嫌な思いとかはしてないんだろうなって。楽しく恋愛出来てるんなら、俺的には、それってすっごく良い事・・・っていうか、幸せな体験だって思うんですよ。」

紫希は自分で気づいていないようだけど。
でも、騙されたりとかそういう話でない事は、あの顔を見てもらえればすぐわかる。と思う。真は。

「・・・・・」
「わかりましたら、紫希ちゃんが帰ってきても、この事については触れない事ですよあなた。」
「そうだよ。そうでなくても友達なんだから、滅多な事言うと、紫希ちゃんに嫌われちゃうよ?誰だって、友達の事悪く言う家族なんて嫌だよ・・・・しかも、そんな理由になってない理由で。」
「む・・・・ぐ・・・・」
「・・・まあその、別に恋人同士ってわけじゃないですから!もしかしたらまた好きな人が変わるかもだし、もしかしたら振られる可能性もーーー」
「うちの孫を振る!?どこのどいつやそいつは!けしからん!」
「お父さん!」
「あなた!」


4/6


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]

1年1学期編Topへ
1年夏休み編Topへ


-