Family moments 1:Repetition 2
ただいまー、と両親+祖母の声がして、紫希は出迎えに部屋から出た。
「おかえりなさい。」
「おかえり、紫希ちゃ・・・あれ?」
「え?」
「紫希ちゃん、お祖父ちゃんは?」
「え?出てらっしゃるんじゃ・・・」
「えー?おっかしいなあ、15時には戻るって仰ってたんだけど。」
今は16時である。
もう1時間も過ぎている。
「ええと・・・あら。メールが来てるわ、見てなかったわ。
「お父さん何処にいるって?」
「いつもの喫茶店でコーヒーを飲んでから帰りますって。全くあの人は、折角紫希ちゃんが来ているのにねえ。」
その祖母の言葉で、父はふと閃いた。
「喫茶店って、雉堂珈琲ですよね?」
「え?ええ、多分ね。決まってあそこだから。」
「紫希、迎えに行ってあげたら?」
「え?」
真の申し出に、雪乃は妻として反論した。
「真君、そんな事別に良いよ。」
「そう?でも10分くらいの距離だよ?確かに暑いけど、そこまで大した事?」
「それは・・・」
「大丈夫です。私、行ってきます。」
「良いの?」
「はい。折角来ましたから。」
紫希は別に祖父が嫌いなわけじゃない。
昨日みたいな時はちょっと勢いに押されることもあるが、基本的には自分を可愛がってくれる大好きな祖父という認識をしている。
「お祖母ちゃん、日傘をお借りしますね。」
「ええ、持っていきなさい。そこの傘立てに入っているわ。」
「はい。じゃあ行ってきます。」
「気を付けてね。」
「はい。」
こうして紫希は、夏の日差しの中を祖父を迎えに行くことになった。
雉堂珈琲は祖父母の行きつけの店である。
紫希も何度か行った事があるから位置もわかる。
実は父の真が初めて連れられて行った時、そこのマスターにとても気に入られて、祖父が一気に文句を言いづらくなったのだという話も紫希は何度か聞いた。
本当に10分程歩くと、間もなく見えてくる喫茶店。
ああ、見えてきた。
と、思った時。
「・・・!?」
なんだか騒がしい。
がちゃん、とかぱりんとか物が壊れてる音と、何人かの声が外からでも聞こえる。
警察かと思うより前に足が動いてしまうのは、祖父がそんな場に居ると思った時の孫の心理としてはまあしょうがない。
「お祖父ちゃーーーー」
「今更何を言うとるんや、ふざけんな!やらんぞ、絶対にやらんからな!お前にやるもんなんぞ、チリ紙一枚あらへんわ!帰れ帰れ!」
「やかましいわ都落ちの頑固じじいが!そんなんお前が決める事なんか!そんなんやから孫にも遠巻きにされるんや!」
「何やともういっぺん言うてみい!」
「何べんでも言うたるわ!」
「もう、止めえやもう!ほらもう!良い年したじじい同士で、年も考えんと!」
「ほら、離れえな!離れえな!あーあもう、マスター、食器が・・・」
「ああ、片づけへんとなあ。おや、いらっしゃい紫希ちゃん。」
「「「「「「え?」」」」」」
店内の全員が一斉に振り向いた。
「・・・・・こ、こんにちは・・・・」
紫希が見たのは、掴みかかろうとするのを止められている風の祖父。
と、祖父にごく近い年齢に見える男性の老人がもう一人。
床に落ちたティーカップ。
何故かあまり困っていない風に見えるマスター。
何が起きたのか全部はわからないが、祖父がトラブルの当事者であることは十分わかった。
「ごめんね紫希ちゃん、すぐに片づけるさかいに。」
「あ、いえ・・・私、迎えに来ただけ、なんですけれど・・・・」
何があったの。
そう目で聞いてくる孫に、祖父圭太郎は罰が悪そうに目を伏せた。
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