Aroma
入学式から5日経った頃の事だった。

紀伊梨は何時も大体上機嫌だが、その日は朝から特に上機嫌だった。

なんせ、教室に入って来た時点でスキップ。

「グーッドモーニング皆の衆ー!今日も紀伊梨ちゃんてば絶好調だよーん☆」

「彼奴何時も絶好調じゃね?」
「言えてるな。」

クラスメイトの呟きに、丸井は全力で同意した。

(しかし、確かに今日は・・・)

なんか違う。
何時もと違う気がする。

「おっはー、ブンブン☆」
「おう。なんかお前、今日機嫌良いな?」
「あ、分かっちゃう?分かっちゃう?実は今日は嬉しい事が特盛ダブルでドドンパ一挙に大放出なのですよ!」
「へー。」
「あー!ブンブン聞く気ないなー!良し、ならば無理矢理聞かせてやろう!」
「聞かせんのかよぃ!」
「まーまー、見てよこれ!ジャジャーン!!」

「お・・・?」

紀伊梨が広げたのはポスターだった。

ギター、ベース、ドラム、それに広げた楽譜の写真をセンターに置いて、なかなか完成されたデザインをしている。

そして下部の方。

「ビ・・・ビードロズ?ライブ・・・開催・・・」
「そうなのです!記念すべき初ライブのポスターがついに出来たんだよ!ふー!」

そう言ってくるくる回り出す紀伊梨。
その勢いで何処かに体をぶつけて、しょんもり動きを止めるのもまあ直の事であろう。

「ビードロズってなんだ?」
「バンドだよん!皆でやってるの!」
「皆って、え!?もしかしてお前か!?」
「そうなんだけど、「もしかして」って何すか「もしかして」ってー!そんな、予想もしなかったみたいにー!」
「え、だって・・・バンドって結構覚える事多いだろい?」
「今ブンブンが私の事どういう女子だと思ってるのかよーーっく分かったよ!?」


入学してから一週間も経っていないのに、もう成績の悪さを察されている。
驚異的。

「因みに、お前バンドで何担当してんだ?」
「えっとねー、リーダーと、ボーカルと、ギター!」
「・・・・・・・」
「ねえ、ブンブン今、初めてのお使い子供にさせてるおかーさんみたいな顔してるよ?」

さもありなん、である。

(だって信じられねえだろい・・・)

メインボーカルにギターだぞ。

楽譜を読めなきゃいけないし、歌詞を覚えなきゃいけないし、2つ同時にしないといけない。

ある程度は天性の才能が物を言うとはいえ、だ。

「・・・まー、確かに!私はスペシャルな裏技を使って、曲の暗記は楽チンに出来るわけなんですけどねっ!」
「裏技?」
「うん。裏技。勉強には使えないけどねん☆」
「ふうん・・・」

そんな上手い話があるのだろうか。
どうも俄かに信じ難いのだが。

丸井が懐疑的な目をしているのは紀伊梨にも分かった。

「・・・よし、分かったブンブン。」
「ん?」
「ブンブンの私の中の評価を上げる為と、後こないだのポッキーのお礼があるからねっ!特別にブンブンにはー・・・」

3日後。
スペシャルライブに呼んであげるよ。

こっそり耳打ちされた瞬間、チャイムが鳴った。



1/7


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]

1年1学期編Topへ
1年夏休み編Topへ


-