Learn 2


放課後になってもまだまだ可憐の頑張りは終わらない。昼休みに学んだ事を、ちょっとでも次の練習に活かすのだ。

「可憐ー。このメニューなんだけどさ、ちょっと時間足りないかもだからこっちに変えて良い?」
「あっ!それは足りないなら、10分程度なら縮めて良いよっ!それよりもこっちにスムーズに移行できるように、準備をして置くから、使ってねっ!」
「分かった。」

良し。良し。
朝よりはちょっとマシ。

(ええと、ええと、今アレをやってるから次は・・・落ち着いて、落ち着いて・・・!)

パニックになりかけの時あるある。
落ち着け、と言い聞かせれば言い聞かせる程何故かパニックが加速する。

「・・・・・」

そしてそんな可憐を見つめる女子生徒が1人。

「・・・桐生さん。」
「ひゃいっ!あ、落合、先輩!」

先日のテストをクリアし、見事マネージャーとして再入部した落合は、今の可憐にちょっと物申したい事がある。

「あのね、今網代さんが居ないのは分かるけれど、網代さんの代わりだっていうなら行動をなるべくトレースしなくちゃ。」
「ごっ、ごめんなさいっ!頑張ってるんですけど、私まだテニスの事、」
「そうじゃない、そうじゃないのよ。知識の話じゃないの。桐生さん、貴方はリーダーなのよ?」
「・・・はい。」

「リーダーはね、周りの人を使って良いの。自分で出来ない事は、人にドンドン振れば良いのよ。」

「え・・・」

可憐は吃驚して目を丸くした。
キョトーン、な顔に落合は思わず苦笑する。

「良い?良く思い出して、網代さんならさっきみたいな時どうしたかしら?」
「さっき・・・」
「きっと、準備して置いて、って言うんじゃない?私がして置くから、じゃなくてね。」

桐生が網代や落合と決定的に違うのは此処である。頑張り屋さんではあるが、カリスマが足りない。

人を使えないのだ。

なんでも自分でやろうとしてしまうそれは、美徳であると同時に短所でもある。

「桐生さんは、もっと人に仕事をやらせる事を覚えるべきだわ。」
「人に、やらせる・・・」
「そう。まあ、これは得意な人とそうでない人が分かれやすいから、いきなりは難しいかもしれないけど。でも、桐生さん貴方はマネージャーではNo.2なの。ある程度は出来るようになって貰わないと、皆が困るのよ。」

目から鱗の論理。

考えもしなかった。
人を自分の手足として扱うような真似をして良いなどと。

「さ!分かったら、貴方は私になんて言うべきかしら?」
「えっ?」
「うん?」

なんて言うべきか。
落合に。

「・・・私、ドリンクの方の残量の確認をしたい、ので。」
「うん。」
「・・・スマッシュ練習のメニューの準備を、お願いしますっ!」

宜しい。
そう言って落合が微笑むと、可憐はパアアと笑顔が輝き出した。

「じゃあ、お願いしますねっ!」
「ええ。任せて。」

嬉しそうにドリンクの置き場所まで駆けて行く可憐。
それを見送る落合の後ろから、声をかける者が。

「おおきに、有難うございます。」
「あら、忍足君。」

おおきにってなあに、と落合が尋ねると、忍足は苦笑いした。

「言わなあかんと思うてたんです。」
「何を・・・ああ、もっと人にやらせろって事をかしら。」
「はい。でも、俺が言うても説得力無いんで。」
「そうね、それはそうかも。」

忍足が「もっと人を使え」と行った所で、忍足君は優しいから気を使ってくれてる、と可憐は思うばかりだ。
人を動かす事もリーダーの業務と思って貰うには、やはりリーダーの経験のある落合の様な人間が言うのが、一番説得力がある。

「でも忍足君、貴方も貴方よ。」
「?」
「それが分かっているんだったら、せめて事情を知っている貴方は、もっと積極的に手伝いを申し出なくちゃ。網代さんと違って、桐生さんは放っておいても「手伝って」なんて言い出さないわよ?」
「・・・・・」
「分かったら、貴方も早く行ってらっしゃい。」
「・・・はい。」

そう。
分かってる。

それも分かってるんだけど。


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