Pupil
「楽しい楽しいテスト期間。はーじまーるよーw」
「楽しくなああああい!」
紀伊梨の声が響く放課後の教室の一角。
ビードロズとテニス部の面々は、来る1週間後のテストに向けて試験勉強するべく集まっていた。
「先ず条件の確認をしよう。」
柳がザッと全員を見回した。
「今回の中間考査にてテストのある教科は、国・英・数・社・理の5科目。それから各々の選択第二外国語。副教科は全て期末に回されるとの事だから、一先ず次のテストでは度外視する。」
という事はつまり、期末ではやるのだ。げえ、な顔をした人が今何人か。
「此処で第一の確認だが、選択科目が被ってる人間を整理しようと思う。先ず、フランス語を取っているのは幸村。ドイツ語が真田、黒崎棗。イタリア語が仁王。スペイン語が桑原と丸井。クイーンズイングリッシュが俺、春日、五十嵐、それから黒崎千百合だな。」
「お前ら、全員英語なんか。」
「ええ。授業で習うのはアメリカ英語ですから、キチンとしたイギリス英語を学べる機会は貴重かと思いまして。」
「同意見だ。主流はアメリカ英語とはいえ、イギリス英語はやはり独自の格式がある。」
「成程。お前達2人も同じ理由か?」
などと水を向ける真田だが、紀伊梨と千百合はあっさり言った。
「ううん!一番簡単そーだから!」
「一番楽そうだから。」
「たるんどる!なんだその理由は!」
「えー!だって難しいじゃーん!」
「面倒いし、だるいし。」
「楽だの易しいだの、そんな理由で科目を選ぶんじゃない!」
「うっさいわね、放っておきなさいよ。」
「なんだと!」
「ああん?」
「まあまあ・・・」
「その辺にしておけw」
とはいえ、実際紀伊梨や千百合と同様の理由でクイーンズイングリッシュを選ぶ生徒は非常に多い。全く知らない言語を一から学ぶより、ある程度下地があった方が楽なのは確かだ。
「では次。この中で、今回の中間考査に苦手科目の無い者は?」
ひょいひょいと上がる4本の手。
幸村、真田、柳、それから仁王。
おず・・・と自信なさそうに追加で5本目の手を上げるのは紫希。
「春日、もう少し自信を持って手を上げて良いんだよ。」
「で、でも、中学になってから初めてのテストですし、自分で思うより出来ないかも・・・」
「紫希ぴょんならだいじょーぶだよー!」
「そうそ。ほら、こう。」
「あ、う、」
丸井に右手首を上げられる紫希を、棗はニヤニヤしながら眺める。
「しっかし、10人居て5人かよw」
「予想通りだな。これでかなり楽になる。」
楽になるって、何がだって?
「では・・・もうほぼ確認の為だけに聞くが、全教科分かっていない者は?」
「はーいっ!」
この勉強大嫌い少女に中間考査をクリアさせる苦労の話である。
「お前さんはもう少ししおらしくしんしゃい。」
「えー!」
「たるんどる!一体授業中何を聞いてるのだお前は!」
「此奴何も聞いてねえって。友達の女子と手紙の飛ばしあい。」
「だってそっちのが楽しいじゃーん!授業聞いてても良く分かんないしー!」
「でも、分からないからって聞かなかったら、余計に分からないんじゃないか?」
「う!く、桑ちゃん痛い所を・・・」
「で、分からないから尚更聞かなくなる。負のスパイラルだね。」
「うううゆっきーまで・・・!」
その通り過ぎて何も言えない紀伊梨。
千百合辺りは遠慮なくバーカ、と追い打ちをかけてくる。
「勉強出来ん奴の典型パターンぜよ。」
「ある意味では期待を裏切らないな。」
「もー!もー!分かってるよーう!」
「で、次だ。」
喚く紀伊梨を華麗に無視し、柳は続ける。
「残りの4人だが、どれが苦手でどれが得意だ?」
「俺、理数苦手。」
丸井が軽く手を上げた。
「どれくらい?」
「てんで駄目、の一歩手前?小テストなんかだと、4〜6割。得意なのは国語。」
「丸井は文系なんだね?」
「おう。ま、英語もそこそこでしかねえけど。後得意なのは音楽だしな。」
そう、実は丸井は文系男子である。
しかも英語ではなく国語特化型。受験の時あまり有利とは言えないが、まあ得意科目不得意科目なんてそんなものだ。
「俺は逆だ。国語が苦手で・・・小テストでも、時々1、2割しか取れない事が・・・」
「たるんど、・・・っ!何をする黒崎千百合!人の頭を叩くんじゃない!」
「あんたはもう少し人の話聞いてから物言え。」
「ま、ジャッカルはしょうがねえよ。日本語話す様になってまだ5年も経ってねえもん。」
「そーなの、桑ちゃん?」
「ああ、言い訳みたいだからあんまり言いたくないんだが。得意なのは、英語だな。」
真面目な桑原は、大概の教科には普通についていける。
ただ、国語だけは日本語圏で生まれ育ったことが大前提のカリキュラムなので、なかなか苦労する。
「でも5年で其処まで喋れてるんだから優秀っしょw」
「そういうお前はどうなんだ、黒崎。」
「俺ねー、国語の小説が苦手なんだわ。」
「お前さんもか、俺もじゃ。」
「ねーw登場人物の心情とか知るかよってなるよねーw後は出来るけどw」
丸井が文系男子なら、棗は理系男子である。
数値化された事は考えるのが楽で楽しいけれど、正解か不正解か分からないような曖昧な物は苦手である。
仁王はそれでも分からないなりに楽しかったりするが、棗は完全に苦手だ。
「私、社会無理。」
「へえ!意外だろい。」
「千百合ちゃん、暗記系が苦手で。」
「得意な科目は?」
「音楽。」
面倒がりの千百合は、勉強に対して食指が動かない。
だから必然的に触れる事の多い音楽が得意科目になり、丸暗記が早いと言われる社会科は苦手になる。
「ふむ・・・よし。では、これを前提にして分けよう。」
さあ。
お勉強開始。
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