Why is that 1
「財布、良しっ!鍵、良しっ!筆記用具と、ノートと、携帯と、ファイルに・・・」

朝。
可憐はもう5度目になる荷物チェックをしていた。

今日は地区予選。
忘れ物などあってはならないのだ。

「うん、良しっ!・・・でも、念のためにもういっかーーー」

「きゃあああっ!」

突如聞こえる、母、遥の悲鳴。
可憐は驚き、階下へと駆け降りた。

「お母さん!どうしっ・・・・!?」

開かれている玄関のドア。
其処に立ち尽くす、エプロン姿の遥。

その更に向こう、家の前の通りに。

「リ、リムジンが・・・家の前にリムジンが・・・!」

一生懸命微笑もうとして、引き攣り笑いになっている遥。そりゃあそうであろう、もし傷の一つでもついたら幾らになるか。

そんなリムジンさまのドアを事もなげに開けて、悠々と降りてくるのは勿論跡部。

「可憐さんのお母様ですね?おはようございます。」
「お、おはようございます・・・?」
「俺は跡部景吾と言います。氷帝テニス部の部長です。」
「あ、こ、これはどうも!娘がいつもお世話に!」
「いえ。それより、可憐さんはまだご在宅ですか?」
「跡部君・・・・」

母の陰から可憐が顔を出した。

「ああ、桐生。迎えに来たぞ、早く荷物を持って来い。」
「なんで!?」
「アーン?お前が迷って遅刻なんて事にならないようにっていう親切だろうが。」

親切か?
いや、善意からやっているのだろうけど、これ本当に親切になりきれているのだろうか。

「やから言うてるやん、タクシーにしといたりって。」
「そうよ、ちょっとは庶民の言う事をお耳に入れて下さいまし?」

「忍足君!茉奈花ちゃん!」

「おはようさん。」
「おはよう、可憐ちゃん♪」

よくよくリムジンの中を見ると2人が手を振っていた。
そして座る忍足の隣には潔いほど熟睡している芥川の姿。
可憐はちょっと吹き出してしまった。

「ちょっと待っててねっ!荷物置いて来ちゃった、すぐ取って来るからっ!」

そう言って身を翻す可憐だが。

「「「「走ると・・・」」」」

「きゃあっ!」

綺麗に框に蹴躓く可憐に、全員が苦笑したのだった。



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