Why is that 1
地区予選会場までの道中は神話めいていた。
其処を普通に通るだけで、まるでモーゼの十戒のように周りの車の方がサッと避けてくれる。
万が一擦ったりしてみろと思うと、誰も近寄れないのだ。只のリムジンでも怖いのに、跡部家がオーダーメイドした高級オーラ溢れる代物なら尚更である。
だから会場に着いて他の部員と合流し、リムジンが見えなくなると乗せてくれて有難かったと思うと同時に心底ほっとした。
ああやれやれ、と思った。
思ったのに。
「おい見ろ、氷帝だ。」
「ああ・・・くそ、如何にも強そうだぜ。」
「1年生が部長になったって聞いて、もしかしたら弱体化してんじゃないかとか期待したけど・・・」
「却ってオーラ増してるな。今年も氷帝の優勝か・・・?」
(痛い!視線がとっても痛い!)
大勢からじろじろ見られるという事は、それだけでもう居心地が悪い。
跡部のように、普段から注目のシャワーを浴びていれば気にならないのかもしれないが。
「氷帝学園だ、受付を頼む。」
滞りなくオーダーを提出する跡部。
立海と同じく、氷帝もまた昨年度の地区予選優勝校なのでシード枠である。
いきなり2回戦から始まり、その次が準決勝、そして決勝。
「何処と当たるのかなっ?」
「せやな。そろそろ1回戦終わる頃やし、もう結果出されてるかも・・・」
何人かが見に行こうかな?と思ったが、その必要は無くなった。
向こうが声をかけて来たからだ。
「氷帝学園の皆さん・・・ですね?」
後ろを皆が振り返る。
跡部はにやりと笑って口を開いた。
「そういうお前らは、宇津木西の奴らじゃねえか。アーン?」
薄い緑色の、しかしロゴの入っていないジャージを見て跡部はそう言った。
声をかけてきた彼は、人のよさそうな顔でニコ、と笑う。
「知っていて頂けたとは、光栄だ。」
「勘違いするな。」
跡部はピシャリと言った。
「俺様が見たいのは、そこの目を合わせねえ失礼なルーキーの方だ。学校そのものには興味はねえ。」
(((((おい!)))))
全員が内心で総ツッコミした。
(言い方っちゅうもんがあるやろ・・・)
(それ思ってても言っちゃいけないよ跡部君っ!)
(もー、この部長様ったら〜)
(すげー失礼・・・)
(ううん、流石は景吾君、かな?)
(大丈夫なのかよ、こんな事言って!)
(眠い・・・)
相手の宇津木西の部長は、笑顔を保ちつつこめかみをぴきぴきと震わせた。
どうやらセウトの模様。
「・・・成程、情報通だね。もううちのエースの話は仕入れていたわけだ。」
「他に取り立てて注意を払う事もねえしな。」
ますます固い笑顔になる部長だが、跡部はとっても涼しい態度である。
「で、其処のお前。土方乃亜だったか。」
名前は網代のサーチでもう判明済である。
跡部が話しかけようとすると、土方は他の部員の背にサッと隠れてしまった。
「・・・・・」
「気を悪くしないでくれたまえ。土方君は、テニスの腕は確かなんだが少々シャイでね。知らない人相手は、緊張してしまうんだ。」
「そうかよ。」
まあ試合が出来るのなら普段の振る舞いは別に良い。
「では、挨拶も済んだし我々は此処で失礼するよ。2回戦はよろしく。」
「ああ。」
そう言って宇津木西の選手達は去って行った。無論、何人かには思い切り睨まれた。
「ふう・・・」
「こ、怖かった・・・」
「もう、部長様?ああいう言い方は自重して頂戴、トラブルの元だわ。」
「関係ねえだろうが。どうせうちが勝つんだ。」
「お前、その自信何処で売ってるんだよマジで。」
向日のツッコミは全員の総意でもあった。
まあ入学して・・・というか、跡部が学園を統治するようになってもう2ヶ月なので、そろそろ慣れつつあるけど。
「行くぞ。こっちも準備がある。」
「「「「「はい!」」」」」
さあ。
地区予選の始まり。
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