Solicitation:4th game 3
くるん、くるん、くるくるくる・・・ぴた。
くるん、くるん、くるくるくる・・・ぴた。
「おー・・・おー・・・」
くるん、くるん、ぎゅるるる、ぴた!
「五十嵐?」
「ひいっ!?」
「何をやってるのかな?」
「いいいいいいえ、ななななな何も?」
書斎の一角にある、大きな地球儀。
回したら回ったのでそれが面白くて、勢い付けて回していたらいつの間にか背後にいた神の子に止められた。
「そう。俺には五十嵐がこれを回して遊んでたように見えたんだけど、気のせいかな?」
「うん、そう!そうだよ!気のせいです!」
「本当は?」
「ごめんなさい・・・・」
萎む紀伊梨に、幸村は苦笑して息を吐いた。
「これだけ大きいと、無理に回して倒れた時大変なことになるから、もうしないようにね。」
「はーい・・・」
「ふふっ、ならもう良いよ。手がかりの方はどうだい?何か見つかった?」
「ううん!」
そもそもこの本だらけの部屋は紀伊梨にとって完全にアウェイなのである。
探そうにも何処をどう探せばいいのか分からない。
「ゆっきーはー?何か見つけた?」
「ふふっ。秘密。」
「えー!ずるいずるいー!」
「ずるくないさ。俺達は勝負しているんだから。そうだろう?」
「むー!」
正直言うと、幸村もまだこれといって見つけられてはいなかった。
全員が薄々気づいていることだが、書斎に置いてあるものの大半は勿論本である。
が、これだけの量があるとしらみつぶしに一つ一つ見ていくわけにもいかず、どの本を調べれば良いのか分からないから、逆に本そのものから足が遠のく。
今紀伊梨と幸村が居るのは自習スペース的な一角で、デスクが幾らかと、椅子や地球儀などがある。
「ほっ!ほっ!ほっ!」
「勢いが良いね?」
「さっきも引き出しにヒントが入ってたんだお!だから、きっと今度もこの辺の引き出しの何処かにあるよ!」
先の寝室のドレッサーでの1件から、安易な考えに飛びついている紀伊梨。
確かに引き出しを開けていくという行為は探索上悪くはない考えだ。
しかしそんなに勢いよく開け閉めしていると。
「ほっ!ほっ!ほっ・・・・あちゃあ!」
「五十嵐!」
不意に机から飛び出てきた何かは、紀伊梨の額にスコーン!と鮮やかなクリーンヒットを決めた。
「大丈夫かい?カンフーみたいな叫び声がしたけれど。」
「おお、マジか!どんなんだった!?」
気にするところそこじゃないだろと普通は思うし、幸村も思った。
だから幸村は紀伊梨の質問を綺麗にスルーし、紀伊梨の額と出てきた物体Xの確認に移る。
「・・・うん、ちょっと赤いかな。ああ、血は出てないよ。大丈夫。」
「ふいー、良かったー!ねえねえ、何が当たったのー?」
「これだよ。」
幸村の手にあるのは、ペンダント用のチェーンが付いた十字架であった。
「何これ?」
「ロザリオだ。こうしてペンダントにして持ち歩くことで、何処でも祈りを捧げられる。」
「へー!アクセじゃないの?」
「ふふ。これで着飾るのが目的じゃないからね、厳密に言うとアクセサリーとは違うかな。」
「ふーん。でもなんで飛び出てきたんだろー?びっくり引き出しかな?」
「いや。それは単純に引き出しを勢いよく開きすぎたからだよ。」
「あう!」
引き出しというのは開け閉めが乱暴だと中の物が動いてしまう。
そのせいで本来飛び出るはずのなかったロザリオがポーンと弾んでしまったのだ。
「・・・・・・」
表。
裏。
全くなんの変哲もない、つるんとした銀色のロザリオである。
ヒントを探そうにも、シンプル過ぎて全く見つからない。怪しい点がなさすぎる。
「どこにも何にも書いてないねー!ヒントじゃないのかな?」
「いや・・・間違いなくヒントではあるよ。」
「そーなの!?どして!?」
「古くないからさ。あまりにも綺麗過ぎる。多分、ゲームのために棗がわざわざ買ったんだろうね。」
傷一つないピカッと光るロザリオは、周りの古いものの中で明らかに異質。
しかし何もないということは、ロザリオの何処かに手がかりが・・・ではなくて、ロザリオが此処に在るということがおそらくヒントなのだ。
「はい、五十嵐。」
「へ?」
「これは五十嵐にあげるよ。」
「おお、マジかー!?良いの?」
「ふふっ。元々五十嵐が見つけたんだし、それにロザリオそのものには多分あんまり意味がない。誰が持っていてもゲームにはあまり影響しないと思うから。」
「わーい、やったー!」
とりあえず貰えた事が嬉しい紀伊梨は、いそいそとそれを首にかけてみせた。
「んしょ、んしょ、よっしゃー!どう?似合う?紀伊梨ちゃん可愛い?」
「ああ、可愛いよ。可愛いけど・・・」
「けど?」
「あんまり、五十嵐らしくはないかな。」
紀伊梨が祈る時なんて、腹が痛い時とかテストがやばい時とか要するに困った時だけである。慎まやかで敬虔なクリスチャンと現金な性格の紀伊梨はあまりにも真逆であった。
「そっかー、そうだねー。ゆっきーのが似合うから、やっぱりゆっきーが持ってる?」
「ううん、別に俺も似合うわけじゃないんじゃないかな?」
「えー、そんな事ないよー!ゆっきーって神様にお祈りとかはしないけど、して「そう」な感じはばっちりしますよっ!」
「あはは。たまに言われるけれど、どうしてだろうね?」
幸村は神には祈らない。
別に信じてないとか無宗教だとかいうわけじゃないが、神に祈ったってポイントが取れる訳じゃないことを良く知っているからである。
「でもゆっきーって、「神の子」なんでしょ?神様にお祈りしないにょ?」
「あれは皆が大袈裟に言ってるだけだよ。俺は別に自分から「俺は神の子だ」なんて言った事は無いし、これからも名乗る気は無いし。」
「そーなの?折角かっこいいのにー!もっと自慢しちゃっても良いんですぜ、旦那!」
「ふふ。褒めて貰えるのは有難いけれど、二つ名で格好つける趣味はないからね。」
「ふーん?」
そういう真面目なところが、余計神様イメージを周りに与えているのを幸村は知らない。
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