Solicitation:4th game 3

「はあ。」

千百合は溜息吐き気味に本をぺらぺら捲っていた。

はっきり言おう。興味ない。

小説より論文が多いし、そもそも読み物に然程興味が無い。

探すと言っても何処を探せばいいのか分からないから、取り敢えず手あたり次第本を開け閉めしているが、どうにも手応えの無さを感じてしまってトーンダウンしてしまう。

「・・・ん?」

何か変わった本は無いかと辺りを見回すと、居た。
変わった本じゃなくて、変わった丸井が。

「・・・・・・」
「なんだ又食い物の話か。」
「うお、吃驚した!黒崎かよい。」

めちゃめちゃ集中して立ち読みしているから何しているのかと思ったら、読んでいるのはレシピ本である。
家庭に学ぶフランス菓子とか表紙に書いてある。

「何か熱心に見てるから何かと思ったのに。」
「良いだろい?結構見やすいぜ、これ♪」
「えー、私やだ。」
「お前は本嫌いなわけ?」
「その本が嫌い。見てるだけで甘ったるい。うえ、ってなる。」

写真付きで丸井の言う通り分かり易くはあるが、なんという砂糖の量。そして生クリームの量。あほかよ、と千百合は思うが、洋菓子と言うのは得てしてそういうものである。

「はいはい、閉じますよ。お前は何か読まねえの?まあ別に読書しに来たわけじゃねえけど。」
「別に。私そこまで本に興味ないし。」
「ふうん?まあ本に限らねえけど、確かにお前が何かに熱心なのっていまいちピンと来ねえな。ベース位?」
「まあ。」

正確に言うとそのベースすらも紀伊梨程愛してるとは言い難いのだが。

「だって面倒じゃん。」
「面倒?って何が面倒?」
「何かこう・・・一生懸命なもの増やすのが怠い、なんか。そんなエネルギー無い。疲れる。」

夢中になれるものと言うのは、要するにそれがやりたくて楽しくて堪らないという事だ。
それは良い事とは思うが、ライフワークの種類が増えると思うと千百合はそっちの方が怠くて堪らない。
いとも簡単に好きな物を増やす紀伊梨や、根を詰めて頑張る紫希は良く出来る物だなと思う。自分はベースで手一杯だ。

それを聞くと丸井はブハッと吹き出した。

「年よりみてえな事言うなお前!俺達まだ中1だろい?青春まっしぐら!って年じゃねえの?」
「まっしぐらしたいなら勝手にどうぞって言ってんの。私しんどいから見とく。」
「ふうん。でもま、見とくっつっても無理だろうから、ウォーミングアップ位はしとけよ。」
「は?なんで。つうか嫌。」
「そんな事言ったってお前、五十嵐のバンド入ってて幸村君の彼女でって、もう盛り沢山の学生生活は決定事項だろい。」
「・・・・・・・」

正論。
実に正論。

偶々以外の何者でもないのだが、現状自分の周りには幸村に紀伊梨にと、「天才」の名を冠するに相応しい人間が2人も居て、のんびりゆるゆるだらだら・・・みたいな事は望めない。

「はーあ・・・」
「お気の毒様?楽しくなりそうだし良いじゃん、って俺は思うけどな。」

「・・・まあね。」

疲れる。
面倒い。
怠い。

でも結局楽しいんだろうなと言うことは千百合はよく知っている。

だから結局付き合ってしまうのだ。

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