Solicitation:4th game 10

「・・・そういう事か、一本取られたね。いや、見ようによっては、ギリギリ先回り出来ている、かな?」
「何がー?ねー、ゆっきー!」

紀伊梨と幸村は、なんとか目指していた場所。
つまり部屋の最奥ーーーゴールがあるのでは、
と踏んでいた場所に到達していた。

果たして、其処に目当てのものはあった。
一応。

ただ。

「良く分かんないよー・・・歩んだ?ねー、これなんて読むのゆっきー?」
「軌跡。」
「奇跡?」
「奇跡じゃなくて、軌跡だよ。辿ってきた跡、という意味だね。」
「へー!ん?でも、やっぱり良く分かんない!」

2人の前には、柵。
乗り越えるべからず、と書かれている。

そしてその向こう、30m程離れた所には、スイッチが2つある。
無論、AチームとBチームの物である。

そして、そのスイッチの下には蛍光塗料で書かれた暗号文。



『鍵は汝らの軌跡にこそ置き去りにされるものなり。』



「鍵って、なんの鍵?あのスイッチ?辿ってきた後に鍵が置いてかれてる?・・・???」
「・・・・・・」

紀伊梨は分かっていないようだが、幸村はもう、これを見て読んだ瞬間繋がった。

鍵。つまりあのスイッチを押す術。
そしてこの柵を越えてはいけないという条件。

これはつまり、テニスでスイッチを押せという事である。

ラケットは持ってる。
では、ボールは?
肝心のボールはどこにある?

答えは書いてある。
辿ってきた軌跡。


つまり一度ボールのある所を通過する事で、ライトの光を吸収した蛍光塗料が反応し、テニスボールが光り出す。
それを見つけて、持って来いという事だ。


この暗闇。
この状況下で、テニスボールを自力で見つけるのは難しい。

しかし、発光するのなら話は別だ。
周りが暗いからこそ、闇の中で浮かび上がる希望の鍵は何より見つけやすい。

問題は、である。
それを踏まえて、今の自分たちの状況を鑑みると、だ。

(まずい・・・今こっちのチームは、俺しかライトを持っていない。皆が上手くBチームの後についていけたとしても、どこを進むかは相手任せだし、ボールの取り合いになる。かといって単独で動いていると、ボールはもしかして見つけられても、その後身動きがもう取れない。ライトなしで此処までたどり着くのは、如何にも厳しい。)

どう転んでも、すんなりとはいかない。
一番話が早いのは、幸村が自らボールを探しに軌跡をなぞる・・・要するにボールを求めて逆走する事であるが、折角たどり着いたゴールの位置から又離れるのは惜しい。

ただ、離れるメリットもある。

「・・・仕方ない、行こう。」
「うえ!?此処、ゴールじゃないの!?」
「ゴールだよ。ただ、今の俺達じゃあのスイッチを押せない。鍵を探しに、一旦離れなくちゃ。」
「・・・そなの?」
「うん。」

流石に、敵チームに向かってあれこれ進んで種明かしはしない。
まあ察されるのは時間の問題だろうが、それもまあ仕方がない。

それより何より弱るのは、スピーカー・紀伊梨がこの場に居る事である。

人間の心理とは不思議なもので、ゴールはどこだゴールはどこだと考えながら進んでいると、ゴールでないもの・・・足元に等気を払わない。

だが逆に、仲間の誰かがゴールを突き止めたと分かると、安心感から周りを見回す余裕の出るものが現れだすだろう。

一番ありそう且つ避けたい展開は、紀伊梨がスピーカーを発動し、誰かが「鍵」を持って此処へ真っすぐ来る事。
そうならない為には、自分が紀伊梨を連れて此処を離れれば良い。

「さあ、五十嵐。」
「・・・・」
「五十嵐?」

「・・・紀伊梨ちゃん、此処に居る!」

幸村はライトを取り落とすかと思った。

「五十嵐、忘れてるかもしれないけれど、五十嵐のライトは俺が持っているんだよ。」
「う、うん!」
「此処に真っ暗なまま、一人で残るんだよ?分かっているのかい?」
「う、うにゅ・・・」

段々萎んでいく紀伊梨。
怖くないわけではないのだろう、やはり。

「・・・どうしてそんな事を言い出すんだい?」
「う・・・だって!此処がゴールなんだったら、此処で皆を呼んだらそれで良いじゃん!」

(流石に気づくか・・・)

紀伊梨の言う事は至極尤もである。幸村だって出来るもんならそうしたい。
ただ、今回は取った作戦が作戦だったので、それが通らないのだ。

「だ、だから紀伊梨ちゃん此処に居るもん!ラ、ライトが無いのはちょっと怖いけど・・・皆その内来てくれるから、だいじょーぶだもんねっ!」
「・・・・・・」
「・・・で、出来たらライトは置いて行ってくれたら、紀伊梨ちゃんゆっきーに超感謝するんだけどなー・・・」

皆勝つ為に頑張っている。
紀伊梨は自分が怖いからこそ、自分ばかり怖い怖いと怯えていられないと思っていた。
まあそれを差し引いてもAチームの作戦は酷いと思うけど。

だから此処に居続けることが皆の為になるのなら、紀伊梨はそうしたいのだ。
怖いけど。すんごく怖いけど。超絶怖いけど。

「・・・五十嵐の考えは分かったよ。」
「お、おう!うん!」
「ところで五十嵐、ちょっと俺の話を聞いてもらえるかな。」
「うん?」
「このワインセラーにはね・・・」



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