Solicitation:Epilogue 1
「えー。皆様。


お疲れ様でしたーーーーー!」

「「「「「お疲れ様でしたーーー!」」」」」


棗の叫びが、ゲームの終わりを告げた。

終わった。
終わったのだ。

「疲れたよ〜〜〜〜!でもちょー楽しかったねー!」
「ええ。流石に、丸一日手も頭も動かしていると些か疲労致しますね。」
「だが、なかなか参加のし応えがあって、楽しめたな。有意義な一日だった。」
「・・・!?」
「む?なんだ五十嵐、その顔は。」
「真田君が、楽しかったと仰った事に驚いていらっしゃるのではないですか?」
「そーだよ!やったー!やったー!真田っちが楽しかったってー!やったやった、頑張ったぞー!」
「・・・お前は俺を何だと思っているのだ。」
「まあまあ、真田君。自分の企画した催しが成功するのは、嬉しい物ですよ。」

「きっつ。しんど。」
「遠慮なく座るのう、お前さんは。」
「知るかもう。あんたらは良く立って居られるわね。」
「まあな。流石にお前らよりは疲れてねえし?」
「付け加えると、此処で座り込んだ場合、後から真田に注意を食らう可能性98.73%だ。」
「げ。マジ?」
「駄目と言われると惜しくなるのう。」
「知るかよ。座るわ。私、立たないからね。」
「まあ、今日は良いんじゃねえの?」
「ああ。今日はもし何か言われたら、俺から言っておこう。幸村も異論はあるまい。お前達は女子なのだし、運動部なわけでも無いからな。」
「マジ?あんがと。」
「参謀、序に俺の事も言っておいてくれんか。」
「いや、お前は駄目だろい?」
「ピヨ。」


「はあ・・・」
「春日、手は大丈夫か?」
「あ、桑原君。ええ、大丈夫です・・・流石にもう、これ以上は力が入りませんけれど。」
「だろうな・・・あんまり無理するなよ?」
「帰りもあるから、荷物やなんかは誰かに頼めばいいよ。心配しなくても、手伝うのが嫌だなんて人は此処には居ないし。」
「だ、大丈夫です!手提げなので、口で咥えたら自分で運べます、」
「「だから、其処までしなくて良いんだって。」」

わあわあ騒ぎだす一同。
棗も全てが終わった安堵感でいっぱいになるが、まだ、まだ終わってない、やらないといけない事はまだあるのだ。

「では皆さんちゅーもーく!」

皆がピタリとお喋りを止めて、自分の方を向く中、棗はいそいそとしまってあった紙を取り出した。

しっかりした紙質。
サイズはA3。

そう、これは表彰状である。

「ゴホン。えー・・・では。改めまして。

・・・Bチーム代表、柳生比呂士君!」

「はい。」

あの後。
紀伊梨と仁王は、食らいついたが2ゲームの差は返せなかった。
その後の幸村対柳戦はやっぱり幸村の勝利に終わり。

そして出た結果。
勝利は3勝2敗にて、Bチームの勝ち。

「えー、柳生比呂士君!貴方は本日の長い戦いに於いてチームメイトと共によく健闘し、勝利を納めました!よって此処にそれを賞します!良く頑張りました、おめでとう!」

皆が拍手する中、柳生は棗から賞状を受け取った。

「手書きですまんなw」
「何を仰います。手書きだろうと印字だろうと、そんな事は些末な問題ではないですか。」

どんな立派な賞状より嬉しい。

自分は、自分達は戦った。
そして勝ったのだ。

(・・・まあ、見ようによっては負けたとも捉えられるのかもしれませんが。)

こうしてね。
一日楽しかったな、と思ってる時点でさ。
ビードロズの意図通りにはなってしまっているわけで。

まあ、しょうがない。こんなに楽しかったんだから。

「おめでとーーー!やったねやーぎゅ、今日のMVPっすよMVP!」
「おめでとう御座います、柳生君。」
「お疲れ。」
「いえいえ。こちらこそ、今日を計画して頂いて有難いと思っていますよ。テニス部の皆さんも、チームメイトとして惜しみなく協力して頂けて。」
「ふふっ。良いんだよ。俺達だって、今日は楽しかったんだから。」

幸村の感想は、テニス部の総意であった。
付き合ってやっただとか、協力してやっただとか、そんな「してあげた」と思ってる奴なんか何処にも居ない。
皆進んでやった。楽しんだのだから。

「では、次の発表に移りまーす!」

そう。結果発表はこれで終わりではない。
始めにちらっと言っただけなので、もう半分忘れてる人が沢山居るけれど。

「チーム関係なく、ゲームに勝利している人の表彰です。先ず、優勝者は・・・・

テニス部所属、幸村精市君!」

「はい。」

幸村は涼しげに微笑んで、次の賞状を持つ棗の前に立つ。

「えー、貴方は今日のゲームに於いて非常に優秀な成績を納めましたので、これを賞します。成績は、5ゲーム中、5ゲーム勝利!文句なく優勝!おめでとうでした!」
「ふふふっ、有難う。」

そう。なんとこの男、参加したゲームは全部勝利チーム側に所属していた。
負けなし。
実際、幸村が居なければ両チーム勝敗がひっくり返っていたゲームが幾つもあっただろう。

「流石だな、幸村。」
「うむ。素晴らしい結果だ。」
「ふふっ。有難う、でも偶々さ。運が良かったんだよ。」

(((((嘘吐け)))))

逆に運の差を実力で埋めたみたいな場面だって何度も作って居た癖に、何を言うかこの男。

「ちょっと、何帰ろうとしてんのよ。」
「え?」
「ふふっ。幸村君、お忘れですか?」
「ゆーしょー者には、景品があるんだお!」

景品。
優勝者に。

「そういえば、言われていたね。」
「忘れてたの?」
「正直ね。途中からは、何の為にというより、ゲームそのものに夢中になっていたから。」

「その顔は、お前さんらも忘れとったんかのう。」
「おう!スポーン、って頭から抜けてた。」
「最後の方はもう、兎に角必死だったしな・・・」

「あ、柳生君にも景品が後からありますので。」
「ああいえ。お構いなく。」

すっかり忘れられていた優勝賞品を、棗は後ろから取り出した。

「優勝賞品はwこれでーすw」

取り出しましたるは、ミシン目付の紙。
全部で4枚。

「??これはなんだい?紀伊梨、紫希、千百合、棗・・・皆の名前しか書いていないけれど。」
「それはお願い券ですw」
「お願い?」
「そうw俺達ビードロズ1人1人に、お願い事を出来る券w使う時は、聞いて欲しいメンバーの部分をちぎって渡してねw」

要は、メンバーの1人1人に対して、1つだけ言う事を聞いて貰える権利、という事である。
裏を捲ると、やはりというか流石というか、やってはいけない事がわっと書かれている。

「何々・・・禁止事項。金銭を相手に出させる要求は駄目、願いを増やしては駄目、犯罪をさせては駄目。」
「成程、そういった事も指定されているのだな。わざわざ敢えて書くまでもない気もするが。」
「いえ。これは矢張り書かなくてはいけませんよ、真田君。」
「そういうものか?」
「今偶々幸村君に当たったから良いけどさ。書いてねえからって言って妙な事させそうな奴が居るだろい?」
「プリッ。」

自覚はあるらしい。
実際今、良いなー、欲しいなー、と思っている。

「有効期限は無し。但し、紛失しても再発行はしない。」
「持っている限りは、何時でも使えるという事だな。」
「・・・尚、人への譲渡は認めるものとする。」
「でも、しないだろ?するか?」
「うーん・・・どうかな。」

する、かもしれない。
事と次第に寄っては。

「まあ、いずれにしろ大事に使うよ。有難う皆。」
「お手柔らかにねw」
「なるべく軽いので頼むわ。」
「ふふ。でも、幸村君はそんな可笑しなことは頼んで来ないと思います。」
「・・・ねー、ゆっきー?」
「うん?」
「あのね?何頼んでも紀伊梨ちゃんはオッケーだけど、勉強の事だけは止して欲しいにゃー、なんて・・・」
「ああ、そんな事は頼まないよ。」
「ほんと!?やっ「それは真田と柳と、協力してやろうと思っているから。」ったー・・・いや、やってない!えー、許してよゆっきー!」

慈悲は無い。
可哀想とも思わない、紀伊梨の為を思えばこそである。

「さて、お次ですねw2位の人に賞品だwと、言いたいんだけど・・・」
「けど?」
「ちょーっと予想外の事が起こりましてねw」

苦笑いする棗に、皆?な顔をお互い見合わせた。

「もしや、同率が何人か居る、という結果か?」
「いや、確かに2位が3人居るは居るんだけど、同率は正直予想はしてたんだ。ただねー、面子がねー・・・」
「「「「「「「?」」」」」」」
「・・・先ず、柳生君!3勝2敗!」
「おや?私ですか?しかし私は先程・・・」
「さっきのはリーダーとしての功績だwこれは個人成績だから、又別物ねw」

リーダーが表彰で被るのも仕方がない。
此処までは想定内だった。だったのだけど。

「・・・じゃあ、後2人発表します!

春日紫希!黒崎千百合!共に3勝2敗で同率2位です、おめでとう!」

「・・・え、」
「はああ?」

「だってそーなんだもん・・・!」

そう。
なんと吃驚、企画者側が2位を占めてしまったのである。

ビードロズの3人だって競技に参加してるんだし、カウントに入れようとは思っていた。
でも、まさか2人も入るなんてこれはちょっと予想外だった。

「別に、良いんじゃないか?」
「ジャッカルの言う通りだぜ。企画者だろうと、成績は成績だろい?頑張った、って事で良いじゃん。」
「ああ。3勝上げられなかった俺達が力不足だった、というだけの話だ。」
「男子は不甲斐ないのう。」
「ふふっ。まあ今回は、2人が勝利の女神だった、っていう話で良いんじゃないかな。」

そう、この成績の偏りは、つまり女子が多く入ったチームがより多く勝ち星を上げた、という結果にも結び付いている。

まあ、とはいえこの場面で企画者なんだから云々なんて言う人などいない。
というか、誰が言うんだそんなせせこましい事。

「じゃあ柳生君、個人成績の景品の進呈ですが・・・」
「はい。」
「引いて。」
「はい?」

棗が手に持っているのは、三角くじの箱である。

「この中にはねw幸村が貰ったみたいな奴が入っているw」
「お願い券、ですか?」
「そうwただし、お願いはこっちでもう予め書いてあるからね、こっちは。」
「ああ、成程。」

幸村が貰ったのをAMAZONギフトカードとするならば、これは図書券のような物。
何にでもは使えないという事だ。

「では・・・はい。」
「どうぞ、開けてw」

何だか第一ゲームの罰ゲームを思い出すな、なんて思いながら三角くじを開ける柳生。
あれー、おっかしいなー、これは賞品の筈なのに。

「・・・・・」
「何だったw」
「幸村君、交換致しましょう。譲渡は可能でしたよね?」

棗を丸無視してせかせかと幸村の元に行く柳生に、全員が何かを察した。
しかし具体的には何引いたんだろう。

「ねーやーぎゅー!何引いたの、んぶっ!?」
「止めろ!又死人が出るかもしれないんだぞ!」
「失敬な、俺はまだ死んどらんぜよ。」

「中身は分からんが・・・」
「黒崎絡みである確率、99.128%だな。」
「黒崎も大概懲りねえ奴だよなー。」

「おい。おい、くそ兄貴。」
「棗君・・・」
「いや!大した事は入れてないって、これは!」
「そうなんですか?」
「・・・ちょっとはあるかも。」
「死ねよ。」
「いだいいだいいだいいだい!」

「黒崎君のお願い券と、交換して頂きたいのですが。」
「良いけれど・・・柳生は何を引いたんだい?」
「これです。」
「・・・・・」
「・・・正直貰っても、私はこれを何時どう使えば良いのか分かりませんので。」
「そうだね、柳生はそうだろう。分かった、交換といこう。」
「有難う御座います。」
「とんでもないよ、俺の方こそ有難う。」

ああ、あのやりとりの中身を知りたいけれど知りたくない。
あの券の中身も知りたいけど知りたくないけど、多分その内知る羽目になるんだろう。

「なんなのあのくそが、死ねよ・・・!」
「ま、まあまあ、悪い事とは限りませんよ。ね?」
「そーそー!もしかしたら、ラブラブ系の何かかも「ああ?」ごめんちゃい!」

「さーさー、次を引こう次をw紫希ー。」

「あ、はい!」

三角くじの元へ行きつつ、自分が引いてて良いんだろうか・・・という念はどうしても拭えない。

「・・・これにします。」
「はいw何だった?」
「ええと・・・五十嵐、紀伊梨に頭を撫でて褒めて貰える券?」
「あー!紀伊梨ちゃんのだー!」

紀伊梨に頭を撫でて、褒めて貰える。
成程、とても癒されそう、とは思うが。

逆に言うと、こういうのの自分バージョンなんかも入っているのだろう。

(柳生君は多分、こういう類のものの、千百合ちゃんバージョンを引いたんでしょうね・・・)

「ねーねー、何時使うー?今?今?」
「あ、今はまだ。もっと、大切な時に使います。」
「そーお?なるべく早くね!特別サービスで、一回分おまけしてあげても良いよ!」
「ふふっ。有難う御座います。」

「なんだか和やかなムードですが・・・」
「実際、俺達が引いたらと思うと、どうしようもないな・・・」
「確かに、春日が引いたから良い様なもののっちゅう所はあるナリ。」

だって、これってあれだぞ。
これを出すって事は、自分は貴方に撫でて褒めて欲しいんです、って紀伊梨に言うような物だぞ。

「何あんたら。紀伊梨は嫌なの。」
「五十嵐がどうこうという話ではないだろう!」
「プライドに関わる、という事だ。男としてな。」
「何が?女子に褒められるのが?」
「じゃなくてよ。あー・・・なんて言ったら分かり易いんだろうな、こういう時。」
「褒められるのが嫌なんじゃないんだよ、千百合。」
「なら良いじゃん。」
「うん、それは良いんだ。でもこの券は言うなれば、褒めて下さい、って自分から頼みに行くようなものだろう?それに抵抗があるんだよ。」
「????」

千百合は今一つピンと来ない。

これが、慰めなら話は分かる。
落ち込んだ時に、慰めて下さいとお願いする券とかなら、絶対使いたくないという心理は千百合にも働く。
でも、褒められるのなら良いじゃないか。
恥ずかしいのかと思ったけど、それはなんだか違う様な気配を感じるし。

「???褒められるような事してないから、とかそういう話?」
「ちょっと違うかな。」
「ふーん?紫希はその内して貰う気満々みたいだけど。」
「春日は女の子だからね。」
「お前逆に、嫌じゃねえの?例えば幸村君・・・は、例としてあれだから避けとくとして、柳生に褒めて貰える券。みたいなのがあったら使うわけ?」
「それは恥ずかしいから嫌だけど、柳生じゃなくて紀伊梨の券でも同じくらい恥ずかしいし嫌だもん。」
「うーん・・・」

男のプライドは、女の子には分かり辛い。

「おーい、妹ー。次はお前の番だよー。」
「はいはい。」

変なの引きませんように。
と、思いつつ千百合は一番最初に触ったのを引いた。

「・・・・・」

ええ。
ええ、これ。

「千百合っちー!何引いたのー?」
「ほら。」

三角くじに書いてあった文面。

春日紫希に我儘言って貰う券

「棗君!どうしてあんなくじ入れているんですか!?」
「いや、面白いかと思ってw」
「面白いわけないじゃないですか・・・!」
「いや、面白いよwお前ならそんな変な我儘言わないだろうしw」

「あー!良いなー!良いなー!私それ欲しいー!」
「言うと思った。」
「くれるの?」
「え、嫌だ。私自分で使う。」
「えー!」

「へえ、面白いね。」
「確かに。春日に我儘を通す券、ではなくて自分が聞く側に回る券だからな。」
「発想としては斬新じゃのう。」
「しかし、褒美になるのか、これが?」
「まあ、日頃春日さんはああしろこうしろと人に頼まない方ですから。何を言い出して来るかという意味で、興味は掻き立てられるのでは?」
「ふむ、そういうものか。」

「・・・・」
「ん?何?」
「いや・・・」

お前、券なくても同じような事してるよね。
と、桑原は親友に対してちょっと思う。

「・・・因みにブン太。」
「ん?」
「お前、黒崎のあの券欲しいか?」
「うん。」
「なんで?」
「え、面白そうじゃん?何言ってくんのか興味あるし?」
「まあ・・・」

友達が、普段ならやらない事をやるのを見ている図、というのは面白くはある。

ああでも、微妙なラインだなあ、と桑原が考えている間に、棗は三角くじを仕舞って言った。

「と、いうわけで、今回の企画はこれにてしゅーりょー!皆荷物纏めてー!バスで帰るよー!」



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