Solicitation:Epilogue 2

『でも、そうは言っても、昨年度の今年度だぞ。どうにかならないのか?』

「いや・・・・。俺も、それは思ってる。だから、周りが避けさせてくれるだろうと思って居たんだが・・・・。」

『はあ・・・なあ、五十嵐。お前は自分の立場を分かってない。』

「立場・・・・?」

『そうだ。お前はもう、俺に手を貸してくれた頃の副部長じゃないんだよ。役員の1人なんだから、もっと責任をだな、』



「おとーさん!おかーさん!おやす・・・うお?おとーさん電話?」

五十嵐家では、紀伊梨が幸村の行動をそっくりなぞっていた。
そろそろ寝るから挨拶しようとリビングを覗き、そしたら親はもう22時だと言うのに電話中で。

「そうだよー。だからお父さんの邪魔しないようにしなさいね。」
「ほいほーい。おかーさんおやすみー!」
「はい、おやすみ{emj_ip_0173}」

父親って大変だな、なんて思いつつ欠伸を1つ。

紀伊梨は体力のある方だが、流石に今日はもう眠い。
とてつもなく。

口元をむにゅむにゅ、目をしょぼしょぼさせながらふら〜っと自室に入ってベッドに倒れ込むと、もうそれだけで寝落ちそう。
布団を被る気すら失せて来る。

(・・・あり?っていうか、布団被らなくて良くない?)

目を開けて、窓を開けると、涼しい風がさーっと入ってきて、髪を揺らした。
そこで初めて気が付く。

ああ。
もう、窓閉めてると夜でも寒くない。

「おおお・・・・!」

唐突に夏の気配を感じて感動する紀伊梨だが、一応カレンダーの上ではとっくに6月。

今に、この星空に夏の大三角が輝き出すだろう。
そこら中で蝉が鳴き始めるし。
窓に風鈴が吊り下げられて。
太陽の光を浴びるラムネ瓶がとびきりキラキラするようになる。

「・・・・ぬぬぬぬぬ!あー!駄目!駄目駄目!」

紀伊梨は急いでスマートフォンを起動した。

「フフフーン♪ラララ・・・ラララン♪ラララ・・・」

寝ようと思っていたのに。
遅刻したらまた怒られるのに。

ああ、でも駄目なんだよ。
一度頭の中でメロディーが流れだすと、もう止められない。

明日までなんて待ってられないし、自分は馬鹿だから明日になるともう思い出せない。
無理矢理思い出しても、絶対どこかが違う。何かが違う。

今。

この場で。

この瞬間に感じた何かしか、今歌っている曲は作れない。

「ラララーーラーーンンンン、ランラララ・・・♪」

棗はどう編曲してくれるだろうか。
イメージはバラードとポップの中間寄りだから、楽しそうにして欲しいな。
紫希には、夏っぽい歌詞でとお願いしよう。
もう何曲も夏の歌はあるけれど、頼む度に違う言い回しを紫希は出してきてくれるから、楽しみでならない。
あ、此処。千百合は多分嫌がる。
こんな面倒なコード弾かせるなよ、とか言いながらきっちり仕上げてくれる筈。いやはや、我が親友は本当に頼りになるなあ。

「ラララ、ラララ♪ルールールールー、ルルルール♪」

ああ、楽しみだ。
早く皆に聞かせたい。練習したい。

明日よ、もっと早く来い。
直ぐ来い。今来い。巻きで来い。

もっともっと欲しいんだ!

「ラララー♪ラララ・・・」

心優しい弟が。
終わった頃を見計らって、ねーちゃん煩い!と言ってくるのは3分ほど後の話。



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