Meeting 1
「ねーねー、逆にさー!一回で印象バッチリ、ガツンとアピール!みたいな事って出来ないかなー?」
「あっ!確かに、それが出来ればスムーズだねっ!」
「えー。」
「んお?千百合っちはそー思わない?」
「思うけど、難しいでしょ。実際、具体的にどうしろっていうのって感じになるじゃん。」
「・・・で、どうです春日さんw」
「え?」
「ブンブン君は多分そういうの上手いでしょwお前の懐くスピードから考えてw」
「え、ええ?えええ・・・と・・・」
懐くかどうかは置いて於いて、自信を反芻する紫希。
「・・・そうですね、丸井君の話をするのなら、私紀伊梨ちゃんからお話を沢山聞いていたのがとても大きいと思います。」
「あー、分かる。私もなんか、ちゃんと会う前にイメージ結構固まってたもん。」
「そだねー。ブンブンは一番最初の友達だったし、いっぱい喋ったなー!」
「でも、心理学でそういうのあるよねw第三者が良いよね良いよね、って言ってる物に対しては、普通以上に良く見える、みたいなやつw」
「おお・・・成程っ!その人の良い事を、他の人から沢山聞くんだねっ!」
つまり、忍足の事を網代の前で山盛り褒めれば良い訳だ。
これは簡単に思える。忍足の良い所は沢山あるから、うんうん悩んで捻り出さなくても材料に事欠かない。
「そうですね、それから・・・タイミングが良いです。」
「タイミング。」
「はい。上手く言えないんですけれど、こう・・・居て欲しい時に絶対居てくれるというか、誰かに助けて欲しいって思った時に、助けてと言う前に助けてくれるんです。」
(あ・・・)
トン、と可憐の胸が高鳴った。
居て欲しい時に居てくれる。
助けて欲しい時助けてくれる。
(・・・それ、)
自分にも思い当たるふしがある。
誰がとは言わないけれど。
「でも、いけませんよね。」
紫希の言葉に、可憐はハッとした。
「・・・駄目なの?」
「ええ、あまりいつまでも甘えていては。ご迷惑になりますし・・・」
「えー?別にブンブンはめーわくとか思ってないと思うけどなー?」
「そうだとしても、やっぱり駄目なんですよ。」
「ねえ紫希、あんたいい加減その変な遠慮、」
「でも、丸井君は私の王子様じゃないんです。」
「・・・!」
「・・・・・・」
「・・・むー。」
(・・・?)
紫希の言葉に、皆が一斉に口を噤んだ。
「・・・ど、どうしたの皆っ?」
「あ、ごめんなさい・・・でも、」
「つまりねw今紫希が言いたかった事的には、本来そうやって側に居たり助けてくれたり、そういうのは好きな人に向かってするべきでしょ、って事w」
「え、そう?そうかな、」
「そりゃ友達も大事だけどー。同じ事出来ないからなー。」
「同じ事?」
「どんなに友達が困ってても、恋人と同じくらい大切には出来ないでしょ、って事。もし完全に同じくらい大切なら、どっちとも四六時中一緒に居られるように、ゆくゆくは3人以上で一緒に暮らさないとでしょ。」
「あ・・・」
今はまだ遠い遠い未来でも、丸井だっていつか誰かを選ぶ。
一生一緒にいる人。
人生を捧げる人。
それは誰だか分からないけれど、その人に該当しないのに、甘えるのに慣れてはいけない。
いつか甘える資格を持つ人が現れた時、嫌だなんてだだをこねるような真似は出来ないのだから。
「ですから、やっぱり私、もう少ししっかりしませんと!何を助けて頂かなくても、大丈夫なように・・・」
「えー、無理と思う。」
「どうしてですか!?」
「進んで行ってるからなあwお前がどうのって話じゃないでしょw」
「ブンブンにお願いしないとだよねー。よし、紫希ぴょん!紀伊梨ちゃんからも言っておいてあげるよ!」
「本当ですか?」
「うんうん!だからさ、その後は困ったら紀伊梨ちゃんに言ってみてよ!」
「やっぱしばらくの間は丸井に任せとこ。」
「そっちのが安心だなw」
「えーーー!そんなーー!」
「紀伊梨ちゃん、私紀伊梨ちゃんの事だっていつも頼りにしてますから、」
「・・・・・・」
可憐は無言になった。
今、紫希としては完全に自分の話をしたつもりだったのだろう。
でも、可憐の胸にはぐっさり刺さった。
(そうだよね・・・いつまでも甘えてちゃいけないんだよ。忍足君はずっと友達で居てくれるかもしれないけど、友達よりも優先しないといけない人が出て来るもんね。ずっと傍に居てくれるわけじゃないんだから・・・)
どんな親友でも、同性でも異性でもそう。
いつかは自分より大切な人が出来てしまう。
勿論、友達と恋人とどっちが大事、という質問はナンセンスである。恋人も友人も大切だけれど、人間に分身の術は使えない以上、ずっと寄り添う人を決めなければいけない時はくる。
いつになるかは分からないけれど、その日に対して紫希は早くも備えようとしている。
(偉いなあ、皆は。私、其処まで考え付かなかった。)
などと思う可憐だが、実際問題、これは偉いわけじゃない。
ただ、知っている。
ビードロズは小学校の折、すでにこの問題に対して痛い目を見た事があるから。
「ええと、話を戻しますと。」
「えっ?」
「時間をかけないで相手に親しみを持って貰いたいなら、難しいですけれどタイミング良く助けたり、相談に乗って貰ったり、そういう事が出来れば良いかと。」
「・・・あっ!うん、うんっ!そうだねっ!」
そうだ、そうだ。
大元はその話だった。
「って事はー、つまり可憐たんのお友達さんはどーすれば良いの?」
「まあ、先ず前提として告白は頑張ってするように盛り立てないとなw」
「後は、デートの行き先を合わせて、回数こなしつつタイミング良く傍に居る事か。」
「それから、此方で出来る事と言えば相手の方になるべく良い評判をそれとなく・・・という感じですね。」
「・・・うんっ!」
纏まってくる情報。
可憐は手応えを感じる。
「有難う、皆っ!考えが固まってきた感じがするよっ!」
「えっへん!ビードロズ大活躍だねっ!」
「いや、そんな大した事はしてない。」
「えー!」
「そ、そんな事ないよっ!皆が居てくれて、私すーっごく助かったもんっ!」
「お役に立てたなら良かったです。」
「・・・・・・」
きゃいきゃい騒ぐ女子陣を見ながら、棗はちょっと無言。
可憐が一生懸命伏せていても。
隠そう隠そうとしているのは分かるけれど、棗は大凡の推測で正解に辿りついている。
まだ確証はないけれど、聞けば聞くほど、もうほぼ当たりだと分かりだしている。
勿論間違っている可能性もあるし、確認は絶対出来ないから決めつけはしないけど。
多分、忍足。
友達と言うのは忍足侑士だろう。
その話を踏まえて考えると、相手は恐らくGWに既に映画デートの実績を作れている網代。
(彼奴恋愛映画とか好きなんかw言われてみれば似合うなー。)
意外にロマンチストですね、なんて考える脳裏に浮かぶのは、自分に対して向けて来るあの面白くなさそうな顔。
ねえ、桐生ちゃん。
桐生ちゃんはそれで良いわけ?なんて聞きたい気持ちが0ではないけれど。
でも、流石に酷(むご)い。
そこ突き詰めてどうするの、誰か得するのと言ったら、得する者が今居ない。
百歩譲って、可憐が自分も忍足を好きなんだけどと前置きしているならまだしもだ。
そうでないなら、放っておいた方が良い。
本当に他意は無いのかもしれないし。
或いは、敗色濃厚なのを分かっていて吹っ切ろうと頑張っている最中なのかもしれないし。
可憐との付き合いは短いビードロズ達に、可憐の真意を見抜くような事は出来ないけれど、いずれにしてもこの場は黙るのが得策。
可憐にとってもだ。
「棗君?どうかしたっ?」
「いや、なんでもwお気になさらずw」
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