Query 1

「ええええーーー!?ちょっと待ってよ、抜けられないって・・・えええ、そんなあ〜〜!」

選手も観客も、各々が「さて、じゃあ居るべき場所にそろそろ向かいますかね・・・」と移動を始めた頃。
テニスコートの近くで、携帯で通話しながら、慌てふためく若い女性が1人。

『仕方がないでしょう、悪いとは思ってますけど、俺も頼まれた側ですから・・・』

「そうだけどー!・・・はあ〜、もう分かったわよ・・・その代わり!どうなっても知らないんだからね!?本当なんだからね!?」

パニック状態で、半ば開き直りながら話を進める女性。
知らないぞ、自分に任せたお前が悪いんだからな、と何度も言い含めて、通話の電源を切った。

「ふう・・・」

ピ、という切断音に、又疲労感を覚える。

「どーしよ〜・・・私、井上君無しでの単独調査なんて、した事無いのに〜!」

女性ーーー月刊プロテニス編集勤務の小鳥遊ひたきは、同じく編集で、後輩である井上守に恨み節を零した。

今日は神奈川県の県大会、1・2回戦の調査をするという事だったのだが、井上にどうしても外せない仕事が入ってしまった。
経緯を聞けば、本当にどうしようもない、井上がその仕事をやるしかない事はとても納得がいく。
納得がいくだけに、自信が無いから頑張ってこっちへ来てくれと小鳥遊も言いきれず、止む無く今日は1人になってしまった。

確かに井上の方が後輩なのだが、井上の方がテニスには詳しい。
だから小鳥遊は井上を大いに当てにして、今日も取材に来たのだが。

「ま、悩んでても仕方がない。私がやるしかないんだったら、やってやろーじゃないのよ!よーし、井上君を吃驚させるような、しっかりした調査をするんだから!」

ピシャ!と頬を両手で軽く叩いて、気合の入れ直し。
さあ。
一回戦が間もなく始まる。
自分も取材に行かないと。

だけど。

(先ず、何処の学校を取材するか、ってとこからよねー。何時もは井上君が決めてくれて、私が理由を聞くって感じだったからなあ。何試合か同時進行だから、全部見るって言うのは出来ないし・・・)

注目校を見れば、と思いつつも、先ずその注目校が分からない。
小鳥遊は今日、この時点で学生テニスの部署に回されようやっと2年になった所であった。

(何処を見る?昨年の優勝校とか?あ、いや、でも井上君が「成績の良い学校」と「注目校」を同一視するなって言ってたし・・・あ〜もう〜!こうなるって分かってれば、もう少し自分で下調べしたのに〜!)

どうする。
どうしよう。

「あり?こっち行くの?」
「少し遠くはないですか・・・?」
「確かにちょっと遠いんだけど、今日降りそうだからって。こっちのが良いってさ。」
「成程なw確かに庇あるねw」

「・・・!」

(そーだ!良い事思いついちゃった!)

こういう時こそ、あまり深く考えない。
考えたって、井上レベルの知識が今此処で生まれるわけは無いのだし、もうそれならいっそ諦めよう。

運を天に任せるのだ。

「ねえ、君達!」

「「「「?」」」」

「初めまして!私、月刊プロテニスの小鳥遊ひたき♪ピチピチの30才、彼氏募集中!よろしくね!」
「はあ、月刊プロテニス。」
「って、あの雑誌の、ですよね?」
「すげえwまだ県大会なのに取材は入るんだw」
「おー!って事は、記者さん!?記者さん!?パパラッチ!?」
「パ、パパラッチって言い方は止めてくれる!?私はジャーナリストなの!誇りを持ってやってるし、取材の相手とかに失礼な事や軽率な飛ばし記事書いたりはしません!(多分・・・)じゃなくて!君達にお願いがあるのよ!」
「何よ、お願いって。」

小鳥遊はカメラを取り出してウインクした。

「君達の応援する学校の事!取材させてくれる?」

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