Query 1
そうして紹介された学校が何処であったとしても、それも又運命。
どんな弱小校だって、全力で取材してやろうじゃないか、なんて思っていた小鳥遊だが。

「まさか、立海とはね・・・」

昨年の県大会優勝校。

(まあ、手間が省けてラッキーだわ!どうせ立海レベルになると、今日じゃなくてもいずれは取材しないといけないし、同じよ!)

カメラの準備をしつつ、試合の開始を小鳥遊はビードロズと共に待った。

「ねーねー!取材って何するのー?ゆっきー達の事かっこよく書いてくれるー?」
「ん?そうねー、写真を撮ったり、話を聞いて纏めたり・・・まあ、かっこよく書くかどうかは、これから試合を見て、決めさせて貰うわよ!」

なんて、ちょっと世間を知ってる大人ぶって、厳しいっぽい事を言ってみる小鳥遊だが。

「頼むから大袈裟な誇張は止めてね。」
「ちょ、ちょっと控えめでお願いします・・・」
「えー!?どーんって書いてもらおーよー!どーん!ってー!」
「仕事なんだから、相応の大きさできっちり書いて貰えるってwそうでしょ?」
「え?あ、ええ・・・それはそうだけど。」

(誇張は止めてね、と言われるとはね・・・予想外だわ。)

小鳥遊はこうやって取材で中学生とやり取りする事も多々あるが、多くは皆目立たせてと頼んでくる。
もっと大きく!もっと強そうに!と言って。
まあ中学生だからそんなものよね、でもね、可哀そうだけど私は大人だし仕事だから、事実を元にして書かないといけないのよ・・・なんて、いつも内心で断っていたりするのだが。

それとも、大袈裟に書かれる可能性を考慮しないといけないような強さなのだろうか?

(・・・いえ、それはまあ良いわね。百聞は一見に如かず。推測するより、もうすぐ始まる試合を見れば、分かる事よ!)

ファインダーを覗いて、視界は良好。
曇り一つ無いレンズの向こうに、最後の打合せをする立海メンバーが見える。






「?あの、観客席に座っているのは誰だ?彼奴らと何事か話しているようだが。」
「取材の人じゃないかな。あのカメラは、家庭用にしてはちょっと本格的過ぎるしね。」
「県大会だからな。月刊プロテニス辺りの社員が来ている確率は99.140%だ。」
「そうか。」

ビードロズと親しげにしているから気になっただけで、別に誰も取材が来る事に対しては何とも思っていない。
緊張したりわくわくしたりしないし。
別に邪魔なわけでも無いし、ああ、そうなの。と思うだけ。今日の夕ご飯程度にはどうでも良い。

こっちは。

「あっちは違うらしいがな。」
「うん、凄い盛り上がりだね。」

コートを挟んで向こう側、今日の一回戦の対戦相手の野田南中学校の選手達は沸いていた。とても沸いていた。



「良いかお前ら!聞く所によるとなんと!今日は月刊プロテニスの美人記者が取材に来てるらしい!」
「「「「「おお!」」」」」
「俺達は来る日も来る日も真面目に練習してきた・・・そして、今日の相手はあの立海!相手にとって不足はない!」
「「「「「おお!」」」」」
「仮にだ!仮にもし負けたとしても、それは恥ではない!だが・・・もし臆病風に吹かれて途中で諦め、美人記者に「情けない」等と思われて見ろ!それこそが本当の恥だ!俺達は男として、この試合、必ず最後まで戦い抜かなくてはならないのだ!」
「「「「「おおおおお!」」」」」


ある意味では、非常に中学生らしいのかもしれない。
「美人」の「記者」にかっこいい所を見せたい、あわよくば雑誌に載りたいという、思春期感満載の自己顕示欲。
此処まで清々しいと、逆に気持ちの良い奴らと言えよう。

「異性の存在で気合を入れ直すなどと・・・たるんどる!」
「ふふっ。まあ、良いじゃないか、弦一郎。理由はどうあれ、闘志が十分なのは、こっちとしても望む所だよ。」
「ああ。経緯はそれぞれだが、地区予選は多かれ少なかれ、試合を捨てたような成り行きが多かったからな。」
「確かに、そういう意味では喜んでも良いのかも知らんが・・・」

喜べば良いのか嘆けば良いのか分からないでいる内に、試合開始の合図が鳴る。


『それではこれより、神奈川県大会1回戦、立海大附属中学対野田南中学!D2の試合を執り行います!』

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