Someday


七夕祭り?
何それ!知らない!やりたい!やろう!

この思考は留学生とか帰国子女あるあるではないかと思う。
ただ、普通その多くが何処でやってるの?皆で行こうよ!になるのに対して、この王様はどうやってやるの?全校生徒でやろうよ!になっちゃうのだ。

かくして、氷帝学園は7月頭。
俄かに七夕モードに移行したのだった。

「お〜。すご〜い。」
「壮観ってヤツ?」
「流石跡部君よね。」
「あ、あはは・・・」

3階の教室から下を見下ろすと、ホールの所に笹がガンガン設置されているのが遠目に見える。どうやらキングは本気だ。いや、彼はいつも本気だけど。

「七夕って、コンナ気合入れる行事でもないと思うけどなー。」
「やっぱり、跡部君には珍しいんだよねっ!ずっとイギリスに居たんだしっ。」
「イギリスに七夕みたいな行事ってないのかな〜?」
「そもそも、キリスト圏ってこういうお願い事とかしなさそうじゃない?」
「えっ?そうかな、そんな事ないと思うよっ?」
「ジンクスの発祥は欧米からじゃない〜?」
「ホラ!アレとかあるじゃん、外国にもさ!橋に鍵つけてー。」
「あ、知ってるっ!カップルが、ずっと一緒に居られますようにってお願いする奴だよねっ!」

今や有名になり過ぎて、多分古今東西何処の国でもそういうジンクスの為のスポットはあるだろう。日本にさえあるのだ、そういうカップルの地。ご丁寧にその場で錠を売ってくれるというおまけつき。

「ね〜。あの笹、やっぱり設置終わったら次は短冊どうぞ〜、ってなるんだよね〜?」
「そりゃそうでしょ?」
「ふ〜ん・・・」
「どうしたのっ?何か気になるっ?」
「ううん〜?ただ、あの笹に何枚そういうお願いが吊るされるのかな〜って。きっと沢山だよね〜。」
「ソリャまあねー。」

大体この手のお願い事系は、健康・勉強・そして恋愛のいずれかを選ぶ人は必ず一定数居る。まして思春期、まして中学生。
健康と入れ替わりに部活関係の事が入って、部活・勉強・恋愛がお願いごとの3本柱になるのは大体想像がつく。

「大体ミンナ、誰それ君や誰それちゃんと付き合えますようにー、とかだろ?」
「えっ!?名前出しちゃう感じなのっ!?」
「いや、もうちょっとぼかすっしょ。あの子、とか先輩、とかって言い方にならない?」
「え〜、パンチが足りませんぜパンチが〜。」
「パンチとか要らないと思うなあ・・・」
「朝香は書くとしたら名前出しで書くの?」
「ん〜、そうだな〜。私なら、誰それ君が私に振り向くか私を振るかしてくれますようにって書くかな〜。」
「な、何かアクションして欲しいんだねっ?」
「朝香らしいわー。」

榎本はこういう発想がある。
お前は男だろ、お前が動けや。グズグズしてっとその横面張り飛ばすぞ、てなもの。

「瑠璃は告白出来ますように〜、って書く感じでしょ〜?」
「あっ、書きそうっ!瑠璃っぽいっ!」
「あるイミ朝香と反対だよねー。良いんだよ〜?男の方を動かしてもさ。」
「何それ・・・別にどっちが動いたって良いじゃん。」

伊丹はどちらかというと、男女関係なく動きたい人間が動けばいいじゃないと思っている派。行動力のある人は男女関係なく好ましいと思う。

「真美はっ?」
「アタシ?いやアタシは、」
「真美はあれでしょ。誰それ君といつかお付き合い出来ますように、みたいな。」
「分かる〜。真美って乙女だもんね〜。」
「ハアア!?ちげーし!何言ってんのお前ら!」
「あははっ!良いじゃん真美、可愛いよっ!」
「ちょっと可憐まで!」

内川はこう見えて結構恋愛には奥手な方である。
好きな人とか言ったって、もう何をどうしたら良いのか分かんないし、そもそも付き合って何すればいいのかも分かんないし。もう、告白したりされたりとか、思考の埒外だ。

「テイウカ、そういう可憐はどうなんだよ!」
「えっ、私っ!?」
「可憐は振り向いてくれますように、的な感じじゃない?」
「あ、分かる〜。振り向かせる!って感じじゃないよね〜。」
「ガツガツ感ないもんなー、可憐って。」
「ガ、ガツガツとかそんなの無理だよっ!」

具体的にガツガツってどんな感じか良くわからないけど、多分ガンガンアプローチ的な事だろう。無理。自分には無理。

「ま、ガツガツいくのってしんどいもんね。」
「オ?瑠璃ってば、まるで経験者のような発言!」
「違うわよ馬鹿。」
「まあでも、想像だけでもしんどそ〜、っていうのは分かるよね〜。」
「うん・・・きっと怖いよねっ。」

極端な話、ガツガツ行くだけなら出来る人は多いだろう。
ただ、その後相手に良い反応を貰えるかどうかは別の話。

やっぱり、好きだから。
だからこそ報われれば嬉しいし、逆に失敗すると凄く落ち込むし。
そう考えると、忍足の行動の遅さも分かる気がする。きっと大丈夫だと思うからもっとガンガン行けば良いのになんて思った事もあるけど、どんなに脈があるように外から見えていても本人にはそんなの関係ないから。

(千百合ちゃんの彼氏さんの・・・ええと、幸村君だったかなっ?幸村君はきっと偉いんだよね。)

お付き合いに至った経緯を詳しく知ってるわけでは無いけれど、ビードロズの面々と話していれば、幸村がそういう事に関して人よりフットワークの軽い性格なのは分かる。
皆にあれだけの度胸があれば、きっとこの世の恋愛沙汰はもっと話が早いに違いない。

「まあでも、世の中ガツガツタイプの人もそうじゃない人も両方居るもんだから〜。」
「なんだかんだ、バランス取れてんのよねそれで。」
「そうだよなー。ココゾ!って時に頑張れたら、問題ないって事で。」
「そういう真美は頑張れなさそ〜。」
「あははっ!そんなことないよ、真美は出来るよっ!ね、真美っ?」
「そうだそうだ!アタシだってやる時はやるんだからな!」
「へー。期末楽しみにしとこ。」
「え”!」

(ここぞ、って時にかあ・・・)

でも多分。
そのここぞって、きっと特大量の勇気を要求される場面なんだろう。

自分はうっかりしてるから、そもそもそんな場面になっても見逃しそう・・・なんて思うとますます自分のドジが情けなくなって、可憐ははあと溜息を吐くのだった。


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