Camp school:Light of fire
「わあ・・・綺麗ですね!」
「おー、景気良く燃えるもんだわねー。」
「・・・何か桃美の感想親父くさい。」
「何を!?」
紫希は江野と堀江と3人で適当な所に腰を下ろして、カレーを食べつつキャンプファイヤーを見ていた。
「うん・・・っん〜〜〜〜!美味い!カレーが美味い!これはお代わり確定だわ!」
「美味しいよね!紫希ちゃんが居てくれて良かった〜。」
「いえそんな事は、」
「そんな事あるわよー!別に何も変わったもの入れてないのに他所より美味しいんだから!」
「って、桃美なんで他所のカレーの味知ってるの?」
「やだ、そりゃあちょっとづつ味見させて貰ったに決まってるじゃない?」
「・・・・」
「何よその意地汚い人を見る目はー!」
「しゅ、取材の一環ですよ!ほら、桃美ちゃんは報道部ですから、」
「そーよ!美嘉は私の事ちょっと馬鹿にし過ぎじゃない!?」
「ねえ紫希、私もお代わり貰っても良いかな?」
「ちょっと、お代わりは今の発言を取り消してからよー!」
「ど、どうぞ!というか私のカレーではないですから、」
「なあ、俺も貰って良い?」
「はいどうぞ、・・・あれ?」
「あ、丸井君だ。」
ごく自然に混じってくる丸井に3人は振り向く。まだ食べ終えてないカレーの皿を持っているのに気が早いなあ、と思う紫希達はもう既に2杯目であることを知らない。
「ちょっと!私は良いって言ってないわよ!」
「えっ?」
「良いじゃん、桃美。」
「良くない!紀伊梨とか丸井君に譲って御覧なさいよ、私達のお代わりが無くなっちゃうじゃない!」
「そ、そんな事は・・・ねえ、そうですよね美嘉ちゃん?」
「・・・そうかも。」
「えええ!?」
「しねえよ!・・・多分。」
「ほら、今多分って付けたわ!紀伊梨程じゃないけど、報道部の桃美様のお耳をお舐めじゃないわよ!」
「ううん・・・ごめんね丸井君、ちょっと食べ物の事に関しては擁護し辛いかなー。」
「ええ・・・」
普通に分ける気で居た紫希だったが、まさか3人この場に居る内2人から反対を食らうと思っていなかった。こうなると流石に良いよあげるよと言ってやれない。
「ご、ごめんなさい丸井君・・・」
「ちぇ。・・・ま、しょうがねえか。」
「あ、ま、待って・・・」
立ち去ろうとする丸井のシャツを紫希は掴まえた。
「ん?」
「あの・・・良かったら、少しどうぞ。私のお皿からなら大丈夫ですから。」
「マジ?でもお前の分は?」
「お代わりがありますから、足りなくはないと思います。元々私、そんなに沢山は食べられないので。」
「そう?じゃ、遠慮なく♪」
「はい、どうぞ。」
「あーん。」
「・・・え?」
「あーん。」
「え、」
遠慮なく頂くどころか、遠慮なく隣に腰かけて口を開ける丸井。
いや、紫希も何を要求されているのかは分かるけど。
(止めた方が良いの?)
(なーに言ってんのよ、こういうのは見物に回るに限んのよ!)
(でも・・・あ。)
(ど、どうしましょう・・・)
どうしようと動揺しつつ、口を開けて目の前で待たれるとつい「待たせてる」「早くしないと」という心理が働いてしまう。
「ちょ、ちょっと待って下さいね・・・」
肉入れて、玉ねぎ入れてニンジン入れて・・・なるべく美味しい所を分けてやろうという心理が透けて見えるスプーンの動き。気が付くのは丸井自身が食べるの大好きであるが故だろうか。
「よし、じゃあ・・・・」
「・・・・?」
「は、はい・・・・!」
(どうしよう、どうしよう、恥ずかしい・・・!)
これは紀伊梨には何度かした事があるけど、こんな風に同級生の男子に向かってするのはそういえば初めてだ。幸村も棗もこんな事自分に要求してきたりしないし。
ああでもそういえばされる側に回ったことは一度あったっけ。
別に他意は無いけど。
丸井も気にしてなさそうだけど。
嫌なわけじゃない、けど。
「・・・は、い・・・」
「あー、ぐっ!?いってえっ!?」
「丸井く・・・千百合ちゃん!」
スプーンは結局丸井の口まで辿り着かなかった。
その前に千百合の右手が丸井の後頭部を直撃したからである。
後ろの幸村は俯いて肩を揺らしている。笑ったら悪いと思いながら笑ってる時の挙動である。
「お前何すんだよ!カレー零れるだろい!」
「私基本的にあんたの事嫌いじゃないけど、この場面でカレーの心配真っ先にするような所は本当嫌い。」
「は!?何が!?なんで!?」
「やあ春日。ごめんね、邪魔をして。」
「あ、いえ、邪魔とかそういうわけでは・・・じゃなくて、千百合ちゃんはどうしたんですか?何が今お気に障ったんですか?」
「ううん・・・ちょっとそれは説明が難しいかな。」
「紫希ぴょーん!千百合っちー!ねーねー、夜のお出かけってこの後だった・・・あり?何がどったの?」
「む。どうした、揉め事か。」
「お前らまさかカレーで揉めてんじゃないだろうなw」
紀伊梨の言う通り、精霊探しはこの後直ぐに行動開始になる。
軽く打ち合わせがてら固まっといたほうが良いかなと各々何となく思った末、ぞろぞろと集まりだすビードロズとテニス部の中、紫希はスプーンをどうしたら良いか分からずに宙に浮かせたままだ。
「ねーねー!それ紫希ぴょんとこのカレーでしょー?紀伊梨ちゃんも食べたいー!一口ちょーだい、一口!その、今スプーンに乗ってる分で良いから!」
「え?」
「良いんじゃないかな?何か、丸井君食べられなさそうな感じだし。」
「鍋に手を付けないなら、私はオッケーだわよ〜。」
「そうですか・・・?じゃあ紀伊梨ちゃん、はい。」
「わーい、やったー!」
紀伊梨には出来るのだ、これが。一切の気負いなく。
まあそもそも同性だし、こうして一口くれと言ってくるのも昔からずっとだし、もう慣れきってしまってるという側面もあるけど。
「あ、待て!」
「え、」
手首が捕まる感覚がした。
と思ったら、目の前でスプーンは斜め後方に居た丸井の口に入った。
「あーーーーー!ちょっとー!紀伊梨ちゃんのカレーだよそれはー!」
「五十嵐さんのものではありませんし、丸井君のものでもないのでは?」
「無駄じゃ、もう聞いとらん。」
「ど・・・どう、です?」
「美味い!なあ、もう一口。もう一口で良いから駄目?あーんーーー」
「お前いい加減にしろよ!」
「だからなんで黒崎が怒るんだよ?って、そうか!お前ら同じ班だから、お前の分も減ってるって言えなくもねえのか。悪い。」
「だからそっちじゃな・・・ああああもう嫌。もう此奴嫌。精市、なんとかしてよ。桑原でも良いわよ。」
「してやりたいのは山々なんだけどな・・・というか、出来るならもうとっくにしてるというか・・・」
「別にしなくても良いんじゃないかな?」
「えー。」
わあわあ騒ぐ一同に、近づいてくる人影。
柳が誰より最初にそれに気づき、振り返った。
「新海先生。」
「あ、柳!それに皆・・・皆、居るよな?この後の夜間学習のメンバー。」
「はい、全員揃っています。」
「そっか!じゃあ言っておいてくれ。
後30分後だ。30分経ったら、一度集まってスケジュール確認。その後、行動開始な!」
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