100話記念企画 No.011
女子中学生という生き物は、仲のいい友達と、それからお気に入りの雑誌が1冊あれば延々お喋りしていられる物である。

可憐もそうだった。
この日、伊丹らお決まりの友人と共に月刊誌を見て可憐はお喋りしていた。いつもの風景だった。

ただ、この日偶々雑誌が特集を組んでいたのが星占いだったのが切っ掛けといえば切っ掛けだった。

「星野宮ステラの開運星占いねえ。」
「当たんのカナー!。」
「星占いかあ・・・」
「占いとしてはメジャーだよね〜。」
「メジャーすぎて逆にって感じ?」
「あはは・・・まあ、星占いなんて探せば色んなところにあるもんねっ。」

それこそ、信憑性を度外視するなら朝の目覚ましテレビでも出てくるくらいである。

「ダイタイ、占いの根拠が星座っていうのがなー!」
「あ〜、でも血液型よりは当てになるかも〜?」
「血液型って4つしかないもんねっ。」
「確かに、12に分かれてる時点で多少は細かいか。」
「トキに朝香。」
「ん〜?」
「朝香って何座?ってゆーか何月生まれ?」
「私〜?私、3月12日生まれの魚座〜。」
「エッ、3月生まれっ?」
「え、そこ?」

今星座の話してたのに、魚座じゃなくて3月の方に食いつく内川。

「ダッテ、3月生まれだよ!?」
「それが何だってのよ・・・・」
「3月生まれ、なんて乙女チックな響きが朝香に当てはまるなんて・・・あだ!」
「ど〜ゆ〜意味ですか〜?」
「あだだだだだ!ヤメテ!毛根が死滅する!」
「あはは・・・・」
「っていうか、3月生まれって乙女チック?」
「あ、でもそれは分かるよっ!3月ってひな祭りとかあって女の子っぽいし、何かピンク色でふんわりしたイメージがあるよねっ!」
「ああまあ、そっか。桃の節句か。」

内川の感覚は可憐にも分かるものだった。
春の始まりでもあるし、少なくとも男の子っぽい月でないことは確かと思う。

「あ、でもでも〜。実は、ひな人形とかって3月は殆ど見ないよね〜。」
「あたたたたた・・・え?ナンデ?」
「あーほら。3日には仕舞うからじゃん?」
「1週間前から飾るとすると〜、意外と2月の方が雛人形は良く見るよね〜。」
「確かに、月のアタマの方だもんなー!」
「あ、あはは・・・そうだね、うん・・・」

実は、桐生家では雛人形はなかなか長く家で日の目を見る。
理由は単純。母、遥が生来のドジを発揮し、片づけそびれるのが毎度お決まりのパターンだからだ。

一応、「3/3を過ぎて雛人形を出してるとお嫁に行きそびれる」というかのジンクスを遥も気にしてはいるのだ。子供は娘2人でどちらも女の子だし。
ただ、片づけるとなると割と纏まった時間が必要になるため後にしよう・・・と思って結局忘れるのがいつもの流れである。

「ひな祭りかー、ひな祭りのウタって昔は意味わかんなかったなー。」
「あっ、わかるっ!知らない単語いっぱい出てくるよねっ!」
「明かりをつけましょぼんぼりに、のぼんぼりの時点で初めて聞くよね。」
「五人囃子とか、官女とか〜。屏風とか右大臣とか〜。」
「何かさ、小学校のときカエウタ流行らなかった?明かりをつけましょ爆弾にーって!」
「あっ、あった気がするっ!」
「ドカンと一発はげ頭だっけ〜?」
「正に小学生レベルって感じよね。」
「・・・・」
「可憐?どしたの?」
「あっ、ううんっ。何だかひな祭りって、良い思い出が・・・っていうか、ちゃんとした思い出があんまりないなあってっ。いやあるんだけどこう、皆との思い出がっ。」

家でのひな祭りエピソードは幾つか思い当たるが、学校なんかでのひな祭りエピソードというと他の節句に比べて全然思い当たらない。
それこそ、替え歌のエピソードが印象深いエピソード上位に食い込んでくる程度には。

「まあ3月っていうと学校終わりかけの時期だしね。」
「年度末だしそれどころじゃねーやって人いっぱい居るよね〜。」
「それにあれ、女子のイベントジャン?男子は興味ないだろうし、余計じゃね?」
「そっか・・・」

キーン・・・コーン・・・

「あ、座らないと。」
「何か、ひな祭りの話になっちゃったねっ。」
「真美が人の誕生日にいちゃもん付けるから〜。」
「付けてナイよ!・・・あれ?いや、付けた?」


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