100話記念企画 No.017
ある日の音楽室。

此処に居ると大抵作詞の紫希以外は皆楽器を弾いているのだが、今日は紀伊梨も千百合も皆シャーペンを走らせていた。

「むー・・・」
「・・・あれ。待って、え。」
「どうかしましたか?」
「三角形の面積がすげー変。」
「ええと・・・あ。千百合ちゃん、ここが。計算間違いです。ですから切片は0.8じゃなくて・・・」
「あ、4か。だからこれで・・・あ、オッケー。ありがと。」
「いえ。」
「・・・ずーるーいー!」
「何が。」
「2人だけ教えあいっこしちゃってさー!」
「あんたクラス別じゃん。」
「ずーるーいー!ずーるーいー!もー!」
「まあまあ・・・あの、紀伊梨ちゃんも何か分からなければ相談に乗りますから、」
「でも一緒の宿題やりたいよー!」

3人は今宿題中であった。

今日は合わせる予定だったのだが棗が先生に捕まり、ドラム無しはちょっとということで宿題でも片付けながら待ってようかという運びになったのだ。

「宿題なんてお揃いにしたところで何が嬉しいのよ。」
「友達感があります!」
「これしきの事で。」
「ま、まあまあ・・・自分だけ違うっていうのは、ちょっと寂しいものですよ。ね?」
「そー!そーなの!しかも難しーしさー!もー、宿題なんて嫌いだよー!ちゅーがく上がってからもっと嫌になったよー!」
「そう?」
「「そう?」」
「私、今の宿題の方が好きだけど。」
「えー!」

信じられなーい!な顔になる紀伊梨だが、紫希はああ、と納得声で呟いた。

「千百合ちゃん、時間のかかる宿題お嫌いですもんね・・・」
「そ。面倒ったらありゃあしないわ。」

千百合は宿題が大嫌いであった。

今は一時ほどではないが、昔はもっと嫌いだった。
そもそも家に持ち帰って勉強しないといけないとか、もう面倒の極み。
漢字ドリルや計算ドリルなんかならまだしも、「縄跳びで前飛び10回」とか「国語の教科書○ページから×ページまで音読3回」とかそういうのになるとやりもしないで「やりました」の記録だけつけたいと何度思ったかしれない。

悲しいかな、千百合の性格を熟知している両親は、わが子がサボるのを見越してそういう課題は自分達の前でやれと頑として譲らなかった。
おかげで千百合はとても真面目に日々宿題するしかなかった。

「なんでー?あっちのが楽しいじゃーん!紀伊梨ちゃんあれ好きだったなー、「あのねノート」!」
「あ、懐かしいです。」
「あー。大嫌いだった。」
「えー?楽しいこと書いたら良いんだよ?」
「そんなに書くことないじゃん。」
「でも千百合ちゃん、お上手でしたよね?先生によく褒められてませんでしたか?」
「いや、あれは・・・」


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