100話記念企画 No.053
ある日。
忍足がリビングで寛いでいると、姉が話しかけてきた。

手に、そこそこの大きさの箱を持っている。
結構お洒落なラッピング。

「なあ侑ちゃん。」
「ん?」
「侑ちゃん、前に何や言うてなかったっけ?侑ちゃんの学校てセレブな感じで、皆結構学校で紅茶とか飲むみたいな。」
「ああ、まあ。流石に日常的に飲んでんのんは一部やけど。」

一部であってもそれが日常になってる時点でおかしいのだが、この辺大分感覚が麻痺してきている。忍足自身も最近諦めつつあるが。

「やんな?実はこれ懸賞で当ててんけど、家で多分誰も使わへんさかい、学校で誰かにあげてくれへん?」
「それ以前に、何なんやそれ。」

忍足は蓋を開けた。

中には、小さい小瓶が幾つも入っていた。
正に色とりどりといった感じの、何かの結晶が、とろりとした質感の液の中で瓶にぎっちり詰まっていた。

(・・・アロマ系の何かやろか。いやでも、紅茶に関係あらへんな。ジャムにしてはなんやちゃう感じもするし。)

「これなあ、氷砂糖やねん。」
「氷・・・これが?」
「そう。味もちゃんとついてて、全部違うねん。」
「へえ・・・」
「でもほら。お洒落やけど、うちの家甘党がおらへんさかい。みーんな紅茶はストレートで、コーヒーはブラックやろ?」
「まあ、持ってても減らへんやろな。」

そう、忍足家に砂糖の類の出番はあまりない。
精々料理の時くらい。偶に来る来客のためにこんな大層なものをずっと置いておくのも、邪魔だし痛みそうだし。

「わかった、部室にでも置いとくわ。誰かしら使うやろし。」
「ありがとー!困っててん、流石に捨てるのもなあ。友達にあげるにしても、私の周りもそこまで甘いの好きな子居らへんし。」

こうして、忍足の手にはフレーバー付きの氷砂糖のセットが押し付けられ・・・いや、渡されたのだった。


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