100話記念企画 No.033
実際の観測日和は、その話をした8日後になった。
次の日から空模様が怪しくなりだし、雨が降ったり、降らないにしても曇天になって見られない日々が続いたのだ。
その間に星は正式発表されニュースになり、ニュースキャスターのお姉さんが「残念ながら、お天気の関係で今すぐは見られなさそうですが・・・」と言い続ける日々を経て、今日。
今日、やっと見られる日がやってきた。
「じゃあ茉奈花ちゃん来ないのっ?」
「せやねん。行く気はあったらしいねんけどな。」
見る場所は河原。そこに向かう道中で、網代が今朝リタイアしたことを可憐は聞かされた。
なんでも、小学校時代の友達から偶々電話がかかってきて、ちょっとだけ・・・のつもりが長電話になったらしい。ふと気づくともう1時で、明日も朝練あるのに星のために4時起きは無理だと自己判断したのだそうだった。
「そうだったんだっ。」
「まあ星は今日とか明日では逃げへんけどな。その気になったらまた見られ・・・ああ、この辺とかどないやろ。」
「うん、いい感じっ!ここにしようっ!」
可憐と忍足は持参したレジャーシートの上で腰を下した。
方角の確認をする忍足を横目で見ながら空を見上げると、家を出た時よりも更に明るくなり始めている。
「本当にこの時期朝早いんだねっ。」
「夏やからなあ。そら日中も暑うなるわ。」
「最近本当に辛いよねっ!エアコンも効きづらいしっ!」
「せやな。でもまあ、今の時間帯がまだ過ごしやすいのんは流石に7月やわ。」
8月に突っ込んでしまったら、もう朝となく夜となく気温が一定のラインを下回らない季節が始まる。熱帯夜が続くようになるのだ。
今はまだ、人によっては若干肌寒さを感じるかも?くらいの感覚があるが。
(あ、でもっ。ちょっとあったかくなってきたかもっ?)
そんな事を考えてる間にも、みるみる内に空は明るくなっていく。
白から薄紫に。そしてオレンジに。
「朝焼けって、不思議な色してるよねっ!」
「夕焼けと似てるんやけど、やっぱりちゃうな。こうしてちゃんと見てたらそう思うわ。紫が目立つんやろか。」
「あっ!そうかもっ!夕焼けは紫ってあんまり見ないもんねっ!」
「あれでも言うな。枕草子。」
「そうそうっ!春は曙だよねっ!紫立ちたる雲のって言うよねっ。」
「夏は夜、て言われてんのになあ。」
思いきり朝やん、と言いながら忍足はおかしそうに少し声を出して、可憐の隣で笑った。
その顔が忍足にしては何だか幼くて、可憐は少しドキッとした。
「あ。」
「えっ?」
「そろそろやわ。あの辺に・・・」
忍足が上空を指さす。
夏の日は本当に昇りだすと早くて、あっという間に暁のひと時は訪れて、一瞬でそのまま終わってしまいそうな勢いの空模様。
どこ。どこ。
「・・・あっ!」
最初は気のせいかと思った。
でも違う。確かに星が見える。
さっきまでそこになかった光が、暁の空に瞬いている。
実に不思議な光景だった。
暁時だからこうしてる間にも日は上ってきて、他の星は見えにくくなってきているのにあれだけがしっかり光っている。
「わああ、綺麗っ・・・・いつまで見られるんだろうっ?」
「どやろ、もうそろそろ暁の時間帯としては過ぎるさかい。そろそろちゃうやろか。」
「そっか・・・」
「まあ、あの明るさやったらもうちょっとは出てるやろうし、そない急がへんでも。消えるまで見とこ。」
「・・・うんっ!」
完全に日が登り切るまで、後10分少々。
夏の朝焼けの中で、可憐は暫し暁のひと時を楽しんだのだった。
尚、その後登校時に色んな人間から写真は?と聞かれて2人して忘れてましたと言うことになるのを、可憐も忍足もまだ知らない。
100話記念くじびき企画
お題:No.033 暁
くじ結果:29秒→9:氷帝オール
ご参加ありがとうございました!
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