100話記念企画 No.036
「もう咲いてきてますねえ。」
「本当、今年は早いわあ。」
そこかしこからそんな声が聞こえる春の日に、5人は揃って桜の木の下に居た。
「まだかなー?まだかなー?紀伊梨ちゃんお腹減ってきたー!」
「混んでたからもうちょっとかかるでしょw」
「でもまだ人が増えてますよね・・・」
此処は立海大附属中等部の敷地。
晴れて合格した5人は、今日は制服を買いに来た。
サイズを決めて枚数を決めて、今親は中でお喋りに花を咲かせながら制服代を払うために会計待ちで並んでいるのだ。
「・・・・・・・」
千百合は凭れ掛かっている桜を見上げた。
まだ3月だけど、もうちらほら咲いている桜。
「結構綻んで来てるね。」
隣の幸村が言った。
「いつまで持つかな。」
「そうだね、でも桜は結構咲きだしてから見ごろまで間が空くことも多いから。」
「入学式の時は?」
「咲いてると思うよ?寧ろ、丁度見頃真っ只中じゃないかな。」
「授業開始日は?」
「ああ、それは厳しいかもしれない。散り始めてるか、完全に散ってしまってるか・・・」
「そっか。」
入学式の時には咲いてるのか。まあそれなら良いかな。
「・・・・・」
「・・・何?」
「ううん、何でもないよ。千百合とここの桜が見られて良かったと思って。まだ見頃じゃなくてもね。」
例え咲ききっていなくても良い。
まだ咲いてないね、いつ咲くかな、そろそろ散りそう。
そうやって何気なく言える距離に自分の好きな人が居ることが、幸村は何より嬉しかった。
そして千百合も同じ事を思っていた。
今年の春は門出だから。皆で願って、掴み取った始まりだから。
「中学生になってもよろしくね。」
「・・・うん。」
「あ、おかーさん達だ!おかーさーん!お腹空いたー!」
「やれやれ長かったなw昼だ昼だw」
「良い天気ですね。どこへ行きましょうか。」
遠目に制服を購入した母親達が手を降っている。
それに駆け寄っていく友人の背中。
一片の桜の花びらの向こうにそれが見える。
「行こうか。」
「うん。」
自分達が正式に中学生となる日。
一番よく桜が咲いている日でありますように、と千百合は小さく願った。
100話記念くじびき企画
お題:No.036 さくら
くじ結果:45秒→5:くじ結果主3×幸村
ご参加ありがとうございました!
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