5万打記念企画 No.045


「はあ・・・」

入浴を終えて、パジャマ姿で2階の自室に向かう。
やっとひと段落した。
帰ったら母親への告げ口と夕食とベッドの準備とで大層ばたばたした。

「・・・お。」

風呂上りまでにはちゃんと布団の準備しておいてあげるから、と母から言われて部屋に入ると、確かに買ったベッドが買った布団とセットになって鎮座していた。

やはり、これからも使うからとサイズアップしたからでかい。
そして全体的に黒い。

でも。

「・・・・良いじゃん。」

千百合は笑った。

ちょっと疲れたけど、幸村のおかげで普段より格段に「ちゃんと選んだ感」がある。
そして、ちゃんと選んで良かったと思う。

ベッドに腰かける。うん、いい感じだ。
やっぱり分けた二段ベッドよりしっかりしてる気がする。当たり前だけど。

(・・・結構早めだけど、何か疲れたし、折角新しいベッドだからもう寝よっかな。)

そう思って眠ろうとした千百合ははたと気づいた。
そうだ、折角棚付きを買ったんだ。

(スマホ此処に置こ。えーと、コンセントがここで、ケーブルこっちにして・・・良し。)

出来た、と思ったとほぼ同時に携帯が鳴った。
発信者は幸村。

「もしもし?」
『もしもし、こんばんは。』
「ん。」

幸村と会話しつつも、千百合はベッドに潜り込む。
ああ、新品の匂い。

『今良いかな?』
「良いよ。」
『そう、良かった。今日はお疲れさま。』
「マジでそれ。精市も本当お疲れ。」
『あははは!』
「よく笑ってられるわ、普通うんざりするでしょあんなの。」

結局あの後、ホームセンターで父の叫びを止めるのに5分はかかった。
大きな声で駆け落ちだのなんだの、恥かくなら一人でやってほしい。頼むから。

「精市、嫌にならないの。人の親ながらさ。」
『まあ、ああいう場では大声は周りに迷惑かなと思うけど。でも言ってることはわかるというか、千百合が心配なんだよ。娘可愛さっていうやつさ。』
「そんな高尚なもん?」
『少なくとも俺はそう思うよ。』
「はー。」

あれに対してそんな感想で済むなんて。流石というかなんというか。

『それはそれとして、ベッド選びも疲れただろう?俺のまで一緒に見てくれて、有難う。』
「ああいや、それは別に。疲れたのは事実だけど・・・楽しかったから。」

そう話しながら、ちょっとだけ姿勢を正した。
ああ、気持ちいい。この、素足と布団が軽く擦れる感触。

『そう言ってくれると嬉しいよ。ごめん、ちょっと待ってね・・・よし。』
「?」
『画面を見てくれるかい?今写真を送ったから。』
「写真・・・お。」

写真には、幸村の部屋が映っていた。
今日買ったベッドと、運良くホームセンターにあった柳のお眼鏡に敵うマットと、カバーをかけた羽毛布団。

『どうかな?自分の部屋ながら凄く似合うと思うんだけど。』
「うん、良いじゃん。」
『ふふっ、良かった。千百合にそう言って貰えると凄く嬉しいよ。』
「ただ、羽毛布団暑くない?」
『ああ、後でしまうよ。ただ、どうしてもすぐ部屋に合わせてみたくて。』

(精市って結構こういう所はしゃぐよね。)

普段はそこらの大人より大人びてるのに、偶にこうして年相応の顔を覗かせる。
口には出さないけどなんだか可愛くて、千百合はちょっと笑った。

『?ごめん、今何か言ったかい?よく聞こえなかったんだけど。』
「ううん、何でも。ああ・・・そっか。」
『うん?』
「いや、話戻そうと思ったんだけどさ。この場合・・・私も部屋の写メ送るべきなのかなって。」
『ああ、いや良いよ。』
「なんで?」
『わざわざして貰うのは手間だしね。それに、なんだか声が眠そうだし。』
「あ、バレた。」

そうなのだ。
実はさっきから、ちょっと眠くなってきている。
いつもだったら起きてる時間だし平気平気とか思ってたのだが、ずっと布団にくるまれて横になっているととろとろと瞼が重くなってきた。

『ふふふっ。うとうとするなら、折角だからベッドにしたらどうだい?』
「いや、もうベッド・・・」
『あれ?そうなんだ、早いね。いつもはまだ起きてるのに。』
「早めに休もうかと思って。寝るつもりはなかったんだけど、横になるだけって・・・」

いかん。
本当に眠くなってきてしまった。

「ふあ・・・」
『本当に眠そうだね。寝心地は良い?』
「うん、普通に良い・・・写真ないけど、部屋にも・・・良く合うよ。私も・・・」
『うん。』
「気に入った、し・・・」
『うん。』

幸村と一緒に選んだふかふかのベッドで横になって。
幸村の優しくて、ほんのちょっとだけおかしそうな、うん、の相槌を聞いて。
今日は楽しかったけど、疲れたこともあって。

そんな夜だから。


『おやすみ、千百合。大好きだよ。』


おやすみ。
私も。

素直な言葉を心の中で呟いて、千百合は眠りの世界へ潜っていったのだった。
5/5


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]


番外編Topへ
TOPへ