5万打記念企画 No.051
ある日紀伊梨は、廊下を一人で歩いていた。
職員室に呼び出された帰りだ。早くしないと休み時間終わっちゃう。

小走りに進んでいると、足元からカシュンッ!と音がした。

「お?」

今、何か蹴った。
そんな感覚が足先にした。

蹴ったそれはリノリウムの床を回りながら滑っていき、やがて壁にぶつかって止まった。

紀伊梨はそれに近づき、拾い上げた。

「・・・・箱?」

それはごく小さな箱だった。
しかし小さいながらも装飾は凝っていて、木で出来ていた。
中を開けると。

「・・・マッチ?あり?これってマッチ箱なの??」

紀伊梨の知っているマッチ箱は、セイツェマンが未だに常連に配っている紙のマッチ箱。もしくは、化学の実験でランプなど点ける時に使うマッチを入れる、でっかい徳用マッチ箱。

しかし目の前のこれは、そのどれとも違う。
サイズは普通のマッチ箱だが、どう見てもその辺に転がってるようなマッチ箱じゃない。(そもそもマッチやマッチ箱そのものが最近姿を消して来ているし。)

何というか。
そう。

「・・・何か宝物っぽいよねー。」

誰の物なんだか知らないが、これの所有者は落としたと気づいたら大層ショックを受けるのではないかと思った。
だってこんなに綺麗なマッチ箱なんだもん。なんでマッチ箱学校に持ってきてるのかは知らないけど。

「・・・うん!よーし!」

紀伊梨は決めた。
持ち主を探してあげよう。




「・・・それで?」
「それで?」
「事の次第・・・失礼、事情はわかりましたが、それで何故私の所へ?」
「え?やーぎゅって生徒会っしょ?」
「そうですが。」
「生徒会ってほら!何か皆の持ち物良く持ってるし、詳しいかなーって!」
「別にそういうわけではありませんよ?」

持ち物点検の事を何だと思っているのだろう。
皆の私物を徒に取り上げて、しげしげと眺めてるだけに見えているのだろうか。そんなわけないだろと思うけど、紀伊梨ならあり得る。

「えー?駄目ー?」
「駄目というよりも、柳君の方がこういった事には適任・・・ゴホン。詳しいのでは?」
「行ったんだけどー。真田っちとお喋りしてたし、辞めた方が良いかなーって。」
「ああ確かに、それは賢め・・・その方が良いでしょうね。真田君は、誰がどういう事情でこれを持っていようと、一言言わずにはおれないでしょうから。」

目に浮かぶ。ひょっとしたらその場で没収まであり得る。

それに。

(・・・あまり考えたくない事態ですが、物がマッチというのが気にかかりますね。)

箱だけならともかく、中身入り。
ということは、これの持ち主はマッチに用事がある可能性が高い。

そうなると自然じゃあ何に使うのかという話になり、ひいてはーーーまあ、隠れて喫煙とか、最悪放火を考えている可能性まで出てくる。
立海はそういう校則になっているので、例え教師や事務員とても、敷地内では絶対に喫煙してはいけないのだ。生徒会としては気になる。

「・・・わかりました。」
「ん?」
「一緒に探しましょうか。」
「え!?良いの!?」
「ええ。私的にも、これの持ち主には興味がありますしね。」

非行に走っている人か、そうでない人かーーーどっちにしろ、こんな綺麗な箱で、今時マッチを使うレトロな感性の持ち主とは誰なのか、柳生も知りたい。
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