5万打記念企画 No.057

朝。

今日は珍しくも学校の都合で朝練がなく、その時間を使って何人かの部員に連絡をしに可憐は校内を歩いていた。
ショートカットしよう。特別教室棟を横切る。

(ううん、でももうすぐ予鈴が鳴っちゃうなあっ。本鈴まではまだ時間があるけど、戻る時間を考えたらちょっと無理があるかもっ。)

「ええと後連絡しないといけないのが半田君と喜多君と・・・・・・わっ!」
「おっと。堪忍・・・可憐ちゃん。」
「あ、忍足君っ!」

前を通り過ぎようとした教室の引き戸が急に開き、中から顔を出した忍足と危うくぶつかりそうになった。

「お疲れ様っ!何してるの、こんなとこで?」
「・・・・せやなあ、どう言うたらええんやろ。・・・喧嘩?」
「えっ!?」
「いやまあ、喧嘩ていうほどのもんでもあらへんな。まあちょっと口喧嘩いうか、売り言葉に買い言葉で。」

そう言うが、可憐がちらりと忍足が覗く教室のルームプレートを見ると、思いっきり第一家庭科室と書いてある。

誰かと軽い喧嘩をしたまではわかったが、それでどうして家庭科室に用事という事になるんだろうか。
しかも。ここが家庭科室だと気が付くと、連鎖的に気が付くことが。

「・・・あれっ?何だか良い匂いがするっ?」
「ああ、せやねん。可憐ちゃん、良かったら食べへん?」
「えっ、」
「一人やったら消費しきれへんなて思うてた所やってん。」

忍足は後ろにしていた右手から、クッキーの袋を出して可憐に差し出した。
まだ温かい。出来立てなのがわかる。
袋には入ってるものの閉じられてはおらず口を開けているのは、温かい内に閉じると湿気るという配慮からだろうか。

「・・・これなあにっ?」
「クッキーやで。別にロシアンとか、変なもんは入れてへんし。」
「そういう事じゃなくてっ!」

分からないことが多すぎて、何から聞けば良いのか全くわからない。

だが、貰ってまごついている間に予鈴が鳴ってしまった。
そしてそれと同時に、チャイムが聞こえるスピーカーの方を向く忍足の声が小さく聞こえた。

ああ、出来へんもんやなあ。

(え?)

出来ない。
今確かにそう聞こえたが、出来ないって何が出来ないんだろう。
クッキーか。でもクッキー、ちゃんと焼けて此処にあるのだが。

「堪忍な、呼び止めて。」
「そ、それは良いんだけど・・・って、ああっ!私一時間目移動だっ!じゃあね忍足君っ!」

結局何も聞けないまま、可憐は忍足とその場で別れたのだった。


1/4


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]


番外編Topへ
TOPへ