5万打記念企画 No.058


「それで、どうしたんだ。」
「どうもこうも・・・」
「結局烏龍茶っぽいって何なのかわかんないんだよねー。」

最終的に2人が白羽の矢を立てたのは柳だった。
真田的には苦渋の決断である。そもそもは自分が相談されたのに、わからなくて揃って別な人を頼りにするとか。おお情けない。

しかし、流石の柳もこんなあやふやな事聞かれても困るんではないだろうか。そう思われたが。

「しかし、真田が烏龍茶の似合う男という見解は間違っていないぞ。」
「「え?」」
「そもそも、烏龍茶の烏龍というのは竜の事だ。烏のように色が黒く、竜のように曲がりくねっている。だから烏龍茶と名づけられたんだ。まあ俗説の一つではあるが、有力な話の一つだな。」
「なるほど。」
「ぞくせ・・・よくわかんにゃいけど、黒くて竜みたいなら確かに真田っちによく似合いますなあ!」
「そうか?」
「うん!何かさー、強そーでずごごごごご・・・どーん!みたいな感じするしー!」
「どんな感じだというんだ!」

柳はおかしそうに会話を聞いて笑った。
紀伊梨の言う事もわからんでもないぞ、と思いつつ。

「まあそういう観点からすると、お前に・・・というより、女性全般に対して烏龍茶というものは似合いにくい代物かもしれない。CMは前途多難だな。」
「えー!でもでも、紀伊梨ちゃんも烏龍茶のCM出たいよー!」
「そこまでして烏龍茶に拘る意味があるのか?」
「烏龍茶に拘るってゆーんじゃなくてー、似合わないCMがある!ってゆーのが駄目かなと思うのです!紀伊梨ちゃんアイドルしぼーだし!」
「ふむ。見上げた向上心だな。」
「それからそれから、単純に烏龍茶はけっこー好きだからCM出たいです!おいしーし!」
「結局食い気ではないか!たるんどるぞ!」
「まあ、お茶が好きというのは悪い事じゃない。」

苦笑しながら柳がやかんのお湯を湯呑にそそぐ。

此処は再度やってきた家庭科室。
烏龍茶なら確か学校にそもそも幾らか置いてあったはずという柳の記憶を頼りにやってきたのだが、流石というかちゃんと置いてあったので、折角なので一杯入れてみる事にしたのだ。

「熱いから気をつけろ。」
「いただきまーす!」
「・・・む。うちにあったものと味が違うな。」
「まあ、そもそも烏龍茶と一口に言うが、種類は800以上ある。」
「「800!?」」
「味の違いがあって当然だ。烏龍茶を知ろうと思うなら、先ずは800全部とは言わないにしても、好きな烏龍茶を見つけることから始めなくてはいけないかもな。」
「気の遠い話だな。」
「まあ茶というものは、長い目で付き合わなくてはいけないものだ。」
「えー、紀伊梨ちゃん苦手ー。」
「お前はまたそんなーーー」
「まあそう言うな。もしかしたらCMに出られるくらいの年になっている頃には、烏龍茶が似合う大人になっているかもしれないぞ。」
「・・・そうか?」
「遠い先のことなど誰もわからないさ。」

その口ぶりは、暗に今は少なくとも烏龍茶のCMが似合うとは言い難いという考えが見え隠れしているのだが、勿論紀伊梨は気づかない。

「まあいずれにしろ今は無理だから、素直にこうして飲んで楽しむだけにしておけ。」
「ほいふー・・・はあー!まあ楽しかったしお茶は美味しかったから良いよねー!」
「む?」
「お?」
「茶が美味いのは良いとして、楽しいことなどあったか?」

寧ろ本来の目的は達成出来ずじまいになり、不満たらたらな結果なんじゃないだろうか。
少なくとも真田はそうである。これだけドタバタしておいて、結局ーーー


「だって、真田っちとたーくさん遊べたじゃん!」


ぴた、と湯呑を持ち上げた真田の手が止まった。

「いーっつもお休み少ないからさー、ってゆーか!テニス部は休まなさ過ぎなんだよー!もーちょっと遊んでも良いと!紀伊梨ちゃんは思います!」
「だからこうして休み時間には羽を伸ばしているが。」
「はい、嘘ー!やなぎーは休み時間も良くデータ整理?とか言ってノートがりがりしてるっしょー!ゆっきーは暇があったら千百合っちのとこ行っちゃうのはしょーがないけどさー、真田っちももっと一緒に遊んでよー!ね!」

そういえば。
特にテニス部でも三強と呼ばれる自分達は、今や部活の中心グループでもあって、休み時間も結局何くれとなく部活の事で振り回されがちだ。

こんな風に友達と過ごすなんて、最近全然やってなかった気がする。

「・・・・」
「真田っちー、返事はー?おーい!」
「ええい、今飲んでいる途中なのだ!喋らせるな!」

珍しくゆっくり考えていた所なんだ。
お茶一つでこんな風に友達と過ごせるなら悪くないな、なんてさ。
5/5


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]


番外編Topへ
TOPへ