5万打記念企画 No.065
千百合の所属している1-Cには、まあ当たり前なのだが色んなクラスメイトが居る。
だから自分には凡そ縁がなさそうな話題で教室が盛り上がっているというのも、まあ偶にある事。


「よーし、もっかい・・・・せーの、」
「あっはっは、全然駄目じゃーん!」
「もっとこうさ、この辺を吹くつもりでやってみて?」
「んー・・・ふう!」
「ふうって口で言ってるし!」


自席の前の座席からそんな会話が聞こえてきて、何かとちらりと目を向けると、人の隙間からキラリと光る。

(ああ、フルートか)

そういえば、前の席のその子は吹奏楽部だった。
千百合は別段吹奏楽に興味はないけど、流石にフルートくらいは有名だから知っている。

「えー、何か見てたら簡単そうなのにー!」
「簡単だよー?音だけだったら、ちょっとやったら誰でも鳴らせるよ?」
「うっそだー、あ!ねえ黒崎さん!」
「あ?」
「ちょっと吹いてみて?」
「は?」
「だって、音だけだったら簡単とかみちるが言うんだけどさー!駄目なの私達、もう全然駄目!」
「黒崎さん、大体何でもスッスッてやっちゃうでしょ?」
「えー。」
「ちょっとだけ!ちょっと!」
「一回だけで良いから!」

渋々とフルートを受け取る千百合。ああめんどくせ。

「・・・どう持つ物なの、これ。」
「あ、あのねー。此処に親指当てて、此処から人差し指から順番に・・・」
「ちょっと、なんでえりぃが説明してんのよ?」
「うるさいなー、私はもうプロなの!持つのだけは!」
「あははは!あ、口は付けなくて良いよ。」
「そうなの?」
「うん。そもそもフルートって、リコーダーみたく口つける楽器じゃないの。唇を添えるだけ。こうして・・・そう。」
「ふうん・・・・」

ほんのちょっと吹いてみると、音は鳴らなかったがなんとなく分かった気がした。
よし。

「・・・・・」

・・・・〜〜〜〜♪

「「「鳴ったあ!」」」

きゃあ、凄い、流石、とか言われながらも、千百合は我ながらちょっとびっくりしていた。
本当に鳴った。
鳴るもんなんだ。どうせ出来ないと思っていたのに。

(・・・まあ、ベースでも音出すだけだったら誰でも出来るしな。)

「返す。」
「あ、うん!」
「えー、すごーい!私あんなにやって、ぜーんぜん出来なかったのにー!」
「やっぱり楽器って才能が要るんだよー。」
「いや、そんなの関係ないからね?」

それな、と同意しつつ千百合はまた着席すると、少し離れた所から紫希が近づいてくる。
何かちらちらと、しきりに廊下の方を気にしながら。

「どしたの。」
「千百合ちゃん・・・いえ、実はさっき、幸村君が教室にいらしてたんですけど。」
「え。嘘。いつ。」
「本当に、ついさっきまで居たんです。通りがかったついでに、今週の予定の事を千百合ちゃんに話すとおっしゃってて、待っていたんですけど・・・」
「・・・けど?」
「何か、急にのっぴきならない用事が出来てしまったとかで・・・予定はLINEで送っておくので、そう千百合ちゃんに言っておいてくれ、って言われたんですけれど・・・」
「何の用事?」
「それはちょっと・・・怒ったりしてる風ではなかったですけれど。」
「ふうん・・・」

幸村にしては極めて珍しい振舞いである。
その分、理由も多分テニスとか花とか、何かその辺の、幸村にとって重要度の高い何かだろうなと想像はつくけど。

「何か大事な用事すぽーんと抜けてて、待ってる間にふっと思い出したとかかな。」
「幸村君って、そんなミスをなさいますか・・・?」
「2年に1回くらい。」

それってする、の内に入るんだろうか。紫希にはわからない。

1/5


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]


番外編Topへ
TOPへ