5万打記念企画 No.095
紫希は図書室の常連である。

小学校の頃もそうだったし、図書室というか、図書館の常連でもある。
頻度が過ぎていちいち覚えていられない事の例えとして、お前は今まで食べたパンの枚数を覚えているか?という言い回しがあるが、紫希の場合はお前は今まで読んだ本の冊数を覚えているか?が当てはまる。

それだけ読んでいると、あ、この本前も読んだことあるな、が頻発する。
でも紫希は気にしない。
何度読んでも面白い本は面白いし、大人に近づくにつれて前とは違った読み方が出来たりするし。

それに。
そう数は多くないが、まるで旧友に会ったかのような気持ちになれる本も偶にある。

「ええと、これと・・・これと・・・あ。」

紫希がその日図書室で見つけたのは、まさにそういう本の内の一冊だった。





「んむむむむむ〜〜〜〜・・・・よし、こっちー!」
「はずれ。」
「ぎゃーーーー!」
「おし、俺の勝ち♪って事で、こっちの飴は俺のな?」
「ひっどーい!ちょっと待って待って、もー一回!もー一回!」

紀伊梨は丸井と、お菓子を賭けてトランプで勝負しているのである。
負けを取り戻す・・・というより、基本負けてばかりの紀伊梨は、最近こうしてもう一回!と食い下がる度に、ギャンブル依存症にちょっと似てきたなあ、とクラスメイトから思われていることを知らない。

「うぬぬ、今度こそ・・・あ!紫希ぴょんだ、紫希ぴょーん!」

「あ、紀伊梨ちゃん。丸井君。」

紫希は廊下を通りがかった際に呼び止められた。

図書室からの帰りだったので、手には相変わらず何冊かの本が収まっていたが。

「あ、司祭さんの本だー!」
「そうなんです、図書室で見つけたんです。懐かしくって、借りちゃいました。」
「司祭さんの本?」
「シリーズなんです。主人公が「赤の司祭」っていう役職についていて・・・タイトルも『赤の司祭さんと〇〇事件』みたいな感じでついてるんです。」
「へー・・・・」

これは所謂「中学生以上向け児童書」という奴(それを小学生から読んでいるのかというのは今は置いておいて)で、表紙にはやや漫画チックなタッチの挿絵が入っている。

赤毛に緑の瞳で、ロングヘアの赤いローブに身を包んだ女の子。
この少女が恐らく、主人公の「赤の司祭」だろう。

「なつかしー!えーがとか皆で見に行ったよねー!」
「へえ?映画あんの?」
「はい。私が好きで・・・皆に付き合って貰ったんです。もう随分前ですけれど・・・あ!ご、ごめんなさいもう予鈴なので、失礼します!」
「ばいばーい!」

紀伊梨は笑って手を振って見送ると、あー、と小さく言った。

「司祭さんなつかしーなー!映画またレンタルして見よっかなー?紫希ぴょん、ぜーったい喜ぶと思うしー!」
「そんな好きなの?」
「ん?うん、紫希ぴょん司祭さんの本だーいすきだよ!沢山あるから全部は家に置いとけないって言って、ちょっとしか持ってないからいっつも借りて読んでるお!」
「ふうん・・・面白い?」
「うん、面白いよー!紀伊梨ちゃん映画しか見たことないけどねー、主人公の司祭さんがすーごく強くってーーー」

「紀伊梨ー!次の日本史当たるんじゃないのー?」

「あー!そーだ、紀伊梨ちゃん次じゃーん!ちょっと待ってきょーかしょきょーかしょ、」
「あ、おい!」

丸井がそれ以上聞く前に、紀伊梨は自分の机に慌ただしく駆けていってしまった。

「・・・司祭さん、ね。」

読んだことないなあ。
丸井は内心で呟いた。

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