100話記念企画 No.063
それは本当にたまたまだった。

引きこもるの大好きの母親が、珍しく一緒に買い物行こうというから付き合って。
そこで、試供品を配り歩いている人が通りに居たのだ。

「健康と美容の為に、サプリを摂りましょう!今なら各種サプリのどれが必要なのか、無料でご相談受付してまーす!」

そうやって言われると、本当に必要な栄養素でも急にうさん臭く見えてしまうのは何故なんだろうか。自分が怠いと思ってるからかな。

「お一つどうぞー!あ、娘さんとご一緒なんですね!じゃあお二つどうぞー!」
「はいはい。」

人付き合いが苦手ってレベルじゃなく苦手な母・純子に代わって、こういう時受け答えするのは家族の役目。
この日もそうしただけだった。

二袋いっぺんに渡されるサプリメントは、偶然種類が一緒だった。

「・・・ミネラル。」




『マルチミネラルの力で、貴方の体、内からキレイ♪』

「・・・・・」

風呂上り。
半分以上忘れていた事を、そのCMで思い出した。

「ん?妹、お前もジュラパ見る?今CM中だけどw」
「いや、私良いや。寝る。」
「あ、そう?」

ジュラパも興味ないではなかったが、眠かったしもう何度も見たし。

後、思い出したから。
思い出したことを覚えてる内にさっさと済まそうと思ったのだ。

「えー・・・どこやったっけ。」

自室に戻ると、鞄を開く。
確か内ポケットにしまった。

ああ、あった。

「水なしで飲める必須マルチミネラル、女性の健康と美容に・・・必須ねえ。」

必須とはまた大きく出たもんだ。
なんて思いながら1袋目を開けた。

まあ、ただだし。
捨てるのも勿体ないし。
消えものだから邪魔にならないし。

(タイミングは食後・・・まあ今日は良いや。水なしで噛んで飲めるフルーツ味。)

「・・・・んん。」

ガリ、と1粒。奥歯でミネラルを噛み潰した。



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