私と黒子テツヤは小学校来の仲である。
それも小学一年生のときから9年間同じクラスで、所謂、腐れ縁というやつだ。
ひとつ、注意しておきたいのは、付き合いが長いからと言って決して仲がいいとは限らないことだ。寧ろ私とあいつは付き合いの長さに比例して、仲が悪くなっていっている。
そもそもの始まりは小学一年生の時、私の足元に鉛筆が転がってきた瞬間だった。
以下簡単な回想。
「すみません。そこに落ちてる鉛筆とってくれませんか?」
「んー、あ、これね。ほい」
「わっ」
「あはは、へただなあ」
「……急に物を投げないでください。危ないでしょう」
「取れないそっちがわるいんじゃん」
「まったく、女の子ならもっとおしとやかにしてください」
「……なにそれ。そーゆーの、だんじょんそひって言うんだよ」
「『男尊女卑』ですよ。おばかさんですね」
幼いながらの言い合いは授業が始まっても続き、二人して拳骨を喰らったのは悪しき思い出である。
回想終了。
それからというものまさしく犬猿の仲になったわけだが、不幸なことに地元の小学校では六年間同じクラスだった。
そんな黒子との縁も小学校で終わりだとせいせいしながら迎えた中学校の入学式で、中学生になった私は帝光中学の可愛い制服を纏っていた。
その入学式で、黒や茶に混じる色とりどりの髪色の中に水色を見つけてしまった私は、私を信じられらない目で見ている黒子に人差し指を向けた。
なんでいるアンタがここにいる!?
――というわけで黒子と望まない再会を果たしてしまったわけだけど、それ以外は特に大ごとなく私の女子中学生ライフは幕開けた。穏やかな一年生、そして二年生……の、その半ば。私の日常は黒子のせいで波乱に満ちることになる。が、まあそれは今、関係ない話だ。
ともかく色々あったのち、黒子のやつが学校に来なくなってからしばらくして、私は帝光中学を無事卒業した。
まとめると、私とあいつは中学校でも三年続けて同じクラスだったということだ。


中学最後のこともあって、変な終わり方ではあったが、ともあれ黒子との縁も中学までだ。
私はまだ新しい校舎の前で、やつから解放されたことに喜びを感じていた。
なんたってやつは幻の六人目、なんて大層な異名がついた選手なのだ。いざこざというのは部活絡みのようだったが、十中八九、強豪校に行っている。そうでなくとも間違いなく設立2年目のこの高校にはいないだろう。
そう、思っていたのに。
「…………」
「…………」
「……なんでいるの」
「それはこっちのセリフです」
いやなんで。なんで、コイツがここにいるんだ。
しかも同じクラス。しかも席は私の2つ左。
前にもこんなことがあったなと昔を思い出しかけて、いややめようと思考を止めた。こいつとの思い出(と呼ぶべきでない嫌な記憶)を回想しても、不快になるだけだ。
さて現実をみよう。

「……君、高校上がれたんですね」
「私はそこまで馬鹿じゃないっての。あんたこそ、最後ほとんど不登校だったじゃない」
「あっさり人の傷口をえぐんないでください。心無いひとですね。だいたい、僕は君と違って優秀なんです」
「精神防弾ガラスがなにいってんの? それに言うほど違わないでしょ、10点くらいだし!」
「現文ではいつも15点差以上ついてました。総合点数も負けたことないですし」
「ほとんど赤司くんと桃井ちゃんのおかげじゃんか! それに最低5回は勝ったことあるし」
「累計で僕が勝ってたことに変わりはありません」

そうやって口喧嘩を間に1人挟んでしていたら、担任に黒子の隣にさせられた。
解せない。



高校入学してひとつきほど経った。
どうやら黒子はうまく部活に馴染むことができたらしい。黒子が帝光バスケ部の話を火神くんに口外しないようにと言ってきたついでにさんざん自慢されたのだ。私はやつのわき腹を小突きながら「バカなの」と言ってやった。何があったのかなんて不明瞭な噂以外ほとんど知らないし、噂で聞きかじった程度のことを話すわけもない。
私も私でそれなりにうまくやっている。中学の時の友人はあまりいないが、もともと人見知りする性質ではないのでクラスにつるんでくれる女子が何人もいるのだ。
そんなある日、友達が言った。
「あんたってさ、火神くんと結構話してるよね」
「え、そうかな」
「そうだよ。怖くないの? 大きいし、目つき悪いし、それに突然叫んだりするし」
最期に付け加えられた文言を聞いて、私は火神くんを憐れんだ。だいたい黒子のせいだ。
「うーん、怖くはないかな。見た目は厳ついしすぐ怒鳴るけど頭弱めっていうか」
「言うねえ」
すこし頬を引きつらせながら彼女は辺りを見渡した。大方火神くんがいないか心配しているのだろうけど、火神くんはこの時間は購買だ。それに聞かれても特に問題はない。火神くんは頭は悪いが順応力はあるようで、私の口汚さにすぐ慣れたようだった。黒子の影の薄さにはまだ慣れないくせに。だいたいなんでみんながあいつに気付かないのかが不思議でならない。
今だって、彼女の口から黒子の名前は出てこない。初日結構目立っていたような気がしたのだけど、認識すらされていないようだ。小学生の時から地味なやつではあったが、徐々に幽霊染みてきたな。
目立つと言えば、この前バスケ部がそうとう目立つ……というかヤバいことをしていた。大丈夫なのかアレ……。まああれだけヤバいからこそ一見地味でも実は腹黒で口が悪い黒子が馴染めているのだろう。腹黒子とはあいつのことである。

それは順調な女子高生ライフを送っているある日のことだった。
「なあ、みょうじ、おまえバスケ部のマネージャーやらねえか?」
火神くんが突然そう言った。
その唐突さとか、続けて言われた勧誘の理由が「黒子を見つけられる」ことだとか、中学時代の出来事とまるっきり同じで私は思わず眉間にしわを寄せた。そのときと同じように答える。
「やらない」
とても感じのいい返答とはいえなかったにも拘わらず、火神くんは気にした様子なく勧誘をつづけた。
「なんか部活とかしてたか?」
断った理由を尋ねてくる火神くんの姿は青峰くんと容易に重なる。青峰くん……といっても荒れる前の話だけど、頭の悪さとか率直さとか、バスケ馬鹿なところとか、火神くんと青峰くんには案外共通点が多いように思う。グレる前の話だ。火神くんは素直なところがあるからまだ救いようもあるだろうが、青峰くんはダメだ。少なくとも私はあのおっぱい星人が嫌いだ。誰が貧乳だ。亡べばいい。
話を戻そう。
「してないし、放課後は暇してることもあるけど、男バスだけは絶対ナイ」
「なんでだよ。バスケ嫌いか?」
「別にバスケは嫌いじゃないよ。むしろスポーツの中じゃ好きなほう」
帝光はバスケの強豪校で、全校応援することもあったし桃井ちゃんに誘われることもあったので、ルールは分かるし、面白いとも思う。
じゃあなんでだ。そのまま顔に出ている火神くんに向かって、私は「言ってなかったっけ」と反対に首を傾げた。
「黒子のこと大っ嫌いだから」
そう言った時の私は心底嫌そうな顔をしていたのだと思う。私の口の悪さに慣れていたはずの火神くんが顔をひきつらせた。
そういえば、小学校の時は人目も気にせずお互いに嫌い嫌いと感情的な暴言を吐きあっていたけれど、中学高校と進むにつれて、語彙や遠回しな嫌味が増えていき、こういう風に嫌いと言うのは久しぶりかもしれない。
「お、おう」と頷きつつやや身を引く火神くんの反応は久しぶりで、なんだか悪役チックになってしまっている気がしたので、「黒子も私のこと嫌いだしお互い様だよ」
言い訳を添えておいた。
「そういうわけで、私は男バスのマネージャーしません!」
「そうか……」
私がきっぱり断ると、火神くんが残念そうに肩を落とした。
「……そんなに人手足りてないの? 二年のマネージャーのひとこの前いたよね?」
「あー、カントクはマネージャーじゃなくて監督だからな。マネージャーはいねえんだ」
一瞬何を言っているのか分からないが、集会の時に見た女のひとはマネージャーではなく監督だったようだ。……女子高生が監督? 新設だとそういうことがあるのかもしれない。運動部事情には詳しくないのでひとまずそう納得しておいた。

その数日後。
「みょうじ、ちょっと今いいか?」
昼休み、英語の予習を忘れていたことに気付いて慌ててやっていると、火神くんに教室の外へ連れ出された。なんだか嫌な予感を感じながら人気の少ない場所へ……そこには三人の男女が待っていた。
「こい、……このひとたちは部活の先輩だ」
火神くんから紹介された先輩のうち真ん中に立っていた女のひとがにこやかに笑った。
「初めまして、みょうじさん。私は二年の相田リコ、男子バスケ部の監督をしてるわ。こっちは同じく部員の伊月くんと小金井くん」
「は、はあ……、どうも」
嫌な予感は見事的中し、男子バスケ部という単語に私はすべてを察した。
「突然だけど、あなたにお願いがあるの」
ずい、と相田先輩が距離を詰めた。反対に私は一歩引くと、後ろにいる火神くんとの距離が近くなった。これ以上は下がれない。仕方ないので先輩と向き合って、窺うように上目で見た。
「もしかして、マネージャーの件ですか?」
「そう! 話が早くて助かるわ」
下がれないのをいいことに私の手を掴んで逃げ場を絶った強かそうな先輩は、にこにこ笑顔のまま続けた。
まずは男子バスケ部の実績からはじまり、今年の目標、方針がすらすらと語られる。実績といっても二年目ではあるのだけれど、どうやらうちの男バスは結構強いらしい。初出場でベスト4……。中学のせいで感覚がおかしくなっているけれど、東京ブロックでこれはすごいことのはずだ。
今年の目標も全国制覇と大きく出ていて、かつそれを本気で目指している様子だった。熱く語ってくれた相田先輩はもちろんのこと、後ろに控える先輩方や、火神くんからも真剣さを感じる。
まあ黒子が馴染めるくらいなのでこの志の高さに特に驚くようなことはない。あいつは冷静そうな顔してどちらかというと熱血なのだ。その上かなり子供っぽい。
「そういうわけで、今私たちが困っているのは二点。ひとつは選手のサポート不足と、しょっちゅう黒子くんを見失うことよ! あなたがいれば、その二つともカバーすることができる」
論理的な相田先輩の説明が終わった後、すかさず隣の……イヅキ先輩だかコガネイ先輩だか分からないが、穏やかそうなサラサラ髪の先輩が続けた。
「もちろん、マネージャー業をいきなり全部任せるような真似はしない。慣れるまでは俺たちも全力でサポートするよ」
「自分で言うのもなんだけど、みんないいやつだから、きっと楽しいと思う! まずは体験だけでもいいから、どうかなっ?」
最後に猫目の先輩がそう言って、三人そろって私を見つめた。
二度目になるが、私はバスケが嫌いではない。どちらかといえば好きなほうだ。
先輩方や火神くんの真剣さは十分伝わったし、応援したいとも思う。
青峰くんに勧誘されたときよりもよっぽど好意的に勧誘を受け止められている。
ひょっとすると私は男バスのマネージャーになっていたかもしれない――男バスに黒子さえいなければ。
……ん? いや、黒子が居なければそもそも私は勧誘されていないわけだから、つまり私はどう転んでも男バスのマネージャーにはならないということだな!
「お誘いはとてもありがたいんですけど、お断りさせていただきます」
まず最初に頭を下げて、それからちらりと火神くんを一瞥した。
「たぶん火神くんから聞いてるとは思うますけど、私は当の黒子クンとは全く仲良くないっていうか寧ろ最悪なので、まずご期待に沿えないと思います」
苦い顔を隠しもせずにそう言ったものの、相手方の反応は芳しくない。ほんとに? みたいな……この反応には覚えがある。具体的に言うと桃井ちゃんと似ているのだ。

少し回想すると、まだ桃井ちゃんと知り合ってすらいなかったころ、彼女に呼び出された私は彼女に黒子との仲についてすごい勢いで言及された。付き合っていない、好きではないというのに最初はほっとしていたのだが、その後何度も「本当に付き合ってないの?」と聞かれストレスを貯めていた。彼女と青峰くんの関係を引き合いにだして懇々と説くと、今度こそ納得して、ちゃんと謝ってくれた。
そこで聞いたのだが彼女は黒子のことが好きらしい。見る目無いな、桃井ちゃん。青峰くんの方がまだいい男じゃないかと当時は思っていたのだが、その後グレた青峰くんを見て、もしかしたら彼女は男運がないのかもしれないと思った。
なにはともあれ、最初はお互い良く思っていなかったのだが、なんだかんだ私と彼女は仲良くなった。黒子との付き合いによって生まれた唯一の良縁が桃井ちゃんだ。強かな子ではあるのだが、青峰くんの影響なのか女同士のマウンティングというか格付けを意識することなく人付き合いをしてくれる、とてもいい子である。
高校は青峰くんと一緒らしく、それを聞いた時思わず「やっぱり付き合ってる?」と首を傾げてしまったが、私の今の状況について言われると困るので何も言えない。……誠凛で黒子と一緒になったって、桃井ちゃんになんて説明しようかなあ。もうバレてるのかなー、いやだなー、黒子が絡むと面倒なんだよなー。
といったところで回想終了。

面倒だ。桃井ちゃんは青峰くんのことを出して躱すにしても、この状況は非常に面倒だ。
私がどれだけ黒子のこと嫌っているかを切々と語るには、彼らの立場がよくない。四人中三人は先輩だし、それにいいひとそうだからチームメイトのことを散々罵倒して許してくれそうにもない。引かれるだけならまだいいのだが、敵対されるとさらに面倒なことになるのは中学時代の経験上わかっていることだ。脳内を金髪のイケメンが脳裏をよぎった。
仕方ない、琴線に触れない程度に説明するしかない。
「あー……先輩方は、火神くんも含めて、もしかしたら仲良しの延長戦で喧嘩してるって思ってるかもしれませんけど、私と黒子は普通に、本当に、仲悪い上にお互いのこと嫌いなんです。なんの因果か10年連続で同じクラスになったせいで関わりが絶てないだけですから」
口をはさむ隙を与えずまくしたてた。
好きの反対は無関心とか、好きと嫌いは紙一重とか、ふざけないでほしい。好きの反対は嫌いだし、好きと嫌いは対極だ。少なくとも、私にとっての黒子はそうだ。誰が好きであんなやつとつるむか。
「そういうわけなので、この話はなかったことにさせてください」
「……なんだか話に聞いていたのとイメージが違うわね」
私が最後に深々と頭を下げて丁重にお断りすると、唸るように相田先輩が言った。勘違いが伝わったようで何よりだ。場の雰囲気はまさしく意気消沈と言った感じで、とても空気が悪い。
私はこんなことに巻き込まれていることに徐々に苛立ちを感じてきた。
後ろの先輩が「本当に一回だけでもいいんだけどなー」と呟いたのを耳聡く聞きつけながら、これ以上は言い方がきつくなりそうなのでストレスのぶつけ先を召喚することにした。
「ほら、アンタも何か言いなよ、黒子」
「……なんでバラすんですか、バカなんですか?」
私が火神くんとは反対の斜め後ろに立っていた黒子に話をぶんなげると、黒子が嫌そうな声で答えた。初手煽りとは、よろしいならば戦争だ!
「誰のせいでみんな困ってると思ってるの、アンタが死ぬほど地味なのがいけないんでしょうが。この陰キャが」
「僕の影の薄さは個性であり武器です。罵倒の要因にされるのは不服なのでやめてください」
「試合中はそうかもしれないけど、日常生活でなんの役に立つっての言うの」
「ちょっとまて、ちょっと待て!」
自動ドアは開かない、レジで追い抜かれる……そう続けようとした私の言葉を、火神くんが阻んだ。
「黒子お前いつから居た!?」
「みょうじさんが先輩方に絡み始めたときからです」
「誰が誰に絡んだって?」
逆だ、逆! とは言えないのでこのストーカーがとでも言ってやろうかと口を開くと、次は相田先輩に遮られた。
「全然気づかなかったわ……みょうじさんはいつから気づいてたの!?」
「相田先輩が試合の実績について話し始めたあたりです」
どうせ図書室の帰りというところだろう。
「それが黒子が来てからどのへんなのかすら分からないな……」
「火神から聞いてはいたけど、確かに居てくれればこれは助かるなー」
感心したような猫目先輩の言葉に、私はゲッと眉を寄せた。黒子が私のわき腹を本で小突く。
「だから言ったでしょう。なんでわざわざバラしたんですか。余計熱心に勧誘されるだけだと、なぜ予想できないんですか? ああ、できませんでしたね。すみません」
「アンタがそもそもこっち来るのがいけないんでしょうが……!」
元凶がすぐそこにいて何食わぬ顔で話の動向を窺っているのが気に食わなかったのだ。黒子が私がマネージャーは嫌だと言えばこの話は完全に流れるだろうという下心もあったのだが、紳士を気取っているこいつが個人的な感情でチーム全体の利益を無碍にする発言をする可能性は低い……。まったく使えない男だ。こうやって私が悪役に仕立てられていくのであった。覚えがあるぞ、この展開……! 黄瀬くんのパターンと同じじゃないか!

私と黒子が言い合いを再開する気配を察知したのか、さらさら先輩がまあまあと仲介に入った。
「俺たちのリサーチが足りなかったみたいだ。みょうじさんにも黒子にも色々あるよな、すまなかった」
本当に申し訳なさそうに眉をさげるさらさら先輩に毒気を抜かれ、私は肩の力を抜いた。……どうやら黄瀬くんと同じにはならないようだ。やはりこの年頃の歳の差はひとつふたつで随分と違うな……。
私と同様に黒子も一息ついたのを横目でとらえた。黒子がちらりと私を見る。わかってるよ、先輩に免じてここは一時休戦だ。
その後、勧誘に時間を割いたことへの感謝を先輩たちから頂いて、私はようやく解放された。相田先輩の目がぎらついていたのは気のせいだと信じたい。
「悪かったな、みょうじ。付き合わせちまって」
「……、いいよ、別に。火神くんたちが部活に真剣だったのは、嫌というほど伝わったから」
帝光バスケ部とはまた違った部活への熱は、素直に凄いと思う。だから申し訳なさそうな顔をされると私が罪悪感を感じてしまうではないか。
「バスケ、頑張ってね」
私が随分上にある火神くんの顔を見上げながらそう言うと、火神くんは二ッと歯を見せて「おう!」と笑った。……本当に、ややいい男時代の青峰くんとそっくりだ。
私は黒子に起こったことについて、ほとんど知らないし、知りたいと思ったこともない。
わざわざ嫌いなやつのことを知ろうとするほど、私は物好きではない。
「黒子」
「なんですか」
私は黒子が嫌いだ。
それでも、嫌いなやつだろうと、学校に来れなくなるほどイヤな目に合ったことを喜ぶほど。そんなやつがまた夢に向かうことを否定するほど、私の根性はねじ曲がっていない。
「『今度こそ』、獲りなよ。全国」
「……君に言われなくても、必ず」

バスケをしている黒子はそんなに嫌いじゃない。
ただそれだけの話だ。