某日、カルデア。
今日も今日とて魔術師たちはスケジュール通りの仕事をこなしていた――はずたったのだが。事件は突然起こった。

思い思いの場所で探していたサーヴァントたちのもとに一斉に連絡が入った。

【緊急事態発生。直ちにカルデアへ集合せよ】

自身のマスターからではない招集は、確かに異常事態を示している。
あるものは迅速に、あるものは苦情をこぼしつつ、サーヴァント達はカルデアへ集まっていく

「シミュレーションゲームゥ?」

青ずくめのランサーが片眉を吊り上げてそう言った。
苦笑いしたロマニが頷く。

「簡単に言えば、ね」

マスターとサーヴァントの友好度を測ったり、親交を深めたりするために作られたとあるシステムに、カルデアへ帰還するはずのマスターが転移してしまったらしい。どうやらちょっとしたバグが原因らしいが、詳しいことはまだ分かっていないようだ。
さて、転移先は研究部が開発した仮想空間であり、危険は微塵もない。
それではすぐにでも帰還させればいいのでは、と思われたが、ロマンは首を振った。

「それこそがこうして集まってもらっている理由でもあるんだけど、今彼女がいるシステムは少々……いやかなり特殊なんだ」

与えられる課題を達成するまで――ゲームをクリアするまで出られない。使い古されたマンガの設定のようだが、現在彼らのマスターはそう言った状況に陥っている。
そして本題はここから。このゲームのプレイヤーは、後から来た者……この場合はサーヴァントたちであるということだ。

「クリア条件はシンプルだ。ゲームの中で彼女を【幸せにする】こと」

それによって相手のことをどのくらい理解しているのかを知ることができるし、新しく知ることで理解を深めることが出来る。そのための企画だったわけだが、
「作るなら本気でやる」
根が真面目な者ばかりの研究職員たちは複数人のゲーマーを中心に、そのゲームの難易度をスーパーハードに仕立てあげてしまったのだった。

「試運転を藤丸君にやってもらったら、まさしくカオスって感じになってしまって、満場一致でお蔵入りしたんだけど……」

とあるサーヴァントに「舌を噛みきりたい」と言わしめた凶器が、再び牙をむいているわけである。
「レイシフトできるのは一度にひとりだけ。プレイヤーがハマっちゃって戻れなくなることがないようにセイフティが掛けてあるから安心してくれ。……武運を祈る」

最後に遠い目をしつつ不吉なことを呟いて、ロマンは自らの作業に戻っていった。

とりあえず命に別状はないということで、絆測定の名に相応しく、その場には比較的古参の者たちが残った。好奇心が強い新参者も混じっている。

で、誰から行く?

その言葉を皮切りに、長い長い戦いが始まる――


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