頂上決戦と呼ばれるあの戦いから、今日でちょうど2ヶ月経った。

一度死んでから生き返らせたのだから、当然負担は大きい。
意識が戻るまで良くて半年、普通の人間であれば目覚める保証すらできなかった。
ところがふたりはその予想を上回るどころか、白ひげに至ってはたったの1ヶ月足らずで目覚めてしまった。
正真正銘の化け物だ。

白ひげが目覚めて一か月ほど経つ。
白ひげの驚異的な生命力を考えて修正した見立てでは、まだ支えなしで立てるかどうかというところだった。
ところが現在白ひげはというと、大笑いしながら元気に島を歩き回っている。
一度死んだことで能力こそ失ったものの、その本質的な強さは変わらない。

……白ひげを敵に回さなくて良かった。
というか、白ひげと戦った赤犬や赤髪たちと対峙していた、と思うと、背筋がゾッとした。
良く死ななかったな、と心底思う。

「鈴蘭ー」
「あー?」

島に自生している薬草を擂っていると、奥のベットで寝ているエースから呼ばれる。
キッチンから顔を出すと、上半身がベットからずり落ちた状態のエースが居た。

「いや何やってんだよ!」
「起き上がれるかなと思ったんだよ」

ここ数日で喋ったり、食べたりできるようになったが、流石に立ったりするのはまだ無理だ。
乳棒を置いて歩み寄ると「わりい」とエースが笑う。

謝られて、心が軋む。

……これは、私が勝手にやったことだろ。

だから自分がリハビリや看病をするのは当然のことで、それに感謝されるいわれも、ましてや謝られるいわれもない。

かといって何か言えるわけでもなく、黙ってエースの身体を元に戻す。
一旦ほぼ完全に筋肉が落ちた身体は、数か月前では考えられないほどやせている。
若干骨ばった身体を支えながら、鈴蘭は眉を寄せた。

「おれも早く動きてえなあ」

エースは身体を起こされながそう言って、恋しそうに外に視線をやった。

「ごめんな」
「あ? なんか言ったか?」

外に向いていた視線をこちらに寄越したエースに、「何でもねえよ」と首をふった。

* * *

薬を作り終え、ゴミを外に捨てていると、ちょうど白ひげが帰ってきた。

「おお、小娘」
「旦那……て、なんだその木」

白ひげの手には何故か木の枝。……枝、というか、太さ的には既に幹といってもいいくらいだが。

「ちょうど良いのがあったんでな」
「……杖か?」
「馬鹿野郎、武器だ、武器」

目の前にぶん、と木の枝が振り下ろされる。
その勢いにぎょっとして固まる。
本当にリハビリ中なのか、この男。

「……いや、武器って。誰と戦うつもりだよ……」
「グララララ、調子も良くなったことだし、これを機に鍛え直すさ」

質問と答えが合ってない。
それにしたって、調子がいいって、どういうことだ。
確かについでに……というか死んだからこそ、色々と悪かったところは治したが、それにしたってあんまりだろう。

「それにしても、この島はおもしれえな」

言いつつ、白ひげは背後に広がる島を振り返った。

「こんな場所があったなんてな。ここは新世界じゃねェんだろう?」
「いや、私もここがどこにあるのかは知らないんだ。最初に来たときは流れ着いただけだし、それ以外はシルバーに任せてるからな」
「ほう、ますますおもしれェ」

興味深そうにひげを撫で、白ひげは笑った。
……楽しそう、と思うのは、そうであってほしいと思っているからなのか。

「そろそろ良い時間だな。飯にしようか!」

ついでに採っておいた野菜を入れた籠を持ち上げると、白ひげがうんざりしたように顔をしかめる。

「またそれか? おれはそろそろ肉が食いてェんだが」
「病み上がりが何言ってんだよ……」