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「初詣に行こう!」
二学期の終業式、ふと思い立った私は一色くんと新堂くんにそう言った。
そう、一色くんと新堂くんに言ったはずだったのだが。
「なんで矢切がいんのさ」
「あ? 新堂に誘われたんだよ。お前こそなんで居るんだよ」
「私が発案者だわ」
「ていうか久我が居ることには突っ込まねえのかよ」
「俺はちゃんと秋ヶ瀬ちゃんに誘われたんです〜〜」
「まあ本当に来るとは思わなかったんだけどさ」
たまたま会って、前お世話になったし、なんだかんだ会うたび話はするしで流れで聞いては見たけども。ちなみに叡山はたまたま会うこともなかったので誘わなかった。なんか正月は掻き入れ時とか前言ってたし、忙しいんだろう。
私がポツリと呟くと、「なんか言ったァ?」と笑顔の久我くんから顔を覗き込まれた。
「……ていうかさ」
「誤魔化すの下手過ぎるだろ」
「ていうかさ!」
うっさい矢切。
「着物率、すごいね」
私、一色くん、新堂くん、久我くん、矢切のうち、一色くんと新堂くんと矢切が着物を着ている。私服なのは私と久我くんだけだ。現代の若者らしからぬ様相に、めちゃくちゃ注目を集めている。まあこの集団、私以外なんか知らんけど顔が良いからなあ。
「初詣って聞いてたから、てっきりみんなこれだと思ってたよ」と一色くん。
「俺もだな」と矢切。
「僕は私服で行こうとしたら、親に見つかっちゃって」と新堂くん。
「私の知ってる常識と違う……。いやー、久我くんが来てくれて良かったあ」
私がほっと胸を撫で下ろしていると、久我くんが「俺は常識あるからねん」と自慢げに笑った。もしかしてきみにも着物を着るという選択肢がありはしたのか……? これが遠月……。
そんな会話もそこそこに、私たちは初詣の列に並んだ。
大きな神社じゃなくて、私の家族で毎年来ている小さめのマイナー神社だから、さして時間が掛かることなくお参りを終えた。
「お、わたし大吉」
「僕も大吉だ。幸太郎くんは?」
「僕は……吉だね。でも書いてあることは結構いいかも」
「中吉か〜〜まあ悪くないかな〜〜」
「げ」
各々おみくじを引いていたところ、矢切が嫌そうな顔をした。
「え、なになに」と私と久我くんが矢切にたかる。
「近寄んな!」
「やだ、見して!」
「ほらほら〜〜、往生際が悪いよ矢切ぃ」
「ちょ、コラ……!」
矢切が上に逃がしたおみくじに、矢切の肩を引っ掴んで手を伸ばす。
久我くんも同じようなことをしているものだから、流石に二人分の体重は耐えられなかったようで、矢切が後ろにふらついた。たたらを踏んだ拍子に、矢切が着物の裾を踏んづけた。
「うおっ」
「うわ」
「ぎゃ」
「危ない……っ」
「あっ」
上から矢切、久我くん、私、新堂くん、一色くんである。
五人分の声が重なった直後、私たち三人は石畳の上に折り重なって倒れた。
矢切を偶然にもクッションにできた私の目の前に、ひらりとおみくじが降ってくる。
大凶と記されている。やっぱりおみくじって当たるんだな……。
私と久我くんは起き上がった後矢切に一発ずつ殴られた。痛い。
矢切はぷんすか怒りながらおみくじを結びに行って、新堂くんと一色くんもそれに付いていっている。
手加減してくれてもいいのにね〜と久我くんと話していると、ふと赤色が視界にちらついた。
「あれ、久我くん、さっきので怪我できてない?」
いわゆる萌え袖をしているせいで見えにくかったが、手のひらに擦り傷がある。
「ああ、うん、まあ大した傷じゃないし……」
「だめだよ」
久我くんが袖で傷を覆ったので、その手首を掴んだ。
「久我くんは料理人でしょ。手は資本じゃない」
「そうだけど、まあ家帰ったら消毒しとけばいいっしょ」
「うちにおいでよ」
「え」
「ここから近いから、すぐだよ。今大きな神社に出かけてるから皆いないけど、私でもこれくらいならなんとかできるしさ」
「……」
「お母さんが張り切ってお節作ったから、元々みんな誘おうと思ってたんだよね。初詣行くって言ったらぜひみんなにってたくさん作っちゃってさあ」
「……秋ヶ瀬、ちゃん」
久我くんが掴まれている方の手をくるりと回して、私の額に手刀を落とした。
「いった! え、なんで!?」
心配しただけなのに!? と私が抗議すると、久我くんは「ばーか」と更に罵ってきた。
「おまえ、ほんっっっとにバカだよね」
「いやなんで詰られなきゃいけないのさ」
「さあ。もうちょっと大人になればわかるんじゃない?」
久我くんは一歩二歩と歩き出して、ちらりと振り返った。
「なにやってんの。あいつらも誘うんでしょ、秋ヶ瀬ちゃんち」
「あ、うん」
「はーあ。一般家庭の味が俺らの舌に合うとは思えないけどね〜〜」
頭の後ろで手を組みながら、久我くんがため息をつく。急展開に着いていけなかった私だが、そのセリフには思わず笑ってしまった。
「大丈夫、前食べた十傑第一席の料理よりおいしいから」
二学期の終業式、ふと思い立った私は一色くんと新堂くんにそう言った。
そう、一色くんと新堂くんに言ったはずだったのだが。
「なんで矢切がいんのさ」
「あ? 新堂に誘われたんだよ。お前こそなんで居るんだよ」
「私が発案者だわ」
「ていうか久我が居ることには突っ込まねえのかよ」
「俺はちゃんと秋ヶ瀬ちゃんに誘われたんです〜〜」
「まあ本当に来るとは思わなかったんだけどさ」
たまたま会って、前お世話になったし、なんだかんだ会うたび話はするしで流れで聞いては見たけども。ちなみに叡山はたまたま会うこともなかったので誘わなかった。なんか正月は掻き入れ時とか前言ってたし、忙しいんだろう。
私がポツリと呟くと、「なんか言ったァ?」と笑顔の久我くんから顔を覗き込まれた。
「……ていうかさ」
「誤魔化すの下手過ぎるだろ」
「ていうかさ!」
うっさい矢切。
「着物率、すごいね」
私、一色くん、新堂くん、久我くん、矢切のうち、一色くんと新堂くんと矢切が着物を着ている。私服なのは私と久我くんだけだ。現代の若者らしからぬ様相に、めちゃくちゃ注目を集めている。まあこの集団、私以外なんか知らんけど顔が良いからなあ。
「初詣って聞いてたから、てっきりみんなこれだと思ってたよ」と一色くん。
「俺もだな」と矢切。
「僕は私服で行こうとしたら、親に見つかっちゃって」と新堂くん。
「私の知ってる常識と違う……。いやー、久我くんが来てくれて良かったあ」
私がほっと胸を撫で下ろしていると、久我くんが「俺は常識あるからねん」と自慢げに笑った。もしかしてきみにも着物を着るという選択肢がありはしたのか……? これが遠月……。
そんな会話もそこそこに、私たちは初詣の列に並んだ。
大きな神社じゃなくて、私の家族で毎年来ている小さめのマイナー神社だから、さして時間が掛かることなくお参りを終えた。
「お、わたし大吉」
「僕も大吉だ。幸太郎くんは?」
「僕は……吉だね。でも書いてあることは結構いいかも」
「中吉か〜〜まあ悪くないかな〜〜」
「げ」
各々おみくじを引いていたところ、矢切が嫌そうな顔をした。
「え、なになに」と私と久我くんが矢切にたかる。
「近寄んな!」
「やだ、見して!」
「ほらほら〜〜、往生際が悪いよ矢切ぃ」
「ちょ、コラ……!」
矢切が上に逃がしたおみくじに、矢切の肩を引っ掴んで手を伸ばす。
久我くんも同じようなことをしているものだから、流石に二人分の体重は耐えられなかったようで、矢切が後ろにふらついた。たたらを踏んだ拍子に、矢切が着物の裾を踏んづけた。
「うおっ」
「うわ」
「ぎゃ」
「危ない……っ」
「あっ」
上から矢切、久我くん、私、新堂くん、一色くんである。
五人分の声が重なった直後、私たち三人は石畳の上に折り重なって倒れた。
矢切を偶然にもクッションにできた私の目の前に、ひらりとおみくじが降ってくる。
大凶と記されている。やっぱりおみくじって当たるんだな……。
私と久我くんは起き上がった後矢切に一発ずつ殴られた。痛い。
矢切はぷんすか怒りながらおみくじを結びに行って、新堂くんと一色くんもそれに付いていっている。
手加減してくれてもいいのにね〜と久我くんと話していると、ふと赤色が視界にちらついた。
「あれ、久我くん、さっきので怪我できてない?」
いわゆる萌え袖をしているせいで見えにくかったが、手のひらに擦り傷がある。
「ああ、うん、まあ大した傷じゃないし……」
「だめだよ」
久我くんが袖で傷を覆ったので、その手首を掴んだ。
「久我くんは料理人でしょ。手は資本じゃない」
「そうだけど、まあ家帰ったら消毒しとけばいいっしょ」
「うちにおいでよ」
「え」
「ここから近いから、すぐだよ。今大きな神社に出かけてるから皆いないけど、私でもこれくらいならなんとかできるしさ」
「……」
「お母さんが張り切ってお節作ったから、元々みんな誘おうと思ってたんだよね。初詣行くって言ったらぜひみんなにってたくさん作っちゃってさあ」
「……秋ヶ瀬、ちゃん」
久我くんが掴まれている方の手をくるりと回して、私の額に手刀を落とした。
「いった! え、なんで!?」
心配しただけなのに!? と私が抗議すると、久我くんは「ばーか」と更に罵ってきた。
「おまえ、ほんっっっとにバカだよね」
「いやなんで詰られなきゃいけないのさ」
「さあ。もうちょっと大人になればわかるんじゃない?」
久我くんは一歩二歩と歩き出して、ちらりと振り返った。
「なにやってんの。あいつらも誘うんでしょ、秋ヶ瀬ちゃんち」
「あ、うん」
「はーあ。一般家庭の味が俺らの舌に合うとは思えないけどね〜〜」
頭の後ろで手を組みながら、久我くんがため息をつく。急展開に着いていけなかった私だが、そのセリフには思わず笑ってしまった。
「大丈夫、前食べた十傑第一席の料理よりおいしいから」
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