見事五月病

西田から名前の様子がおかしい旨を告げられた。言葉遣いが変という抽象的な
真島自身
今のところ勤務態度に影響はないようだが、真島建設は常に人手が不足している。名前という優秀な人材を失うわけにはいかず、
早々に芽を摘んでおきたい。


「名前チャン。今日仕事終わったら飯行かへんか?給料日やし奢ったるで〜」



「本当ですか!嬉しいです。どうもヘペトナス」
「……」


妙な言い回しに真島は絶句した。聞き間違いかとも思ったが、西田の言っていた意味が
名前の嬉々とした表情を眺めると、嫌な予感に脅かされずにはいられなかった。


「ヘペ…?」
「ヘペトナスですよ!あ、社長は信者じゃないから分からないのか。良かったら今日ご飯の後、教団に行ってみますか?社長も立場上たくさんの悩みを抱えてらっしゃるでしょう。でも、大丈夫。この世の中に救いはあります」
「俺は名前チャンの頭が大丈夫か心配になってきたわ」




「いや、ようやく給料が入ったのでフセリンチョできるのが嬉しくて。ク・リパースを溜めるには…」
「あーーーっ!!!!!」
「わっ、急に大声出してどうしたんですか、社長」
「お、お、お…、思い出したわあああ〜〜!」


真島の頭に忌まわしい記憶が蘇った。約20年前、かつて蒼天堀でカタギをしていた頃に母親の依頼で新興宗教団体から娘を救ったことがある。宗教といえば聞こえは良いが、実際のところムナンチョヘペトナス教は信者から金を巻き上げている詐欺集団であった。
確か、女子大生が教祖の男に手を出されそうになっていたところをすんでのところで阻止した覚えがある。あの時は未遂だったが、名前はどうだろうか。いつから宗教を信仰しているのか。
意を決して尋ねる。


「お、お前、まさか教祖とシュレピッピしとらんやろな!?」
「ええっ!私みたいな新米が教祖様にシュレピッピしてもらうなんて恐れ多いですよ…!」
「ひとまず貞操は守られてたみたいで安心したわ」


「にしても、何であのインチキ宗教に洗脳されとるんや。あいつら神室町にまで進出しとるんか」


「とにかく!名前チャンが汗水流して働いたお金を他人に委ねんなや」
「お布施じゃありません!フセリンチョですよ!」
「あかん、重症や」





「いや、でもまさか社長がシュレピッピを知ってるなんて。ムナンチョヘペトナス教の言葉を知っているなんてもしかして信者なんですか?」
「違うわ!まぁ、昔、大阪おった頃に色々あったんや…」
「蒼天堀に教団を構えていた頃となれば、ウロゴマによって壊滅に追いやられてるって話ですがその前ってことですかね?」
「ウロゴマあ?」
「ええ、なんでも突然襲来した災厄のことらしいです」
「……それ、もしかして、俺のことやろか…」
「え?」
「いや、何でもないんや」

常套手段

「チョモゴメスを
「また新しい用語が増えとる…」
「え?」
「いや、その、チョモゴメスってのはどういう意味なんかな〜って」
「ああ…、別の言葉で表すのであれば再教育とでも言いましょうか」


「フレンドから紹介してもらいました」
「ほお、因みにそいつは誰や」
「私より数ヶ月前に入社したあの先輩ですよ」
「よし、宗教もろともぶっ潰したるわあああ!」