フェルヘート・メイ・ニート


この小説は「大逆転裁判」「大逆転裁判2」のネタバレを大量に含んでいます




「大帝都盟勇大学の学生で弁護士であった亜双義一真が死んだ」

 私は一真さんの置いていった真っ白な洋シャツを縫いながら、そのような不吉な知らせを耳にした。「アソウギカズマがシンダ」私はあまりの事に針で親指をブスリと刺して、知らせを届けてくれた御言葉教授に心配されてしまった。親指に手元にあった縫いかけのハンケチーフをあてて、御琴羽様の声に耳を傾けた。
 大英帝国へ向かうの船の中、台湾手前の海の上で死んだそうな。首を酷く打ち付け、即死だったとか。私はそうですか、と酷く冷静に答えて御琴羽様に遅ればせながら茶と一真さんが買ってきたままの煎餅をお出しした。いらん、と言われたけれど、煎餅はあまり好きではないから食べてほしいと思ったのと、報せを聞いてすぐ広い家にまた一人になるのは酷く辛く、少しでも人を引き止めたいと思ったからであった。
 まず、墓と葬儀の話をした。数少ない私と一真さんの身内数名と、御琴羽様含めた十数名で執り行う事になった。御琴羽様がすべて執り行ってくれる事になり、いいのですかと問うたら「友人の忘れ形見ですから」と、悲しそうに言った。墓は丘の上に墓石を。まだ遺体が帰ってこないということだけれど、トントン拍子に葬儀の予定が暦の上に書きとめられた。
 「そういえば、成歩堂さんはその報せを聞いているのかしら」と聞いたところ、彼は一真さんのトランクとクローゼットにぎゅうぎゅうと詰まり、密航していたとのこと。きっと強引な彼の事だから、成歩堂さんを強引に連れていったのだろうと思うと、申し訳なさと、嬉しさと、同時に酷い悲しみに包まれた。
 暫く、御琴羽様に「体調はいかがですか」「しっかり食事はとっているですか」などと心配をされ、大丈夫ですよ、そちらはいかがですかなどの問答をし、そろそろお暇しますよ、という言葉と共に御琴羽様は家を出ていった。
 御琴羽様と分かれて、葬儀を終え、墓石の前に立ってもなんだか実感がわかなかった。遺体を見ていないからか、よく分からないけれど、家に帰ると「ただいま。大英帝国から帰ってきたぞ、なまえ」といって、死んだと見せかけて帰ってくるような気がして落ち着かなかった。

 亜双義一真が死んだ。

 一真さんと私の出会いは普通であった。初めて一真さんを知ったのは女学校での学友である寿沙都さんから、一真さんの話しを聞いた時であった。うら若き好青年である亜双義さまは司法を変えるという志を胸に弁護士になったとか。わたしはそれを、寿沙都さんは好きなのね、なんて茶化しては「なまえさま!お戯れはおよし下さい!」などと可愛らしい顔でむすっとしていた。ある時、御琴羽教授の仲介で、私は一真さんと二人でお食事をすることになった。いま思うとお見合いだったのかしらと考えるけれど、きっとそのつもりだったのだろう。