note
ジャンル不問で思い付いた小ネタを徒然と。
「例え小十郎様の御命令でも嫌な物は嫌で御座います。」
「そこを何とかだな、」
頼む、と頭を下げたところで娘はつん、とそっぽを向いてしまった。さても困った、と小十郎は頭を抱える。
彼女は小十郎が自家菜園で使う苗や種の仕入れ、野菜の出荷を頼んでいる商家の娘。勝ち気で頑固、ぴんと伸びた背筋にかっちりとまとめた黒髪、きりりと吊り上がった杏仁形の眼も凛々しく男勝りな、城下でも「可愛げが無い」と有名な娘である。
そんな商家の小娘が武家のしかも国主の腹心相手に何を嫌がっているのかと言うと問題はその国主にあった。
先日気紛れで小十郎の畑に訪れていた国主が、野菜の集荷に来ていたのに畑の状態が悪いからと着物を捲り上げ、手伝いの兵士を押し退けて畑弄りを始めた娘の非凡具合を甚く気に入った事が発端である。
「室にするから連れて来い」と言われた時には胃の腑に穴が空く所か抜け落ちるのではないか思うほど腹が痛んだ。彼女が如何に御し難く扱い難い女であるかは仕事を同じくする小十郎が一番知っている。あれだけは御止め下され、とその欠点を上げれば上げるだけ主君は興味を持って「暴れ馬なら尚更良い馬だ。乗り熟すのも手懐けるのも面白い上、主と認めさせれば従順だろ。」と。本当の馬ならそうやもしれぬが、相手は人で女、そう易々とはいくまいと何度言っても聞いてはもらえず、泣く泣くこうして交渉に来た訳だが案の定。奥州伊達の当主が直々に室にと腕を広げて居れば、大概の娘は諸手を上げてその胸へと飛び込むだろうに、頑固娘は所詮頑固娘であった。
----------
小十郎がストレスと戦いながら抵抗する町娘を武家の嫁に仕立てつつ、娘にベタ惚れの政宗があの手この手で娘を絆していく話(笑)熱血篇よりギャグ強め。
2015/05/24
←前へ | 次へ→
ballad
+以下広告+