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某リアリスト曰く、
“人間は誰しも、誰かに存在を認められたい願望がある”
らしい。
“殊、女性は誰かの物になりたいと言う願望がある”
らしい。
後者の願望にはイマイチピンとこないけど、前者はまぁ、分からなくもない。誰かに認めて欲しいか否かって言えば認めて欲しいのが人間だよ。
だからと言って……
「Hey!!Good morning,my angel!!」
「だ、伊達君……っ?!」
こんな認識のされ方は望んでないんだけど……!
身長は平均マイナス1p。
体重は平均プラス700g。
視力は両方1.0。
握力は平均マイナス3s。
成績は学年平均マイナス15点。
体育は10段階評価で4。
趣味は散歩と音楽鑑賞。
特技は背景及びモブになる事。
自慢は親友が美人な事。
特徴は特徴が無い事。
そう、私を漢字で表すなら『凡』。
平凡、凡人、凡才の『凡』。
それが駄目なら、並盛り、並々の『並』。
休んでも休みだと分かってもらえないクラスに1人はいる地味。それが私。因みに座右の銘は成る様に成る。
生まれて以来、17年。困った事も得した事も特に無い性格で此れ迄平和に生きてきたのに、私は今、人生最大の困難に直面している。
「どうした、honey?朝から元気がねーな。」
「ええ……まぁ……」
「Ha!Cheer up!何が原因かしらねぇが、アンタに暗い顔は似合わないぜ?」
「はぁ……どうも……、」
原因は貴方です。と言えれば良いが、そこはやはり、NOと言えない日本人。自分の意見は言えないんだな、私。
ま、それはさておき。
私の人生最大の困難とは有ろう事か『凡』の私が、眉目秀麗、成績優秀、更に運動神経抜群の伊達政宗君に何でかはにぃだのエンジェルだのと呼ばれてる事なのです。
女子の人気が尋常じゃないこの男。今迄、彼とは一切合切無関係で、私が知ってる位だったのに、最近になって突然こうなりました。
原因の見当は全く付かないけど、私の従兄弟で情報通新聞部の佐助兄曰く『一目惚れ』らしい。しかし、そんなシチュエーションあっただろうか?覚えがないぞ。
…此れは聞いておかねば。
ともあれ、クラスは違えど、朝からこんな調子で伊達君に付き纏われてる訳で、そうなれば朝に下駄箱を開ける時から帰りに下駄箱閉める時迄、反対運動と言う名の嫌がらせを毎日受ける訳ですよ。……ここ最近慣れたけど。
まぁ、嫌がらせと言っても、殴る蹴るの暴行とか陰口叩かれるとか教科書が無くなるとか制服が破かれるとか、目立った行動とかじゃなくて、只、下駄箱に御手紙がごっそり入ってるだけなんだから別に良いんだけど。
たま〜に手を切る時があるから取扱注意なだけで。
「……はぁ、」
「U〜han?溜め息なんか吐いて何があったんだ?」
不意に零れた溜め息が聞こえてしまったらしく、伊達君は低い声で首を傾げた。
「あー、いえ。別に何でもないですよ。」
敢えて事実は言わないけど、実物見たら問い詰めてくるだろうか。……それはそれで面倒だし、伊達君には悪いが出来れば君と長時間一緒に居たくない…。
よし、此処は遠回しに言って、伊達君に先に行ってもらうか。
「時に伊達君。」
「Ah?What's wrong,honey?」
至ってポーカーフェイスを気取った私の問いに流暢な英語が返ってきた。あ、隣に並んでるから、流し目プラスか。
「野球部の朝練はないんですか?」
「ある。」
しゃあしゃあと返ってきた是の言葉に若干呆れつつも内心拳を握った。
朝練参加を促す様に言葉を紡げば、自然に事は運ぶ筈…私にしてはなかなかの考えだ!
保身の為にこれはやらねば…!
そう思ったが早いか、珍しく私は直ぐに行動を起こした。
「ですよね。サッカー部の朝練今日は休みとかって佐助兄、今朝のんびりしてたし。行かなくて……って、どうしました……?」
至って普通に会話していたつもりだったのに、眼前の伊達君は酷い勢いで顔を顰め始めた。
「…猿が今朝のんびりしてたなんて何でアンタが知ってるんだ……?」
その顔は宛ら仁侠映画の若頭だ。……強ち間違ってないかもしれない。
「え…?一緒に住んでるからですけど……」
「Cohabit with the creature?!!Really!?」
何度か目を屡叩いて返事をすれば、伊達君はまさかの総英文で驚愕を表した……らしい。
「こ、こはびっと……?」
何故全て英語で言うかは甚だ疑問なのだが、それ以前に私の英語の成績は自慢じゃないが10段階、絶対評価でも1だ。悪いが理解出来ない。理解所か聞き取れさえ出来ない。
そんな訳で私は大柴さん吃驚の片仮名英語で疑問を示す。
「Oh Jesus!アンタはもう御手付きって事かっ?!」
「……は?」
しかし流石と言うか何と言うか伊達君。
私の疑問の意など気にも留めずにさっさと話を進めた。
お、御手付きって………何が?
今分かったけど、私は彼の日本語すら理解出来ないのかもしれない。いや、その前に前文は総英語だったから理解しろってのが難しいのか……?
「…But,feelrelieved,my angel.アンタが誰に何された過去があっても俺が全部受け止めてやる……。」
何て下らない事考えてれば、話はもりもり先に進んで、朝の登校風景にあってはならない様な甘い顔を伊達君は繰り出した。
……………これを私に如何しろと言うんだ。
文脈を理解出来ればそれなりに反応出来るけど、話の流れも解らぬままいきなりンな顔されたって………ねぇ。と言うか登校風景にあるまじき甘い顔ってアンタ幾つだよ。
「Anything is alright...俺に付いてこいよ。」
「……えー………………っとー……………」
遂には手まで取られて見詰めてくるもんだから、回りの視線が痛い痛い。
アレ?確か私、伊達君を朝練に行かせるつもりだったんじゃなかったっけ?
アレ?保身の為にした行動が裏も裏、日本とアルゼンチンの位置関係みたいに裏目に出てますよ?
「はーいはい。竜のだーんなっ。朝っぱらから怪しい発言はそこ迄ーっ!」
緊張とかでなく気まずさから目を泳がしてれば、良く通る聞き慣れた声が私らの肩を叩いた。
「あ!佐助兄!」
「Shit!猿がっ!今イイ所なんだから邪魔すんなっ!」
「え?イイトコだった?一方的でしょ?」
「Shut up!」
振り向けばへらへらと笑いを浮かべる佐助兄が肩を竦めて立っている。
「それから訂正しとくけど竜の旦那。俺様とシイカはCohabit withじゃなくてliving togetherね。寮が同じなだけだから。やらしー関係じゃなーいの。つーかcreatureは酷くない?」
「Ah?living with?…Oh,really?そいつぁ良かった。安心したぜ。」
「そう?そっちよりcreatureに反応欲しいんだけど。creatureは無いって。酷過ぎでしょーが。」
「Ha!!小さい事言うなよ。」
「小さくないよね?人権侵害だよね?」
何とも複雑な顔で佐助兄が言えば伊達君はからからと笑った。
うん、私の存在が見事に消えてるのは知ってますよ。そんなの別に構わないですよ。慣れてますよ。
それより、
誰か通訳呼んで下さい。
りびんぐうぃずっ?くりぃーちゃぁーっ?何が人権侵害になるの?
今ので分かった英文がリアリーだけなんですけど。あ、リアリーだけじゃ英文じゃないじゃん。これじゃあ1評価貰う訳だよ。
「まぁ、今朝の所は見逃したげるから、早く朝練行かないと右目の旦那に極殺されるよ。」
再度一人問答一人ノリツッコミ的な事をしてれば、佐助兄が飄々とした態度で伊達君に言った。
「Ahー………,That's the way it goes.しゃーねーな。」
すると伊達君は校舎のでっかい時計に目を遣り、溜め息を吐く。
「Honey,放課後迎えに行くからな。So long!」
「え?あ、はい?」
良く分からない文句を残した伊達君は、校舎に吸い込まれていった。
そーろんぐ、って何がそんなに長いんだろう…?
「ふぅ。毎朝大変だね、シイカ。」
結構本気で考えてると、佐助兄が苦笑した。
「まぁ…。てかそう思ってるなら助けて頂きたい。」
「無理無理。慶次じゃないけど人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて何とやらって言うじゃん。」
「そーだけど、」
「まぁ、一目惚れだから直ぐに冷めるって。」
「あ、そうだ。それそれ、」
ふと出た佐助兄の言葉に私は手を叩く。
「私、何処で一目惚れされたの?」
「え?」
「全く持って身に覚えがないんだけど。」
「あれ?俺様言ってなかったっけ?」
聞けば佐助兄は目を丸くして首を傾げた。
聞いてないから聞いてるんですよ。
うん、頷くと、少し迷う様に目を泳がせ眉間に皺を寄せる佐助兄。
何?何か言えない様な事なの?
「うーんとね、怒んないでよシイカ。」
暫くして、少々気が進まない様子で、佐助兄は口を開いた。
「?…分かった。」
「何か本人の話に因ると、竜の旦那が偶々体育館脇通った時、偶々新体操部が練習してたんだって。」
「…うん、」
「シイカ、新体操でしょ?かすがと一緒で。」
「うん。」
「でさ、高校生にもなって平均台から落っこちそうになってる娘が居たらしくてね、まぁ、最終的に落っこったらしいんだけど、一筋縄な落ち方じゃなかったんだって。」
「………」
「一回跳躍して落ちたらしいよ。で、何か良く分かんないけど竜の旦那曰くそれが天使みたいだったらしいよ。そんで一目惚れ。」
「……あのさ、佐助兄」
「ん?」
「それって、馬鹿にされてるって事かなぁ?」
Angel
口が裂けても、その後の照れ笑いが天使みたいで惚れたらしいなんて言わないけど。
「そうかもね、」
「嫌がらせかぁ……」
竜の旦那と付き合うなんてお母さん認めません!
正確さに欠ける英語訳>>
Cheer up:元気出せよ
Cohabit with the creature?!!:あんな奴と同棲っ?!!
feel relieved:安心しろよ
creature:家畜(笑)
That's the way it goes:仕方がない
So long:それじゃあ、また
fin.
─ ─ ─ ─ ─
はい、偽者上等政宗さんです(笑)
恋愛経験が皆無故、甘いのは難しいです…orz
そして佐助さんが出張っております。
彼はヒロインの保護者的な立ち位置で、決して恋愛感情は持っておらず、只、政宗さんが危険と言う事であんな事を言っていたのです(笑)
拙作ですが楽しんで頂ければ幸いに御座います。
此処まで読んで下さった御嬢様方!!誠に有難う御座いました!!
20071201
20081013改編
20081231総書き直し完了
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ballad
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