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「オーウ!古井サーン、アナター、マタ赤点ネー!カワイソー!ザビーが個人レッスンするヨー!」
「こじ…っ!?でぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」
真っ赤になって返却された定期テストに私はこれでもかと悲鳴をあげた。
ーーー放課後
「……て訳なんだけど、佐助兄、私に英語教えてくんない?」
「ちょっと………、あんだけ俺様が教えてあげたのに、また赤点な訳?」
「あ、あははは……」
痛い所を突かれた私は苦笑いを浮かべた。
昼間の惨劇について相談すべく、現在私は部活中の佐助兄の所にいる。
冒頭の通り、100点満点中、11点と言う文句無しの見事な赤点を取った私。
補習授業参加は成績下位3名で、私はギリギリ入らなかったらしいけど、あまりにも奮わな過ぎる点数に担当のザビー先生が特別に個人レッスンをして下さると言う。有り難迷惑よ、ちくしょう。
「教えるも何も、もう個人レッスン決まっちゃったんでしょ?覚悟決めなよ。」
サッカーボールを人差し指で器用に回しながら、佐助兄は言った。
「それがね、どうしても個人レッスンは部活があるから免除して欲しいって頼んだら再試験してくれる事になったの。」
「へぇ……。何時?何点取れば免除になるの?」
「日の朝。95点以上。」
「そっか!諦めな!」
「即答っ!?」
私の答えに即答の佐助兄。しかも至極笑顔だ。
「ひっどい!諦めたらそこで試合終了って幸村言ってたよっ!!」
「それは旦那が最近覚えた名言っ!つーか俺様が教えたヤツだしっ!」
「だからって、諦めなはないじゃんっ!ちょっとくらい教えてよ!」
「だーめっ!サッカー部もう直ぐ試合あるし、俺様、新聞部も兼部してんのよ?駄目元の再試に付き合う時間は無いのっ!」
「そんな言い方無いじゃん!佐助兄の人で無しーっ!夢吉以下ーっ!番長さんの鸚鵡以下ーっ!!!傷付いたっ!!」
「どっちがっ!?明らかにシイカのが俺様傷付けてるじゃんっ!!」
ぎゃいぎゃい騒いでいると、不意に背後に気配を感じた。
振り向こうとすれば、腰の辺りに腕らしき物が伸びてきて、そのまま後ろに引っ張られる。
「わっ?!」
倒されるのかと思いきや、直ぐ後ろに人がいて、その人の腕の中に閉じ込められた。
「Hey,猿!」
次の瞬間、左肩に重力が掛かり、同時に低い声が放たれる。
「何、俺のhoneyを傷付けてんだよ。」
「誰が竜の旦那のハニィなのさ?とりあえずシイカを放しなよ。」
言わずもがな、その人物とは例の眉目秀麗、伊達政宗君。
どうやら私は伊達君に捕まり、肩に顎を乗せられてるらしい。声だけでも分かるのに、眼前の佐助兄が顔を殺気立ててるので確信できた。
「Ah〜?男の嫉妬は醜いぜ?シイカの事は俺に任せて、従妹離れしたらどうだ?」
「御生憎様。俺様、従妹離れはしてるよ。竜の旦那に任せる気はないだけで。」
「Ha!言ってろ!」
ぎすぎすした雰囲気を醸し、眼を飛ばし合う二人。何でだ?何時も御弁当一緒に食べるグループなんじゃないの?
モヤモヤ考えてると、伊達君は私の腰をより自らへ引き寄せ、顔を覗き込む様に言った。
「で、シイカ。猿に何されたんだ?」
ぶっちゃけ顔が近い。物凄く。
いい加減放してくれ。外回りしてる女子バレー部が睨んでるんですけど。怖いんですけど。
「いえ、別に何かされたとかじゃなくて………あの、それより放してくれませんか…?」
「Ha!照れてんのか?」
「……いえ、そうでなくて……」
何だ此の自意識過剰は。
回りを見て下さい。私、当分平和な学園生活が送れなさそうなんですが…。
「猿に何で傷つけられたか、言ったら放してやるよ。」
「そんな大層な事じゃないんですが、」
「!だ、駄目だっ、シイカっ!!」
話せば放してくれるらしいので、私が口を開くと、何かに気付いたのか、佐助兄が止めようとした。
が、それより私は此の状態から一刻も早く解放して頂きたい。故に、佐助兄には悪いが無視を決め込んで、言葉を紡いだ。
「どうせ駄目だからって、再試になった英語の勉強を見てくれないんです。」
「Ah?英語?何で俺に頼まねぇ?」
訳を話したのに、相変わらず放してくれない所か、より引き寄せられて、頭上から顔を除く様に伊達君は言う。
話が違うじゃないか。
どうしてくれるんだ、3階の音楽室の窓から吹奏楽部員まで、此方を睨んで……あ、ディスクが飛んだ。部長の毛利君は御立腹らしい。
「手取り足取り俺が教えてやるぜ?」
なぁーんて考えてれば、再び低音で囁かれる。
不味いぞ此の流れ!此のまま伊達君に教えてもらう事になったら、それこそ平和な学園生活の危機じゃ済まない。命の危険に晒される……!佐助兄はこれを予感して止めようとしてくれていたのか…!!殴られてでめた止めてもらえばよかった!!
「あ、……有り難いんですが、ほ、ほら、伊達君も部活あるでしょ?わ、悪いですよ…。」
本能的に感じた私は、即座に口を開いた。勿論、NOといえない日本人な私は遠回しに、相手を上げて。英語は出来ないけどこう言う国語的なのは得意なんだよ…!
しかし、そんな私の思惑通りに事等運ぶ筈がなかった。
「Ha!心配すんな!生憎と今日はground争奪に負けて、小十郎の菜園で草毟りだ。巧い事言えば抜けられる。」
「いや、でも、やっぱり伊達君は部長だし……」
「No problem!部長だから融通が効くんじゃねぇか、yousee?」
得意気に伊達君は宣うた。
いやいや駄目だろ!普通に駄目だろ!
部長だから融通が効くってどんな理由だよ!
部長だからこそ、そう言う事しちゃ駄目でしょうがっ!職権濫用だよそれっ!!
と、思ったもののやっぱり口には出せない私は、相変わらず放してくれない伊達君の腕の中から前方の佐助兄に視線で助けを求める。
「…………」
しかし、私の頼みを断った手前、巧い言い草が見付からないのか目尻の端を若干動かすだけだった。
ああ、もう万事休す!
この流れじゃあ、伊達君に英語を教えてもらわざるを得ないじゃないか!これじゃあ何時刺されるか、何時実家に猫の死体とか腐った烏賊が送られてくるか分かったもんじゃない…!
やっぱり放してくれない伊達君の腕の中、私は四方八方からの刃の様な視線に項垂れるしかなかった。と、其所へ、
「佐助ェェェェェ!!何をしておる!早く練習に……!…はれんちであるぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああぁぁぁぁぁっ!!!」
「うぇっ!?」
遠くから駆けて来た幸村が私の状態を確認するや否や、光の如く跳び上がり、瞬く間に伊達君の顔面にドロップキックを決めた。
「げふっ?!!!!」
その衝撃に咄嗟に腕は放たれて、私は漸く解放される。
しかし、伊達君はと言えば、当然、顔面にそんなものを食らえば仰け反る訳で、そのまま後ろに倒れた。
「何すんだ、真田幸村ァっ!!!」
「白昼堂々、女子をだっ、抱き締めるなどはれんちであるぞ、伊達政宗ェっ!!」
「テメェの破廉恥の基準が分かんねぇよ!」
ぎゃいぎゃいと今度は伊達君と幸村間で争いが勃発する。言い争い何て優しいものじゃなくて、もう取っ組み合いだ。
「シイカ、シイカ」
「うん?」
傍観に徹してると、後ろから囁く程度の声がして、振り向くと、佐助兄が腹の中が読めない嫌な笑みを浮かべて手招きしているではないか。
「なに?」
「俺様、良い事思い付いちゃった。」
「え?なにそれ」
「俺様もシイカも安心して竜の旦那に英語を教えてもらう方法。まぁ、見てなって。」
首を傾げて訊ねるも、明確には教えてくれず、佐助兄は片目を瞑ってから、殴り合う伊達君らの元に歩み寄った。
(何するんだろう…)
「大体テメェは見た目も中身も餓鬼過ぎんだよっ!cherryがっ!!」
「某は桜ん坊では御座らぬっ!!」
「そう言う意味じゃねぇんっ!!」
「はいはい、真田の旦那も竜の旦那も。その辺にしといて。」
「Shut up!猿はすっ込んでろ!」
「止めるな佐助っ!!」
「そうしたいのは山々なんだけどねぇ〜…、竜の旦那、シイカの英語見てくれるんでしょ?時間無くなるよ?」
「Ah?漸くその気になったか。」
ここに来ていきなり言い分を変えた佐助兄。
伊達君も伊達君で臨戦態勢を崩し、満足げに笑みを浮かべた。
ちょ、ちょっと…!佐助兄、何勝手な事言ってんの……?!私の明日がなくなるじゃないか!!
「な、ど、どう言う事で御座るか?」
話の展開に付いていけない幸村も臨戦態勢を崩し、疑問符を浮かべる。すると、待ってましたと言わんばかりに佐助兄。
「あー、あのね、旦那。実はシイカの奴、今回のテスト、英語で赤点取って再試があるんだって。それで、俺様が教えたいのは山々なんだけど、時間無いから竜の旦那頼んだんだよねー……、あ!そう言えば旦那も赤点だったっけ?」
「うむ。8点で御座った。」
8点っ!?
100点満点中8点っ?!8%っ?!って、そうじゃなくて!
佐助兄は白々しいにも程があるって言う程、長々と喋った。
「某は再試ではなく、下位3名故、補習授業決定で御座る。」
「そーだよね。そうだ!旦那、此の際2人や3人増えたって変わんないから竜の旦那に補習の予習、シイカと一緒にやれば?」
「What!?」
「おお!佐助、それは名案で御座るな!」
「ね!シイカもそれで良いよね。競争相手がいる方が燃えるでしょ?」
「え…?あ、う……、うん。」
何を言い出すのかと思えば、佐助兄はこれまた白々しく話を展開させると、私の肩を叩いて微笑む。
そして、NOと言えない日本人な私は当然頷いたし幸村も喜んでいるけど、伊達君は複雑な表情だった。
「じゃあそう言う事で!竜の旦那、宜しくね!」
「おい、猿っ!!待てっ!」
言い残し、颯爽と去ろうとする佐助兄を案の定、伊達君が引き留める。
「俺は真田の面倒まで見るなんざ言ってねぇ。真田は他当たらせろ。あんな問題児には付き合いきれねぇ。」
「何?シイカより真田の旦那のが危機的だからって関わらない訳?竜の旦那って結局その程度なの?」
「!……shit!…確信犯か、」
「竜の旦那なら出来るよね〜。」
会話はぼそぼそ言ってたから聞こえなかったけど、苦虫を噛み潰した様な伊達君に勝ち誇った様な佐助兄の顔から、幸村付属で伊達君に英語を教わる事になったらしい。
俄然、やる気を無くした伊達君が溜め息を吐いている。
「だ…、伊達君…?」
こうまでやる気を無くされると少なからず心配になって、私は声を掛けた。
「…Ah?……安心しろ、シイカ。真田はどうなろうが、あんたに再試はpassさせてやる。」
「あ、有り難う…。」
「政宗殿!」
「んだよ、真田幸村。」
「某だけ抜け駆けは卑怯故、補習組を誘っても「Reject!!」
放課後tutor
しかし結局、4人で御勉強。
「政宗ー、これ何つー意味だー?」
「政宗殿!これは何と読むのであろうかっ!?」
「辞書ひけ!dictionary!」
「は?オレらが辞書なんか持ってる訳ねーだろ。」
「Damn!!!取ってこいっ!!」
「だ、伊達君……あの……これ…………まぁ、いっか…。」
聞き辛くて、結局自習になった私。
……合格したからまぁ良いか。
曖昧英語訳:
tutor:家庭教師・個人教師
reject:却下する・拒絶する
fin!─ ─ ─ ─ ─
ウザい≦可哀想を目指して佐助さんに再び活躍して頂きました!(笑)
そして影の薄いヒロイン…!彼女語りで話を書かねば出番が少な過ぎますね!(こら)
……精進、致します…orz
あ。幸村さんとヒロインは佐助さん絡みで幼馴染みみたいな感じで御座います。故に呼び捨てなので御座います。
因みに最後に出てきた「政宗ー、これ何つー意味だー?」は元親さん、「は?オレらが辞書なんざ持ってる訳ねーだろ。」はオレキミの主人公のつもりです(笑)
分かった方はいらっしゃったでしょうか?(いねぇよ)
拙作ですが楽しんで頂ければ幸いで御座います!
此処まで読んで下さったお嬢様方、本当に有り難う御座いました!
20080317
20090303 総書き直し完了
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ballad
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