二話
「……そう言う訳なのじゃが、佐助、御主はどう思う。」
「……どうって…俺に聞かれましても…、」
猿飛佐助は困っていた。
信玄に呼び付けられて来てみれた彼だったが、思いも寄らぬ相談を持ち掛けられてしまい、只今その返答に答え倦ねている最中である。
案の定、己が心配していた事と同じ事を信玄も心に留めていたらしく、その打開策について相談をされた。聞いてみれば、この上ない最良策で、流石は大将と思ったのも束の間、意見を求められて困っているのが現状。
勿論、大丈夫だと後押ししたいのは山々なのだが、幸村を考えると二つ返事出来ない。
あれやこれやと言葉を探してから、仕舞いに佐助は罰が悪そうに頭を掻くと、恐る恐ると言う様に口を開いた。
「妙案だとは思うんですけど…当の旦那達が何て言うか……。それに最初が一番難しいと思いますし…、」
「うむ…、やはりそうか…」
佐助の答えに信玄は唸り声を上げる。
幸村を精神的に成長させる術を考え出した信玄だったが、どうにも今までの彼を見てきた限りでは最初の段階が最大の難関になりそうなので、直ぐに本人に伝えるのは気が引けた。そこで幼少より幸村に仕えている佐助に意見を聞こうと呼び出したのだが、信玄の懸念はどうやら全くの的外れと言う訳ではなかったらしい。
「やはりまだ幸村には早いかのう……いや、しかし、あやつももう良い年頃じゃし……」
「……そうっすねぇ…、」
この案が駄目ならば他に幸村を大将たる器に近付けるにはどうしたら良いだろうか、二人は唸りながら、片や部下に、片や上司に、頭を抱える。しかし考えても考えてもそれより良い案は見つからない。
「…大将、この際荒療治ってのもありじゃないっすか?」
「……うむ。そうじゃな。この程度、乗り越えられねばやってはゆけぬな。」
半ば諦めかけた様な佐助の言葉に信玄は溜息を吐きながら、頷いた。
話を持ち掛けて上手く丸め込めればそれに越したことはないが、全面的に拒否されたならまた別の術を考えれば良い。信玄はそう心に決め、腰を上げる。
「そうと決まれば善は急げじゃ!佐助ぇい!奴等を此処へ連れて参れ!」
「はいよっと。」
信玄がそう命を下すと、佐助は影に溶ける様に姿を消し、庭先で鍛練に励む幸村の元へと急ぐのだった。
>>続く