act.9

「じゃあ、紅羽ちゃん。コレ隊服ね。」

「近藤さん、あたし…じゃなくてオレ、真選組内では男なんで紅刃ですよ。」

「あ!そうだった!!ごめんごめん!!じゃ、紅刃君の事、皆に紹介してくるから着替えて待っててくれ。呼ぶまで会議室には入ってきちゃダメだよ。」

「はぁーい。」

真新しい制服を受けとると、近藤さんはにこやかに去っていった。

ホントに良いゴリラ…違った、人だよ。近藤さんは。
思いつつ、あたしは早速制服を着ようと貰ったばかりのそれを広げ………


あれ?


act.9
お仕事大変ですね…


「えー みんな知っての通り、先日の事件で俺達真選組は多くの隊士を失った。」

ワイワイ……ガヤガヤ……

「…そこで江戸市民から有志を募る形で新隊士をスカウトしていた訳だが、聞いて驚けコノヤロー。一人だが非常に有力な人物を仲間にできた……」

ワイワイ……ガヤガヤ……

「…驚くどころか誰も聞いてねーな。つーか何コレ?デジャヴ?どっかで見た事あるんだけど?」

ワイワイ……ガヤガヤ……
「トシ。」

近藤が声を掛けると、土方は側に置いてあったあるものを担ぎ上げた。

ガチャ…

ドカンッ!!

「えー みんな知っての通り、先日の事件で俺達真選組は多くの隊士を失った。そこで江戸市民から有志を募る形で新隊士をスカウトしていた訳だが、聞いて驚けコノヤロー。一人だが非常に有力な人物を仲間にできた。」

「「「「え゙え゙え゙え゙え゙!!マジすか!?」」」」

「しらじらしい。もっとナチュラルにできねーのか。」

「トシ もういい。話が進まん。そんな訳で新隊士を紹介し…」

「すんませーん、ズボンの丈が大分足んないんスけどー」

「……紅刃君……」

制服の丈が足りないことを訴えようと襖を開ければ、室内の注目が一斉にあたしに集まった。

「あり?まずいタイミングだった?」

「…呼ぶまで来ちゃダメだって言ったよね?」

「あ、そうでしたっけ?すんません、丈の短さに頭きたんで忘れてました。」

頭を掻くと、近藤さんの隣に腰を下ろす土方さんが大袈裟に溜め息をついた。

「どんだけ気ィ短ぇんだよ。」

「んだコラ、殺んのかニコチン中毒。」

ざわっ!!!!


直後、周りは騒然とする。
あ、ヤベ、しまった。つい何時もの癖で突っ掛かってしまった。

早速皆さん引いてるよ。
もう馴染めそうにないや。

転校初日に算数の問題に自分から手を挙げて盛大に間違ったみたいな雰囲気になっちゃったよ。どーしよ。誰か助けて!!SOS!!

すると、思いが通じたのか部屋の一角から乾いた拍手が聞こえた。

「流石紅刃でさァ。入隊早々土方さんに突っ掛かるたァ。」

沖田さん!!うぉぉぉ!!今なら天使に見える!!何かバックに真っ黒いオーラが見えるし、すっごい嫌な笑み浮かべてるけど、あたし気にしない!!天使に見える!!

あたしがそんな事を思っていると、座ったまま沖田さんは続ける。

「どうですかィ、紅刃。そんだけ肝据わってんでさァ、土方さんを殺し隊に入りやせんか?」

「何物騒な組織作ってんのお前ェェェェェ!!!」

「安心してくだせェ、土方さん。まだ俺と万事屋の旦那しか入ってませんから。」

「できるかァァァァァ!!!」

相変わらずなんとも愉快なノリ…このノリに便乗すれば微妙な雰囲気を打破できる筈!!あたしはそう考えた。

「いいっスよ。」

「お前も普通に入ろうとすんな!!」

「だって面白そうですし。」

「お前本職副長補佐だろォォォォ!?何?!俺、常に銃口眉間に当てられてる状態っ!!?」

「冗談ですよ。半分。

「半分本気!!?」

「まぁまぁ その辺にしとけ、お前ら。」


場の空気が大分和んだ(?)ところで近藤さんが仲裁に入る。

「皆、ちょっと段取りが変わったが新隊士の紅刃君だ。」

そのまま隊士達に向き直ってあたしを紹介すると、手招きした。

「いや、近藤さん。ズボンの丈が足んないんですってば。短パンまでいきませんが、八分丈ですよ。ツンツルテンですよ。」

「誰も気にはせんよ。早く入りなさい。」

「や、無理だって。ツンツルテンだもの。なのにウエストがばがばだもの。」

「…わかった。あとで新しいの用意するから私服に着替えてきて。」

「あーい。」

ウエストがばがば発言が効いたのか、私服でも良いと許しが出た。
近藤さんはあたしが女だって知ってるからね、心なしか頬染まっててキモかったよ。

私服、着流しだけど晒し巻いてるから良いか。

部屋に戻って屯所に来た時の着流しに着替え、再び会議室に向かった。


「すんまっせーん、御待たせしましたーっと。」

「おー紅刃君!!入りなさい。」

「失礼しまーっす!」

「皆、新隊士の鷹居紅刃君だ。配属は副長補佐。仲良くしてくれよ。」

「宜しく御願いしまーす。」

小学校の転校生紹介かっつーのと言うツッコミは置いといて…
さっきの雰囲気よりは大分マシな空気の中、あたしは迎え入れられた。

……偽名だがな。

「じゃあ早速仕事についてもらおうかな。トシ、頼んだぞ。」

「…ったく、何で俺なんだよ…。オラ、鷹居。行くぞ。」

「あーい。」

頭を下げて早々、あたしは土方さんに連れられ部屋を出た。

*****


「痛い痛い痛い痛いっ!!食い込んでるっ!!帯食い込んでますから!!」

「うるせー!オメーがたらたらしてんのが悪ィんだよ!!」

「しゃーないっしょ!?歩幅が違うんですからっ!!5p差ナメんなよ!!」

「歩幅じゃねーだろ!!何か見つける度に立ち止まりやがって、小学生かお前はっ!!」

「失礼なっ!!もうすぐ20歳ですっ!!」

「ものの例えだっつーの!!こんなデカイ小学生がいて堪るかっ!!」

只今副長室に連れて行かれてる最中な訳ですが、土方さんがあたしの帯の後ろを掴んで引き摺られてるに近い状態であります。
帯がァァァァァ!!帯が腹に食い込んでるぅぅぅぅぅ!!!

「ちょ…マジ、何か気持ち悪くなってきたんスけど…。出るんですけど、内臓的なモノが…っ」

「出すのはいいが ちゃんと戻せよ。」

「戻せるかァァァァァ!!放してくださいよ!!パワハラですよ、パワーハラスメントですよ!!」

「上等だ。」

「上等じゃねェェェェェ!!もう寄り道しませんから!!お願いします、放してくださいっ!!」

「言ったな?次寄り道したらお前切腹だから。」

リスク高っ!!

しかし高いリスクと引き換えになんとか帯を放してもらえた。

あ゙ー…本気で何か出るかと思った……

「やんなきゃなんねー事ァ、ごまんとあんだよ。ゆっくりしてる暇はねぇ。」

「あーい。」

「分かりゃいいんだ。さっさと来い。」

促されるがまま、土方さんの後ろを足早についていく。
畜生、歩くの速ぇよ。ちょっと足長いからっさ。ちったぁ、あたしの事気遣えってんだ。

あたしが心中で悪態をついてと、土方さんは足を止めた。突然止まったので、斜め下を向いてブツクサ思ってたあしは、反応できない。故に、盛大に土方さんの背中にぶつかる。

ドンッ!!

「ぶっ!!?」

「!?…何やってんだ、お前…」

「い、いきなり止まんないで下さいよ!!吃驚するじゃないですか!!」

「いや、目的地に着いたら止まるもんだろーが。」

「へ?あ、ホントだ。」

下を向いていたせいでか、気付かなかった…。あたし達は既に副長室の前に着いていた。
土方さんが戸を滑らせると、整頓された副長室が現れる。机上には山の様に書類が連なっている。

「あれを今日中に片付けなきゃならねぇんだ。1分1秒惜しいと思えよ。」

「あれ全部!?すごいッスね、土方さん!!頑張って下さい!!」

「オメーもやるんだよ。」

「……や、無理。無理だって。」

「…鷹居、お前の役職は何だ?」

「…副長補佐であります。」

「あの仕事は誰のだ?」

「土方さんのであります。」

「俺の役職は何だ?」

「真選組副長であります。」

「じゃあ、お前は俺の仕事を手伝う義務があるな?」

「…ない。」

「いや、あるから。」

「や、無理だから。」

「いや、お前に拒否権ねぇから。」

「や、でも 無理だから。」

「いや、無理とかじゃねぇから。」

「や、でも」

「つべこべ言ってねぇでさっさと入れ。そして作業に取り掛かれ。」

「…はい。」

何とか話を逸らそうとしたが、土方さんが瞳孔全開で睨み付けてきたので、あえなく失敗。かなり怖いよ…。

「目ぇ通すのは俺がやっから、お前は検印押してくれりゃいいわ。」

「はぁい。」

あたしは土方さんの机の隣に設けられていた小さめのそれについた。

ドサッ!!

腰を下ろすと同時に土方さんの机の上にあった山の一部があたしの眼前に現れる。

「…これは?」

「目ぇ通し終わってる分。ちゃっちゃかやんねぇとドンドン増えるから気張れや。」

ぱんぱんと手を叩き、書類の上に検印とインク台を乗せると土方さんは自分の机につき、書類とにらめっこを始めた。

「…土方さん、土方さん。」

「…何だ。」

「いくら検印押しでも、この量は無理ですよ。」

「…。」

「無視ですか。」

「俺は目ぇ通すのから検印押すまで何時も一人でやってるぞ。」

「分かりましたよ。やりゃあいいんでしょ。やりゃあ。」

仕方無く山から1枚、書類を取り検印押しを始める。

……アレ?あたしは刀振り回せる合法の仕事って事で真選組に入ったのに、やってる事 事務のお姉さんじゃん。意味無いじゃん。

しかもなんだコレ。この書類たち。

始末書始末書始末書苦情始末書始末書始末書苦情始末書始末書………

全部始末書と苦情ばっかじゃん。これって副長じゃなくて局長の御仕事じゃないんですか?
しかも大半に沖田総悟ってかいてあるよ。

半分程山が消え去ったところであたしは顔を上げた。

「…土方さん、土方さん。」

「…今度は何だ。」

「この書類たちは近藤さんとか沖田さんがやるべき内容じゃないんですか?」

「…色々あって俺がやらざるを得ないんだよ。」

「…色々?」

「どっかの誰かは市民の身辺警護とかほざいてストーカーに現を抜かし、どっかの誰かは常に俺の命を狙い、どっかの誰かは目ぇ放せばミントンに明け暮れる。だから大体こーゆー仕事は俺に回ってくんだよ。」

「…警察がストーカー…」

「そうだ。ま、何時も襤褸雑巾みてぇになって帰ってくっから、向こうに被害はないと思うがな。」

「……副長、御仕事大変ですね……」

「まぁな。おら、分かったら手ぇ動かせ。」

「あーい。」

とりあえず、土方さんには反発及び故意的なボケはかまさないであげよう と、思った。


To be continued……

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