act.10

「ぶっ…はぁぁぁ〜終わったぁ〜。」

「ご苦労だったな。初仕事はまぁまぁってことにしてやるよ。」

「あ〜い。どーもあざぁー……」

ふぅ〜…

「げっほげっほ!!ごほっ!!何スかその労い!?紫煙顔に吹っ掛けるってどんだけェェェェェ?!」


act.10
副長様の手となり足となり


咳き込む紅羽を尻目に、土方はふてぶてしく言った。

「誰が労った。眠そうだから目ぇ覚まさせてやっただけだっつの。」

「紫煙吹っ掛ける起こし方って何?!!つーか公務中も煙草吸いすぎッスよ!!」

「いいじゃねェか。煙草吸わねーと調子出ねーんだよ。」

「良い訳あるかァァァァ!!いい大人が一日中スパスパスパスパァァァァァァァ!間接喫煙つーのを考えろォォォォ!!此方人等まだ未成年なんじゃァァァァァ!!」

あたしは思わず立ち上がり、土方さんの胸倉を掴んで前後に揺する。

「てめっ、何しやがっ…ゔ…気持ち悪……っ」

「ニコチン中毒も大概にしやがれェェェェ!!テメェはもう肺癌になれっ!!肺癌になって死ねェェェェェ!!!」

「っ…やめろっ…鷹居っ…ぐっ…」

「げ…っ」

腕を前に引いた時、いきなり重心が傾いて土方さんが倒れ掛かってきた。

「…なっ、ちょっ、ちょっとォォォォ!!土方さぁぁぁぁん?!!」

咄嗟に胸倉を放し、土方さんを腕で受け止める。
唐突過ぎて体勢が出来てないから上手く力が入らん!

「…って重っ!!?何コレっ!!?」

「悪ィ……。頭くらくらする…。お前どんだけ力あんだよ……、」

「意識があんなら自分で上体起こして下さい!!ぅおっもっ!!腕もげるっ!!腕もげるぅぅぅぅ!!!」

「も、もうちょっと。もうちょっと踏ん張れ。あとちょっとで何か治りそうな気がする。」

「何かって何だァァァァァ!!!ゔぎぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙…げっ…限界ッ!!」


ぐらっ……

どさっ…。

「…ってぇ〜。ちょっ、土方さん。大丈夫スか?」

「…あぁ…何とかな。大分良くなってきた。」

「だったら退いて下さい。重い。」

「あ、悪ィ。」

土方さんがあたしの上から退かんと、上体を起こした時だった。
から…

「副長ー、鷹居さぁーん。市中見廻りの…じ……か……」

「「あ。」」

漫画みたいなタイミングで山崎さんが副長室に入ってきた。

何だコレ!!ベタだっ!!ベタベタだよっ!!

山崎さんは当然の如く顔を真っ赤にして副長室の扉を閉め、叫ぶ。

「しっ、失礼しましたァァァァァ!!!」

「まっ!待てっ!!待てェェェェェ!!山崎さぁぁぁぁん!!」

ドカッ!!

「ごふっ!!?」

絶対変な誤解をしてる!!
解かねばっ!!
変な誤解を解かねばっ!!

そう思ったが早いか、あたしは無意識に土方さんをぶっ飛ばし、山崎さんを追い掛けた。

「待てェェェェェ!!山崎ィィィィ……さん!」

「俺何も見てないからっ!!見てないからっ!!」

「違ェェェェ!!話を…」

加速を早め廊下を蹴る。

「話をっ………聞けェェェェェェェェェェ!!

「!?う、うわぁぁぁぁぁ!!?」

ドシャァァァ!!


普通に走っては追い付けそうになかったので、後頭部に蹴りをお見舞いしようと跳んだら、山崎さんがいきなり振り返るも、ブレーキが利かず、跳び蹴り(加速プラス)は山崎さんの顔面にヒット、そりゃもう気持ちいいくらいにヒットした。

「うぎゃぁぁぁぁぁっ!!?山崎さぁぁぁぁん!!すんまっせーんっ!!生きてますかァァァァァ!!?」

「…ったたた…。だ、大丈夫大丈夫。副長に殴られる事に比べればこのくらい…。」

鼻を押さえて力無く微笑む山崎さん。あぁっ!!鼻血出てる!!

「すんませんっ!!マジすんませんっ!!」

「大丈夫だよ。…ホント俺何も見てないから、副長にもそう言っといて。」

「はいっ…って違ェェェェェ!!!さっきのは事故っ!!事故!!」

「俺は何も見てない、俺は何も見てない…」

「聞けェェェェェ!!その腰に挿してるもん折ったろかァァァァァ!!!」

「!コレはダメッ!!こないだ買ったばっかだから!!」

「だったら話聞け!!事故だよ事故!!ワンパターンな事・故!!」

「そんな精一杯照れなくても…」
照れてないのよ?いい?アレは事故なの。事故。い〜い?分かったかしら?

「……はい。」

普段使わぬ口調に兄者のお金大好きオーラに似たモノを出し、満面の笑みで山崎さんを諭せば、有無を言わずに頷いた。

…ふ、流石。
あたしもこの方法でよく兄者に説き伏せられたもんだった…

それから山崎さんに此れ此れこう言う事があって、例の状態に辿り着いた事を事細かに、嫌と言う程説明し、他言無用、特に兄者には何も言わない、言ったら山崎さんのミントンユニフォーム カッターでずったずたに切り裂いて、糸の状態に戻すから、と(無理矢理)約束(さ)して あたしは副長室に戻ることにした。
そんでもって襖を開けて後悔した。


「……鷹居……テメェ……」

怒ってる!?

土方さん メッチャ怒ってるぅぅぅぅ!!額に青筋うかんでるぅぅぅぅ!!!
何?!あたし何かした?!!

「!!?ひ、土方さん?どどどどうかしましたか?」

「どうかしましたか、じゃねェェェェェ!!!前後に揺すったかと思えばいきなり殴り飛ばしやがって!!何様の心算だ、ア゙ァ?!」

「え゙…?!まままマジすか!?オレ殴りましたぁ?!」

「テメェ以外の誰にやられたってんだっ!!」

土方さんは開ききった瞳孔であたしを睨むと、腰の刀に手を添える。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!丸腰相手に抜刀はないっ!!謝りますからっ!!土下座でも何でもしますからっ!!斬らないでェェェェェェェェェェ!!!!」

勢いよく抜刀され、本気で殺意を感じたので思わずあたしは副長室を飛び出した。

「待てこらァァァァァァァァァァ!!!」

「や゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!追い掛けて来たァァァァァ!!?殺られるぅぅぅぅ!!土方さんに殺されるぅぅぅぅ!!!」

逃げれば当然土方さんは抜刀したまま追い掛けてくるのであたしはやっぱり逃げるしかない。

ど畜生!!短刀があれば何とか凌げそうだけど、部屋だよ!!副長室の隣の部屋だよ!!
Uターンしなきゃ戻れないよォォォォ!!!!

「たぁーすーけーてェェェェェ!!!ヘェェェェェルプッ!!!」

「紅刃、屈んでくだせぇ。危ないですぜ。」

『へ?』

声がする方へ顔をやれば、沖田さんが………


ドガァァァァン!!

顔面スレスレを何かが走り爆破した。

思わず体ごと振り返る。
何?!!何が起きたっ?!!

状況理解し難く、挙動不審でいるとバズーカを担いだ沖田さんが近寄ってきた。

あ、バズーカぶっ放したのね。

「大丈夫でしたかィ?紅刃。変な事及びセクハラとかされまたんですかィ?」

「い、いや…そんな事は…」

親しげに肩を叩いてくる沖田さんに生返事で相槌を打って眼前で揺れる白煙を眺め………アレ?

徐々に捌けゆく煙の下から何やら人…影……が…!!!


「ひ、土方さぁぁぁぁんっ!!?」

砲弾がめり込んだすぐ向こうに、腰をついた土方さんがいた。

「総悟!テメ、いきなり何しやがるっ!!?」

「ちっ 生きてやがったか…」

「今何つったっ?!!オイ!こっち向け!!オイ!!」

土方さんが問い掛けるも、沖田さんはしゃあしゃあと無視して、話を進める。

「紅刃の悲鳴が聞こえたんで来てみたら暴漢に襲われてたんで助けただけでさァ。」

「暴漢って俺かっ?!俺の事言ってんのかテメェェェェェェェ!!!」

「土方さん、幾ら男所帯で飢えてるからって紅刃を昼間っから襲おうってのは頂けませんぜ。せめて時間を、なァ、紅刃。」

「そういう問題じゃねぇだろ!」

あたしよりちょっと低い位置にある端整な顔に目をやった。

「所で紅刃、市中見廻りには行きやしたか?」

「話反らしやがった!」

「質問に答えなせェ。」

「えー……いや、まだですが……。これから土方さんに連れてかれる予定でしたが…まァ、ちっといざこざがありまして……」

「丁度いいや。だったら俺と行きやしょうぜ。土方さんとじゃ何時また何されるか分かりやせんし。」

「…どーゆー意味だ、総悟…。」

「そーゆー意味でさァ。じゃあ、行きやしょうか 紅刃。」

「…いやー、沖田さん。そりゃ出来ねぇ相談っスね。」

「…?どうしてですかィ?」

「仮にもオレ、副長補佐なんで。副長様の手となり足となり、時には盾になり刀になり、我が身を呈して守らにゃならんのですよ。補佐ってそーゆーもんでしょう?まぁ、オレが守らなきゃなんねぇ程 弱ぇ人だとは思ってませんけど。」

「…そいつァ随分な覚悟ですねィ。」

「変なとこ真面目なのは兄者譲りでしてね、こーゆー思考も餓鬼の頃から仕込まれてんですよ。」

少し驚いた様な顔をした沖田さんに微笑んで、あたしは穴の向こうで腰をつく土方さんに手を差し出した。

「つーことで。市中見廻りのお時間だそうっスよ、土方さん。」

「あ、ああ……」

差し出した手を握って土方さんは立ち上がる。

「殴り飛ばした事は謝りますんで、切腹は勘弁願いますよ。」

「…分かった、だが今回だけだぞ。」

「へーへー。つーか元はと言えば山崎さんが悪ィんですから。最後まで変な誤解してやがった。」

え?何?責任転嫁だって?

いやいやいや、そりゃないっしょ。事実、事実。

「……そーゆー事にしといてやるよ。」


お?案外優しいな。
"ふっざけんなっ!!"云々言われると思ってたんだけど。
…まぁいいや。忠誠発言で丸く収まったとしよう。

「じゃ、得物持ってくるんで、先 玄関行ってて下さい。」

「あんま遅れんなよ。」

「あーい。」


*****


自室に戻るであろう鷹居の後姿を見送っていると、総悟が声を掛けてきた。

「…土方さん、何ぼーっとしてんですかィ。気持ち悪ィ。」

「んなこたねぇよ。」

「しっかし、見上げた覚悟ですねィ紅刃の奴。それとも……、」

「何だ。」

「いや、何でもありやせん。ちったあ奴の事見直しましたかィ?」

「口先だけで信用は出来ねぇがな。」

「何でィ。素直じゃねぇなァ。」

「何が言いたい。」

「いーや、何でもありやせん。」

「すんませーん、お待たせしましたー。」

会話が終わると同時に鷹居が部屋から戻って来た。

「遅ェ。」

戻って来た鷹居を諌めれば、はにかみながら頭を掻く。

「やー、引っ越しの段ボールの間に挟まっててまして!」

「ほら、行くぞ。」

「あーい。」

「ちょいと、待って下せぇ。」

「「?!」」

ぶっきらぼうに言った俺の後を鷹居が追いかけようとすると、不意に後ろから声が掛かった。

「俺もご一緒して良いですかィ?ずっと屯所の中に居たんじゃ息が詰まっちまう。」

「あ、沖田さん。」

「珍しいじゃねぇか、暇さえありゃあ可笑しなアイマスク付けてサボりに興じてる奴がよぉ。」

「うるせー土方コノヤロー。巡回区間がかぶき町なんだ。面白そーだから俺も付いて行きやす。」

「面白そうだからって総悟どうせサボんだろ…。」

「さーねィ。」

俺と総悟が眼飛ばし合ってると、鷹居がソワソワしながら俺に問いかけてきた。

「巡回かぶき町って、マジすか土方さんっ!!?」

「おう。」

短く答えると、鷹居は目を輝かせる。

「キャホォォォォォ!!万歳っ!!かぶき町万歳っっ!!そうと分かれば立ち話は無用!!早く行きましょーぜ!!」

「!?オイっ!何でそんなにはしゃいでんだよ!!?ちょ、待てっ!!」

「かぶき町っ…かぶき町っ!!…オレの憧れの銀髪の彼の御方に逢えるかもしれねぇっ!!!」

「「!?ぎんぱ……っ!!」」

不意に鷹居の口から出た忌々しい単語に反応してしまった。…しかも総悟とハモった。

「……おい、」

「俺ァあいつが黒刃さんの家族だってしか知りやせんぜ。」

「寄りに寄って1番関わりたくねぇ奴等かよ…」

「これァ見物ですねィ。」

「ああ?」

「似た者同士と男装娘の三角関係。面白くなりそうですねィ。」

「俺関係ねぇだろ!!」

「誰も土方さんだなんて言ってやせんが?」

「お前…っ!!」

「オルァァァァ!!何しとんじゃおのれらァァァァ!!!彼の御方が待ってんだよっ!!!」


すっかりキャラが変わった鷹居にどやされ、さっきの俺に対する忠誠は何処いった?と思いつつも、俺と総悟は外に向かった。


正直、気が引ける………。


To be continued……

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